ビジネスの基本となる、売買取引契約書。これには基本契約と個別契約の2種類があります。本記事では基本契約と個別契約の違いや、基本契約書と個別契約書にどのようなことが記載されるのかといった具体的な内容などを紹介します。

  • 基本契約と個別契約の違いについて解説します

契約書とは

契約書とは、契約や合意を証明する書類のこと。取引を行ううえで、契約の内容や条件を文書に記録したものです。ビジネスシーンにおいては欠かせないものですが、基本的にこの契約書には「基本契約書」と「個別契約書」の2種類があります。

基本契約書と個別契約書の違いとは

基本契約書と個別契約書、どのような違いがあるのでしょうか。

基本契約書とは

基本契約書とは、いくつかの契約において共通する基本的な内容を定めた契約書のことです。契約がうまく守られなかったときにどのように対応するのかなど、基本的なルールが記載されたものが基本契約書です。基本契約書があれば、取引が継続される際にその都度、新たに契約書を作る手間も省けます。

反対に、基本契約書の内容が複数の契約に適用されることになるため、契約書の内容に不備があった場合、その影響は大きくなることが考えられます。

個別契約書とは

個別契約書とは、文字通り、個々の取引に関して締結される契約書のことです。基本契約書よりもさらに具体的な内容が定められ、記載されます。

  • 契約ごとに具体的に交わされるのが個別契約です

ビジネスシーンにおける取引契約書

ここからは、ビジネスシーンにおける基本契約書(売買取引基本契約書)とはどのようなものなのか、少し具体的にみていきます。

基本契約書に定められる事項とは

取引基本契約書では、契約に共通して適用される事項をまとめて記載する必要があります。具体的な項目を以下に紹介しますので、参考にしてください。

  • 契約の目的(基本契約書であることを記載)
  • 契約の適用範囲(基本契約書がどこに適用されるのか、ほかの契約書の内容と異なった場合にどちらを優先させるのかなどを記載)
  • 引き渡し(商品の引き渡し場所、それにかかる運賃などを誰が負担するのかなどを記載)
  • 請求、支払い方法(請求方法や支払い方法、締め日、支払い日などを記載)
  • 検査(不良品や数量違いなどがあった場合の対応方法などを記載)
  • 所有権(商品を所有する権利などを記載)
  • 契約期間(契約の期間や自動更新するかどうかなどを記載)
  • 契約の解除(破産したときや契約違反があったときの解除方法を記載)
  • 契約不適合責任(契約不適合があったときの責任の所在などを記載)
  • 製造物責任(売主が商品に対しどのような責任を負うかを記載)
  • 損害賠償(不良品や納期遅れなどの際に賠償をどう行うかを記載)
  • 合意管轄(トラブル発生時にどの裁判所で審理するかを記載)
  • 知的財産権の帰属(商品に関する知的財産権についてを記載)
  • 第三者の権利侵害 など

取引個別契約書に定められる事項とは

個別契約書では、基本契約書で定めることが難しい具体的な取引内容について定める必要があります。具体的な例に、下記のような事柄があげられます。

  • 種類や内容(商品の種類や内容を記載)
  • 数量(商品の数量を記載)
  • 単価(商品の単価を記載)
  • 納期(商品の納期を記載)
  • 納入場所、代金の支払い方法、支払い時期(商品の納入場所、支払いなどの取り決めを記載)
  • 具体的な事項を確認して、基本契約と個別契約の違いを知ろう

個別契約書と発注書の違いとは

個別契約書は発注書(注文書)で代用できるのでしょうか。発注書とは、商品の発注を申し込むための書類です。発注書には商品内容や数量、価格、支払い期限、納入場所などの詳細が記載されますが、この発注書だけでは個別契約が成立したことになりません。

発注書+注文請書で個別契約とみなされる

注文請書とは、その注文を受理したことを示すための書類です。発注書と注文請書はどちらかいっぽうでは契約書としての効力はありませんが、「発注書+注文請書」がそろっていれば、個別契約が成立していると見なされます。

基本契約書に「発注書のみで契約を成立する」という旨を記載している場合は、注文請書は必要ありません。ただし、安全にビジネスをすすめるうえでは、発注書と注文請書がそろった状態にしてあることが理想です。

  • 個別契約書と発注書に違いとは?

基本契約書と個別契約書、どちらが優先される?

基本契約書と個別契約書の内容に矛盾がある場合、どちらの契約が優先されるのでしょうか。ここからは契約書の優先関係について解説します。

優先条項を明記する

基本契約と個別契約の優先関係は、優先条項によって定められます。もし優先条項に「基本契約と個別契約の内容に矛盾が生じた場合には、基本契約書で定めた内容を優先する」と記載されている場合には、基本契約書を優先することになります。

優先条項が設けられていない場合には、どちらの契約を優先すれば良いのか、トラブルを防ぐためにも明記するようにしましょう。

基本契約書を優先させた場合のメリットとは

優先条項で基本契約書を優先させた場合、取引全体で法的な統制を担保できるため、現場に個別契約を任せても混乱が生じにくくなるというメリットがあります。

個別契約書を優先させた場合のメリットとは

優先条項で個別契約書を優先させた場合、取引ごとに契約条件を変更できるというメリットがあります。現場の実情に合わせた内容でスムーズに取引を行うことができます。

基本契約、個別契約の英語表現

基本契約と個別契約は英語でどのように訳されるのでしょうか。

「基本契約」
a master agreement などと呼ばれます。

「個別契約」
Individual Contract などと呼ばれます。

  • 基本契約と個別契約の内容が違う場合の対処法は?

基本契約書と個別契約書の違いを理解しよう

ビジネスおける売買取引には、基本契約と個別契約の2種類があります。複数の契約に共通する事項を一括してまとめたものが基本契約書で、ルール違反があったときの対応などが記載されます。一方、商品内容や数量、納入場所、支払い方法など、具体的な事項を記載したものが個別契約書です。

ビジネスの基本となる契約書について理解を深め、スムーズに業務が行えるようにしましょう。

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