親しい人間関係を形成するために重要な役割を果たす「自己開示」という言葉をご存知ですか。
本記事では、ビジネスにおいて自己開示をする方法、自己開示による注意点やメリットについて解説。また、似ている言葉の自己呈示・自己顕示との意味の違いについても紹介していきます。
自己開示とは
自己開示という言葉は、心理学者のシドニー・ジュラードが初めて提唱した概念と考えられており、「自分自身をあらわにする行為」「他者が知覚しうるように自身を示す行為」などと定義されています。
より簡単に言えば、他者に対し「私はこういう人間です」ということを伝えたり、自分の考えていることをさらけ出したりすること、ととらえていいでしょう。この自己開示をすることで相手に自分のことを理解してもらいやすくなり、距離感を近づけることが可能になるのです。
自己開示によるメリット
ここでは、自己開示をすることでどのようなメリットが得られるのかをより詳細に紹介していきます。
人間関係を構築できる
自己開示をすると、これまで見せてこなかった部分を相手に見せることになります。そのため、一歩踏み込んだ関係性を構築でき、人間関係の形成に重要な役割を果たします。
自己開示された方は、自分のことを特別に思って打ち明けてくれたと感じ、嬉しい気持ちから自分も自己開示して相手を受け入れようとします。お互い自己開示をし合うことで距離感がどんどん近まり、居心地のよさを感じるでしょう。
自信がつく
相手に受け入れてもらうことで、「自分の意見を尊重された」「賛同してもらえた」という気持ちが抱け、結果として自分の自信にもつながります。
自己開示は自分の外側ではなく、内側の本質部分を見せることでもあります。それを話すことで自分の自信になり、その話を聞いて相手がよい返事をしてくれると、ポジティブな気持ちになるでしょう。
ビジネスにおいて自己開示をする方法
ビジネスにおいて自己開示をする方法はいくつかあります。以下にまとめましたので参考にしてみてください。
仕事と関係のない話をする
突然自己開示を始めると、相手が驚いてしまう可能性があります。仕事と関係のない内容から会話をスタートさせることで、自己開示しやすくなるでしょう。
出身地や学生時代の部活動、飼っているペットの紹介など、ありきたりな話題で構いません。相手が話題に興味を持ったとき、その話題を掘り下げることで親近感が湧きやすくなります。
相手に質問をする
会話の後、相手に対して個人的な質問をすることで、自己開示につなげやすくなります。イエスかノーで答えられる質問は、その後の会話に詰まってしまう傾向が強いため、相手が自由に答えられる内容を質問しましょう。
自由に答えられる質問は、相手も自分の話をしやすいため、相手の情報や価値観を知る機会になります。そこから踏み込んだ話をしていくことで、自己開示に近づくでしょう。
自分の弱みを見せる
自分の弱みを見せることで、相手との距離が近づきやすくなります。弱みを見せることは人間らしさを見せることでもあり、それをきっかけに自己開示しやすい雰囲気になるでしょう。
注意点として、弱みを失敗談などで話しすぎてしまうと「尊敬できない人なのではないか」と不信感が芽生える可能性があります。失敗談を話す際は、「その失敗をどう克服したか」「今はその経験を糧にしている」という部分も付け加えましょう。
自分の考えを足す
相手の話を聞き、自分の考えを付け足すことも自己開示するうえで効果的といわれています。相手の話に付け加えて話をするため、対等な立場でバランスよく会話を進められます。また、相手を肯定的に見ているという印象も与えられるでしょう。共通の価値観を持っていることを印象づけることで、相手から好意的に見られやすくなります。
自己開示と自己呈示の違い
自己開示と似た言葉に「自己呈示(じこていじ)」があります。
他人に自分のことをありのままにさらけ出す「自己開示」に比べ、「自己呈示」とは、自分をよく見せようとアピールすることです。「印象操作」の意味合いを含む言葉といえます。
ビジネスシーンにおいては、上司との面談やクライアントとのやりとりにおいて、「ありのまま腹を割って話しましょう」と自己開示を要求されたとしても、「自分をアピールして気に入られたい、受注したい」など、自分をより良く見せたいと思い、発言や行動をしてしまうものです。これを自己呈示といいます。
自己開示と自己顕示の違い
