映画『シン・ウルトラマン』の大ヒット御礼舞台挨拶が25日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、樋口真嗣監督と禍特対(カトクタイ)専従班キャスト5人が再結集を果たすと共に、劇中で強烈な存在感を打ち出した「外星人メフィラス」役の山本耕史が登壇。かけつけた大勢のファンと共に、映画の大ヒットを祝った。

  • 左から早見あかり、有岡大貴、長澤まさみ、斎藤工、西島秀俊、山本耕史、樋口真嗣監督

※記事内には映画の内容に触れている箇所があります。まだ映画を観ていない方はご注意ください。

5月13日から公開された『シン・ウルトラマン』は、24日までの12日間で観客動員数143万人、興行収入21.6億円を突破。1966年に円谷プロ・TBSが制作した特撮テレビシリーズ『ウルトラマン』(全39話)をベースに、まったく新しい世界観でストーリーを構築。巨大不明生物=「禍威獣(カイジュウ)」や「外星人」の脅威に挑む禍特対専従班と、彼らに味方する銀色の巨人=ウルトラマンの活躍を描く。

午前の上映を観終わった観客に向け「みなさん、朝からこの映画をキメてくださってありがとうございます。僕も早朝から観ましたが、やっぱり『朝トラマン』は最高ですね!」と挨拶した斎藤工は、禍特対の作戦立案担当にして「ウルトラマンになる男」・神永新二を演じた。映画の反響を聞かれた斎藤は、「普段はメールで連絡を済ませる方から電話をもらったりすることが多くなりました。映画の興奮を共有したいというか、童心に戻ったかのような人が周囲に増えましたね。観れば観るほど魅力が増す映画ですし、僕自身もまだ観足りない思いです」と語り、『シン・ウルトラマン』を観終わった周囲の人たちから、熱烈なるリアクションをもらって満足そうな笑顔を見せた。

神永の相棒(バディ)となる禍特対分析官・浅見弘子役の長澤まさみは、映画の反響について「観た人から“面白かった”という感想をもらっています。思わず笑ってしまうシーンもいくつかあったと思いますので、二度目の鑑賞の際はぜひ、大いに笑ってください」と、シリアスなSFストーリーが進行する一方で、いくつかユーモアを感じさせるシーンもあり、そこが魅力であるとにこやかに話した。

禍特対専従班・班長の田村君男を演じる西島秀俊は「劇場へ足を運んでくださったみなさんの応援によって、作品が大きく育っていくと思います」と語って映画の大ヒットを喜びつつ「普段映画館に行かないような知り合いや友人も観に行ってくれている。この作品をきっかけに、映画を観る人が増えていくのではないか」と、これからもっと映画館で映画を観る人たちの数が増加してほしいと願いを込めるコメントを残した。

禍特対メンバーで、非粒子物理学者の滝明久を演じる有岡大貴は「上映終了後ということで、なんとなくみなさんの頭にウルトラマンが浮かんでいるのが見えます!」と、上映の興奮がまだ観客の心に残っていることを察しながら挨拶。映画の反響については「観た人からは、●●が出てくるシーンで興奮した!とか言われまして、ようやく内容についてのお話ができるなと思っていましたが、近くにはまだ観ていない人がいて、イヤな顔をして耳をふさいでいるんです。というわけで、まだおおっぴらには感想を言い合えない、密談的な会話をしています」と、まだ観ていない人にも新鮮な映画体験をしてもらいたい思いで「ネタバレ」に注意していると明かした。

禍特対メンバーで、汎用生物学者・船縁由美を演じる早見あかりは「私も先日、このスクリーンで観ました! ですから今のみなさんと同じ気持ちになってお話ができそう」と、先日まさにこの劇場で『シン・ウルトラマン』を観たと打ち明け、ファンの目線に立って話したいと意欲をあらわにした。映画の反響については「“夜遅いからどうしようか迷ったけれど、連絡せずにはいられなかった”と感想を伝えてくれた人がいました。また、映画館でグッズを買いたかったけど、売り切れで買えなかった人も」と、作品の魅力を熱く語り合いたい人に何人も遭遇したと語った。

