JR東海が提供しているオンライン予約サービス「スマートEX」。東海道新幹線の列車をオンラインで予約し、「TOICA」「Suica」などの交通系ICカードを登録すればチケットレスで乗車できる。「スマートEX」の独自サービスを実際に使用し、検証してみた。

  • 東海道新幹線で新横浜~名古屋間を往復。「スマートEX」で予約し、往復とも「S Work車両」を利用した

「スマートEX」は、JR東海が2017年から提供開始した東海道・山陽新幹線向けのチケットレスオンライン予約サービスである。本人名義のクレジットカードと交通系ICカードの登録が必要で、会員登録と年会費は無料。「スマートEX」の利用で通常期の新幹線の運賃・特急料金が割引されるほか、事前登録した「TOICA」「Suica」などの交通系ICカードを新幹線の自動改札機にタッチすれば、チケットレスで改札を通過できる。発車時刻前であれば変更や払戻しも手数料無料とされ、変更は何回でも可能となっている。

先日、取材で名古屋へ行く予定があったため、筆者も利用してみることにした。まずは「スマートEX」にログインし、乗車区間や日時、人数を入力する。検索すると、乗車希望時刻に近い新幹線が一覧で表示された。指定席や自由席、グリーン車はもちろん、「スマートEX」「EX予約」限定商品である「S Work車両」も販売されている。

  • 「スマートEX」で登録した交通系ICカードを改札機にかざした際に出る利用票。これを元に指定の席に着席する

  • 「スマートEX」のメニュー画面。「予約」をタップすると、乗車する日や時間から都合の良い新幹線を探せる

  • 乗車日や乗車予定時刻、人数を入力すると、空席のある新幹線が表示される

  • 座席表から座席を選択できる。今回は7号車「S Work車両」を利用した

「S Work車両」はビジネス利用者向けの車両で、7号車(普通車)と8号車(グリーン車)を充当している様子。移動時間を有効に使いたい思いもあったため、今回は「S Work車両」を予約することにした。座席表が表示され、希望の座席を選択。確認と購入手続きが済めば、予約完了となる。

当日、新横浜駅の新幹線乗換改札で自動改札機にカードをタッチ(筆者は「ビックカメラSuicaカード」を使用)すると、きっぷ取出口から利用票が出てきた。利用票には列車名と号車、座席が記載されている。IC専用の自動改札も用意されており、床面に大きく「スマートEX」のロゴが貼られていた。改札を見ていると、スーツ姿の人々が次々とICカード専用改札を通過している。サービスが浸透している様子を実感できた。

乗車予定の「のぞみ205号」は予定通りの時刻に到着。7号車の「S Work車両」に乗り込んだ。車内を見渡すと、ほとんどがスーツ姿の男性客。PCを開き、資料作成やスケジュール確認を行っている様子だった。3人席の真ん中はやや空きがあるものの、2人席はほとんど埋まっている。2人席の窓際に座る筆者の隣にも男性客が座っていた。乗車率は7割強といったところだろうか。キーボード音も検証してみたが、筆者はさほど気にならなかった。車内は静粛そのものである。

  • 「Shinkansen Free Wi-Fi」の登録画面。メールアドレスかSNSアカウントの登録で、無料Wi-Fiが利用できる

  • 「サービスを利用する」をクリックし、必要情報を入力するとインターネットに接続可能。1回の制限時間は30分で、30分経過後に再びログイン画面が表示される

  • この画面が表示されれば接続完了。スマートフォンはもちろん、PCでも利用可能

せっかく「S Work車両」に乗ったのだから、自分も仕事をしようと思い立つ。持参したパソコンを開き、「Shinkansen Free Wi-Fi」に接続した。周囲の乗客の中には、ポケットWi-Fiを持参している人もいる。「Shinkansen Free Wi-Fi」の1回分の接続時間は30分と短い。再接続の手続きを煩雑に感じる人や、ウェブ会議等の関係で接続が遮断されると困る人もいるのだろう。

背面テーブルの下の網ポケットに、「S Work車両」に関する案内を記したリーフレットが備え付けられてあった。座席でのウェブ会議や通話も許容されているが、ヘッドセットを使う際はできるだけ小さい声で話すなど、節度ある利用を心がけたい。加えて、座席の性格上、乗客同士の会話や座席を回転しての利用も禁止している。7号車には喫煙ルームがあったが、閉鎖された。車内販売や警備員は、通常車両と同じくらいの頻度でやって来る。

車内観察と執筆作業をしているうちに、名古屋駅に到着。目的地で取材を済ませた後、帰りも「S Work車両」を利用することにした。

  • N700Sの「S Work車両」に搭載されている「S Wi-Fi for Biz」のログイン画面。接続方法などは「Shinkansen Free Wi-Fi」と同一だが、通信速度は通常の2倍で、制限時間もない

帰りに乗車した「のぞみ58号」はN700Sを使用していた。N700Sの「S Work車両」には、通常の「Shinkansen Free Wi-Fi」とは別に、「S Wi-Fi for Biz」という専用のWi-Fiが搭載されている。通信速度が「Shinkansen Free Wi-Fi」の2倍で、制限時間は設けられていない。セキュリティも従来と比べて高いものになっている。実際に使用してみたが、通信速度がかなり速くなり、非常に快適だった。トンネルの多い東海道新幹線だが、電波についてもほとんど気にならない。

取材の感想やメモをまとめているうちに、あっという間に新横浜駅に到着。移動中も仕事が捗ったことに心の中で感謝しつつ、「S Work車両」を後にした。

  • N700Sの車内(2020年6月の試乗会にて、編集部撮影)。全席にコンセントが設置されているため、パソコンを使っての作業も快適にできる

今回、「スマートEX」と「S Work車両」を初めて利用したが、ビジネスマンにとっては非常に便利かつ快適なサービスだと言えるだろう。「EX予約」と異なり年会費もかからないため、仕事で新幹線をよく利用する人はぜひ登録し、体験してみてほしいと思った。