「自己顕示(じこけんじ)」も自己開示と混同されやい言葉です。
「自己顕示」とは、周りの人間から注目され認められたいという欲求のことです。
ありのままの自分をさらけ出すという意味の「自己開示」に対し、「自己顕示」は見られたい自分を演出し、そして承認されたいという意味合いが強くなっています。
自己開示におけるジョハリの窓とは
ビジネスと自己開示の関係性において有名なものに「ジョハリの窓」があります。
心理学モデルのひとつであるジョハリの窓は、自己分析を行いながら他者とのコミュニケーションのあり方を学べるため、社内研修やグループワークで使用される機会も少なくありません。
ジョハリの窓をイメージするには、1つの大きな窓を思い浮かべてみてください。その窓を「自分が知っている/知らない」という軸と「他人が知っている/知らない」という軸を交差して分類すると、4つの窓ができると思います。
その4つの窓のそれぞれの特性を以下にて紹介していきます。
(1)開放の窓
【自分は知っている・他人は知っている】
「開放の窓」は自分も他人も知っている自己のことを指します。「怒りっぽい」「几帳面」など、自他ともに理解している性格などが開放の窓に入れるべき情報となります。
この窓に該当する項目を書き出す際、その数が多ければ自分の能力や内面については、自他ともに理解が進んでいることになります。少なければ、他人から「よくわからない人」と思われやすいかもしれません。
(2)盲点の窓
【自分は知らない・他人は知っている】
「盲点の窓」は自分は知らないが、他人が知っている自分の姿を指します。周囲から「とても頭がよい人だ」と思われているのに、自身の自覚がない場合、「頭がよい」という情報が盲点の窓に入ります。
盲点の窓に該当する項目が多ければ、自己分析があまりできていない状態にあると言えるでしょう。
(3)秘密の窓
【自分は知っている・他人は知らない】
「秘密の窓」に入るのは、「自分では知っているが他者には見せていない、自分の姿」。秘密の窓に該当する項目が多い場合には、自分の中に隠しごとが多く、自己開示ができていない状態にあると言えるでしょう。
自己開示にあたって最も重視すべきなのは、この秘密の窓です。ここに入っている情報をいかに開放の窓に移せるかが、スムーズな自己開示の分かれ目となります。
(4)未知の窓
【自分は知らない・他人は知らない】
「未知の窓」はまだ誰からも知られていない自己のことを意味しています。まだ発見されていない、自分の可能性や潜在能力のようなものですが、誰も気づくことができないため、未知の窓に書き出せる情報はありません。
ジョハリの窓を利用すれば主観的イメージ(セルフイメージ)や客観的イメージ(パブリックイメージ)の認識・把握に役立ち、ひいては自己開示に役立つのです。
自己開示のデメリットとは? 注意点を解説
自己開示はよい面ばかりではなく、デメリットもあります。場合によっては悪い方向に進んでしまう可能性があるため注意が必要です。以下に自己開示をするときの注意点をまとめました。
無理をして自己開示しない
相手が自己開示してきたとき、自分もしなければいけないというルールは存在しません。自己開示をするときは、自分のタイミングで行いましょう。「相手が自己開示してくれたから」という理由で無理に自分の自己開示をする必要はありません。
聞き手に回って時間を過ごしたり、自己開示から離れるよう別の話題に切り替えたりしましょう。
信頼できる相手かどうか見極める
信頼関係を築けていない相手への自己開示はリスクが高まります。自己開示はプライベートな内容を伝えるため、悪い目的に利用される恐れがあるからです。
仕事上の関係で利益が見える相手であっても、好感や信頼感を抱けずにその後関係性を深めたい気持ちが起きない場合もあります。そういうときには、自己開示をする必要はないでしょう。警戒も健全な人間関係を築くポイントです。
自己開示をする方法を知りビジネスに活かそう
これまで、ビジネスにおいて自己開示する方法や、自己開示による注意点やメリットについて解説しました。自己開示によって人間関係が豊かになることが理解できれば、会社の上司や取引先の商談相手など効果的に使用できる場面が増えるでしょう。
ただし、好感が持てない相手に自己開示するのはリスクを伴うため注意が必要です。自己開示をする方法を正しく知り、ビジネスに活かしましょう。