よく見掛ける「貼付」という言葉。正しい読み方は「ちょうふ」「てんぷ」のどちらかご存じでしょうか? この記事では意外と知らない「貼付」の読み方や意味、類語や反対語などを解説します。
「貼付」の正しい読み方
早速、「貼付」の読み方について学んでいきましょう。
もともとの読み方は「ちょうふ」
「貼付」は、「ちょうふ」と読みます。ただし、現在では慣用読みである「てんぷ」も広く使われているようです。
なお、「はりつけ」と読む場合の表記は「貼付」ではなく、送り仮名を添え「貼り付け」とする方が自然です。
「てんぷ」とも読まれるようになった経緯
「貼」にはもともと「チョウ・は(る)」の読みしかないにもかかわらず、「貼付」の読みが「てんぷ」として定着した経緯を説明します。それは、「貼付」と似た意味を持つ「添付」の読みである「てんぷ」に影響されて、浸透していった結果であると考えられます。
すっかり市民権を得た読み方ですので、「貼付」を「てんぷ」と読むことは間違いとはされないのが一般的です。現在では「てんぷ」は「貼付」の慣用読みとしてほとんどの国語辞典に記載されています。また、コンピューターやスマートフォンで「てんぷ」と打つと、多くの場合「貼付」が変換候補として出てくるでしょう。
ですが、社会人の教養として「貼付」のもともとの読みが「ちょうふ」であることは、きちんと押さえておきたいものです。
「貼付」の意味とは
「貼付」は、「貼り付けること」という意味を持っています。例えば「履歴書に写真を貼付する」といった形で使用します。
「貼付」の「貼」は「はる、つける、はりつける」、「付」は「つける、つく」を意味しており、この2つを合わせて「貼り付けること」を意味する「貼付」となります。ちなみに湿布などの貼り薬のことは「貼付剤(ちょうふざい)」や「貼付薬(ちょうふやく)」といいます。
「貼付」と「添付」の違い
「貼り付けること」を意味する「貼付」ですが、似た意味を持つ言葉に「添付」があります。この「貼付」と「添付」はどちらも、ビジネスシーンでよく用いられる表現です。
「添付」は「てんぷ」と読み、これが「貼付」の慣用読みである「てんぷ」に影響を与えた可能性があることは先ほど触れました。
「添付」の意味は、「書類などに、その補足となるものを付け添えること」です。「メールにファイルを添付する」などのフレーズで頻繁に目にする表現となっています。
「添付」は、書類などに何かを付け加えて補足する、一緒にしておくことを意味しています。一方の「貼付」には書類や写真、切手や湿布など薄いものを、接着剤などを用いて物理的に貼り付けるというニュアンスがあります。
「貼付」と異なり「添付」には、実際にものを貼り付けるという物理的な動作は伴いません。したがってメールにファイルを添えるといった際には「貼付」ではなく、「添付」を使用することになります。
似通った意味を持ち、同じ読み方をすることも増えているこの2つの言葉ですが、使用にあたっては両者の違いをきちんと把握し、しっかりと使い分けをするように心掛けましょう。
「貼付」の使い方と例文
次に「貼付」の例文を紹介します。これらを参考に、正しく使えるようになりましょう。
・確定申告書に、源泉徴収票を貼付して提出した
・履歴書に、写真を貼付するのを忘れてしまった
・彼女は壁いっぱいに、お気に入りのアイドルのポスターを貼付していた
・彼は関節の痛みに耐えかねて、鎮痛効果のある貼付薬を貼った
・経費の精算の際には金額に関わらず、領収書の貼付が必須です
「貼付」の類語は?
言葉の意味をより深く理解するためには、類語や言い換えを確認することも大切です。「貼付」にも似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。
貼り付け(はりつけ)
「紙や布などを貼り付けること。また、貼り付けたもの」を意味します。別表記で「張り付け」もあります。「貼付」の言い換えとして、よく用いられる表現です。
接着(せっちゃく)
「物体同士がぴったりくっつくこと。また、くっつけること」。「セロハンテープで接着する」などの他、ものとものとを貼り合わせるのに用いる「接着剤」といった形でも使われる言葉です。
糊着(こちゃく)
「こちゃく」と読み、意味は「糊(のり)で固く付けること。また、糊で付けたようにぴったりとくっつくこと」です。なお別の意味として、「ある物事に固執して離れられないこと」もあります。
固着(こちゃく)
「糊着」と同じく「こちゃく」と読み、意味は「他のものにしっかりと、固くくっつくこと」です。ただくっつけるのではなく、「固く、強力に」というニュアンスがある言葉となります。なお別の意味としては「同じ場所にとどまり、そのままの状態で定着すること」もあります。
糊付け(のりづけ)
「物体を糊で貼り付けること。また、そのもの」を意味します。これも「貼付」同様、物理的にものを貼り付けることを示します。
糊する(のりする)
「糊付けする、糊で貼る」を意味する言葉です。また、慣用句「口を糊する」として、「お粥をすするようにして、なんとか生計を立てる」という意味でも用いられます。
ペースト
英語の「paste」は、名詞で「糊(のり)、糊状のもの、生地、ペースト」、そして動詞では「糊で貼る」などを意味します。
ビジネスシーンでは主に、コンピューター上での「転写、貼り付け」を意味する言葉として使用されます。「コピーアンドペースト(copy and paste)」や「カットアンドペースト(cut and paste)」はすっかり日本語化していますね。特に「コピーアンドペースト」は、「コピペ」と略されて使用されるケースが多いようです。
なおコンピューター上での「ペースト」は物理的に糊などを使ってものを貼り付けるという動作は伴いませんが、比喩的に定着しています。
「貼付」の反対語は?
それでは、「貼付」の反対語は何になるでしょうか。ここでは、反対の意味を持つ言葉を考えてみましょう。
剥がす(はがす)
文字通り、「くっついているものを剥ぎ取る、めくり取る」こと。「机に貼られたシールを剥がしなさい」といった使い方をします。
剥離(はくり)
意味は「はがれて離れること。また、はがすこと」。「5年前に塗ったペンキが剥離してきた」などの形で使います。
「貼付」の英語表現と例文
「貼付」を表す英語は、類語の項でも挙げた「paste」の他に、「stick」「attach」「affix」などが挙げられます。文脈やシチュエーションなどを考慮しつつ、適切なものを選びましょう。
paste
「paste」は、「糊(のり)、糊状のもの、生地、ペースト」などを意味する名詞です。また、動詞として「糊で貼る」という意味もあります。
(壁に掲示を貼り付けましょう)
stick
「stick」は、「棒、枝木、ステッキ」などのほかに、動詞として「貼り付ける」という意味があります。
(彼女は壁にポスターを貼付した)
attach
「くっつける、付着する、添える」などの意味があるため、「貼付」に加えて「添付」の意味合いも含んでいるでしょう。
(彼はそのシールを貼った)
・Please attach the receipt to the document.
(書類に領収書を添付してください)
affix
「affix」は、「貼り付ける、添付する、添える、(印などを)押す」といった意味を持ちます。
(私は手紙に切手を貼付した)
「貼付」の意味を知って正しく使おう
「貼付」は、「貼り付けること」を意味します。日常会話や職場でもよく使う表現ですので、意味や使い方をしっかり把握し、正しく使用しましょう。
読み方である「てんぷ」「ちょうふ」の違いや、意味や読みが似ている「添付」との使い分けなど、押さえておきたいポイントがいくつかあります。特にビジネスシーンでも頻出する表現だけに、正確な使用を心掛けたいところ。皆さんもこの記事を参考に、「貼付」という表現を正しく使いこなしてみてください。