キリンビールは6月29日、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」のリニューアルを発表した。日本初の糖質ゼロビールとして2020年10月に発売され、今年5月末の時点で累計販売本数が3億本を突破した同製品。今回のリニューアルの背景とポイントをレポートする。

コロナ禍による健康志向の高まりも追い風となり、拡大を続ける機能系ビール市場。そんななかで発売された従来の「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、機能系ビールの先駆けとして市場を創出。「糖質ゼロなのにおいしい」と支持された一方、「麦の味は『一番搾り』ほどではない」と、味に対する厳しい評価も聞かれた、と同社の執行役員マーケティング部長の山田雄一さん。

また開発を担当した中味開発グループの山口景平さんは、発売当初、SNSでその反応をチェックしたところ、「“おいしい”と“おいしくない”が半々という、“悲しい声”に直面した」と話す。そこで今回のリニューアルでは、「一番搾り」らしく素材の良さを引き出すことで、「ひと口目に感じるビールの飲みごたえ」「もうひと口飲みたくなる澄んだ後味」の実現を目指したという。

  • 麦芽の増量で、色味も濃くなったリニューアル品

「ビールのおいしさ」を追求するうえで決め手となったのが、技術的なイノベーション。より糖質低減に適した麦芽に選定を見直し、仕込み技術や発酵技術などの糖質カット製法が進化したことで、香味開発の幅が広がったそう。

また麦芽量を増量させることで「麦のうまみの広がり」と「麦芽のおいしさ成分により酸味をおさえた飲み飽きない味」を、従来品で4%だったアルコール度数を5%に上げて「ビールらしい味の厚みで飲みごたえ」を追求した。さらにホップの増量と配合変更よって、「ビールらしい香りを強化し、渋みや雑味のない味わいと澄んだ後味」を実現したという。

「糖質ゼロはおいしくない」という耳を塞ぎたくなるような正直な感想と向き合い、試行錯誤を繰り返してきたからこそ、リニューアルによって「ビールとしてのおいしさが進化した」という山口さん。「ぜひ従来品とリニューアル後の『一番搾り 糖質ゼロ』を飲み比べて、違いを味わってほしい」と自信をのぞかせた。