エムステージは6月16日、「ハラスメントについてのアンケート」の結果を発表した。同調査は5月31日、医師734名を対象に、インターネットで実施した。
職場で「ハラスメントを受けた」と感じたことがあるか尋ねたところ、55%が「ある」と答えた。受けたことのあるハラスメントの種類について聞くと、最も多い回答は「パワーハラスメント」で、2位は「ペイシェントハラスメント(患者から医師への嫌がらせ)」、3位は「モラルハラスメント」だった。
具体的なハラスメント内容を聞くと、「処置中に蹴られる」「怒鳴られた」「コッヘル(止血鉗子)投げられた」「患者から土下座を強要された」「女は子ども産んで辞めろ、と教授に言われた」「妊娠するなと言われた」「先輩医師から人格否定をされた」などの声が挙がった。
ハラスメントを受けた時の行動について尋ねると、1位は「何もしなかった」、2位は「上司や同僚、職場に相談した」、3位は「転職・退職した」となった。「その他」の回答では、「泣いた(その他内科系)」、「聞き流したがとても嫌な思いをした(一般内科)」、「ひたすら耐えて頑張った(消化器内科)」などがあった。
職場でハラスメントだと感じる行為を見たことがあるか聞くと、56%が「ある」と答えた。
ハラスメントを受けた時・見た時の対応についての課題について尋ねたところ、圧倒的に多かったのは「対応方法がわからない」だった。「その他」の回答では、「対話内容など、証拠を残す方法、責任の所在が不明(消化器内科)」、「暴力や脅迫がない限り自分で対応するしかない(耳鼻咽喉科)」、「教え方はきついが、言っていることはもっともだと思い傍観(呼吸器内科)」、「本人の同意を得ずに報告すべきか分からない(精神科)」、「やられた側がこんなものだと割り切っていた(消化器内科)」などが挙がっている。
「パワハラ防止法」施行により、医療機関・企業には主に、「方針の明確化とその周知・啓発」「ハラスメント発生時の迅速適切な対応」「相談体制の整備、などの対応」が義務化された。そこで「方針の明確化とその周知・啓発」について、自身の勤務先の方針を知っているか尋ねたところ、73%が「知らない」と答えた。
「ハラスメント発生時の迅速適切な対応」について、自身の勤務先の対応フローなどを知っているか聞くと、75%が「知らない」と回答した。「相談体制の整備」についても、自身の勤務先のハラスメント相談先を知っている割合は30%に留まった。
職場でハラスメントが起こる原因は何だと思うか自由回答で答えてもらったところ、「心に余裕がない。忙しすぎる」「皆の精神状態の劣悪さ」といった職場環境、「指導する側がハラスメントだと思っていない」「現場のストレス、ハラスメント教育がなされていない」など周知・教育に関すること、「起こす側の人間性、受ける側の能力不足」「お互いのコミュニケーション不足」といった人の問題を挙げる声もあった。
また、「告発しても適切に対応・指導しない上層部」「慣例を踏襲する習慣。ハラスメントを改善する意識が組織にないこと」といった制度や体制や、世代間ギャップ、ハラスメントの過剰な拡大解釈といった意見もあった。患者からのハラスメントに関しては、「患者さんの心の余裕がない」「一つは、患者の性格。一つは医療側の説明不足やコミニュケーション不足」などの意見も寄せられている。
ハラスメントのない職場環境を実現するためには、どうしたらよいか尋ねたところ、「指導者は全員ハラスメントに関する教育を受けるようにする。罰則を強化する」といった教育面、「相談窓口を病院のガイドライン等に明記すること」「定期的な面談」など制度・体制の整備、オープンな診察環境や医局の雰囲気といった職場環境の改善といった意見が挙がった。「お互いを尊重する」といった心がけや、働き方改革によって精神的・肉体的な負担を減らすという声もあった。