外星人1号=ウルトラマンよりも先に地球に来ていた外星人0号「メフィラス」を演じる山本耕史は「メフィラス星人……、やまもとこうじ……、わりと“響き”が似ているので言ってみました」と、クールな表情を崩さずコミカルに挨拶。映画の大ヒットについては「自分が以前に出演していた作品の興行成績をたった一日で抜いてしまった。それくらいすごい映画」だと驚き、『シン・ウルトラマン』という作品の持つパワーを改めて感じた様子だった。

本作のメガホンを取った樋口真嗣監督は「公開からもうすぐ2週間になりますが、何度観てもお楽しみいただける作品にしたつもりですので、何度でも楽しんで」と、リピート鑑賞によってより深い部分まで楽しめる映画だと強調した。監督のほうにも映画の反響が多く来ていたようだが「どこまで話していいんですかね」と迷いつつ、つい映画の「結末」部分に触れてしまい、斎藤から「ソデのほうで三回ほど注意されていましたよね!」とツッコまれる一幕があった。また樋口監督は「観た人からは、あれはどうなってるんですか?という質問とか、俺はこう思うといった“解釈”を2時間ばかりしてくる向きがある。そういうときは、もう一回映画を観たら、答えがわかるかもしれないよと話しています」と、密度の高い情報が詰まっている作品だからこそ、二度、三度鑑賞してほしいと笑みをたたえながら話した。

劇中で印象的だった「なぜか“巨大化”した浅見が東京のビル街に現れ、田村、滝、船縁がぼうぜんと見つめる」シーンの裏話を聞かれた長澤は、「私自身はグリーンバック(合成)で、ひとり地味に撮影していました。倒れるとき、大木のようにまっすぐの状態で、と言われたのが大変だった」と、意識のない状態で地面にバッタリ倒れるシーンの苦労話を語った。樋口監督は浅見の巨大化シーンが『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」での「巨大フジ隊員(演:桜井浩子)」のオマージュだと説明し「当時と同じロケ場所で撮影したんですが、50数年のうちに街路樹が増えて、大変でした。まさか『木を切れ』とも言えませんし(笑)」と、街路樹のために撮影が困難だったことを打ち明けた。

西島、有岡、早見にとっては、巨大化した浅見に遭遇するシーンが撮影の初日だったという。西島は「こういう演出をするんだなと思い、探り探り演技をしていた。できあがった映像を観て、CGチームが僕らの芝居にこんな風に合わせてくれたんだなと感心しました」と話し、現実は起こりえない不思議な現象に巻き込まれた人物たちの撮影を、確かな技術でリアルな映像に作り上げるプロフェッショナルの力量を称えた。

有岡はまた「あのシーンでは、大勢のエキストラの方たちが協力してくださったのですが、撮影時『(巨大な)浅見さんが……』と具体的な指示が出せないので、僕たちも『あそこから怪獣が出てきます!』とか、名前を出さずに芝居をするのが印象的でした」と、映画の内容に極力触れず、エキストラの方々に演技指導をするスタッフの苦労をふりかえってコメントした。

山本演じるメフィラスは、ウルトラマン=神永を伴って公園のブランコに乗ったり、居酒屋のカウンターで日本酒を飲んだり、政府高官の前で数々の諺(ことわざ)や慣用句を使いこなしたりと、外星人でありながらやけに日本の文化・風習に通じているところが人気となった。山本はメフィラスを演じるにあたって「監督からは『人間社会に馴染んでいる感じにしたい』と言われていたが、自分としては床からわずかに浮いているとか、トリッキーなイメージの芝居を意識していた。そのあたりがいい感じのバランスになっていると思います。特に意識をしたのは、言葉を話すときに手を動かしたり、息を大きく吸ったりという、よけいな動きを省いたことです」と、人間側に寄せる方向で演技をしながらも、外星人らしい細かな仕草に注意していたことを明かした。

山本の演技を受ける形となった斎藤は「神永は外星人と地球人のミックスなので、彼の肉体を完全にコントロールできていない……といった部分を意識して演じていました。神永とメフィラスはどちらも地球の者ではないけれど、明らかな違いがある。(山本)耕史さんと芝居をしているシーンでは、メフィラスの言葉に説得力があって、合点が行きまくってしまうのですが、自分の感情としてそれを飲み込んでいかなければならない。響く言葉に対して、響かないようにしなければと、内側での攻防がありました」と、対立すべきメフィラスの言葉に説得力がありすぎたため、神永=ウルトラマンの考えがゆるがないよう、演技する際に心の中でせめぎ合いがあったと語った。

ここで、メフィラスの名セリフ「私の好きな言葉です」にちなんで、登壇者それぞれの「好きな言葉」をフリップで披露することに。

普段から身体を鍛え、筋肉を磨き上げている山本は「プロテイン」を挙げ、撮影中でも有岡と一緒に「筋肉談義」をしていたと語って笑顔を見せた。

早見は「ありがとう」を挙げ「誰が聞いても嫌な気持ちにならない言葉」だと、ニッコリ微笑みながら話した。

有岡は「ご自由にお取りください」という言葉を挙げた。これは彼が幼いころ、母と一緒に行った銀行の窓口で「飴」をもらった喜びゆえのチョイスだという。そして、円谷プロからウルトラマンのグッズをキャスト・スタッフに『ご自由にお取りください』と提供された際「いちばん誰よりもはしゃいでいたのが樋口監督でした(笑)」と語り、樋口監督のウルトラマン愛の強さを明かした。

長澤は「滋味」を挙げ、旬のタケノコなど「美味しいもの」を食べたとき、その味を噛みしめながら「滋味ですね……と言いたい」と、大人の女性の魅力あふれるコメントを残した。

斎藤は、「高田純次さんの名言から」とことわり「歳とってやっちゃいけないことは『説教』と『昔話』と『自慢話』」を挙げ「僕も40歳になりましたし、この言葉を胸にしてこれから生きていきたい」と、人生経験を重ねた大人が若者に対していかに接するべきかを強調した。

西島は「スイーツは別腹」を挙げて、さわやかに微笑んだ。撮影の合間の楽しみとして、甘いものを食べることが多かったと語る西島を受けて、有岡は「西島さんは常にスイーツを求めて歩いていましたね。放射能防護服を着たシーンではお菓子が食べられないので、マスクのすき間からお菓子の“におい”を嗅いでいたこともありました(笑)」と、西島にまつわるとっておきの裏話を披露。西島は「ホントに嗅げるんですよ。あのときは、せめてお菓子の匂いだけでも欲しかった(笑)」と、現場の状況を説明していた。

樋口監督は「無塩バター」を挙げ「こんなものがあるとは、50年以上生きてて知らなかった。コロナ禍で自分の時間がが増えたので、家でお菓子作りをしていたときに出会ったんです。塩分の入っていないバターによって味わいが増す。まずは土台に凝れ!ということですね」と、無塩バターの重要さを熱烈にアピールした。

最後にマイクを手にした斎藤は「60年代に円谷英二さん(円谷プロ創設者/特技監督)が子どもたちの未来に希望を受け取ってほしいと思い、誕生したのが『ウルトラマン』でした。そのバトンを受け取ったのが、庵野秀明さん(企画・脚本・総監修・モーションアクターほか)や樋口さんといった制作陣のみなさんです。スタッフや僕たちキャストがこの作品に込めた思いが、かつて子どもだった方々、そして今まさに未来を築いていく子どもたちに、映画体験として末永く届くことを願っています。今はまだ混沌とした時代ですが、ウルトラマンという概念が今こそ必要なんじゃないでしょうか。『シン・ウルトラマン』の中でウルトラマンが言った『きみたち人類のすべてに期待する』という言葉を胸にして、僕も明日から希望を持って生きていきたいと思います。この作品が『いいな』と思ってくださったら、ぜひたくさんの人たちと共有して、作品をさらに大きく育てていただけたらうれしいです」と挨拶。作り手からの熱い思いが込められた『シン・ウルトラマン』をいっそう大きく盛り上げるため、観客に向かって強く応援を呼びかけた。

『シン・ウルトラマン』は全国劇場にて公開中。

(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