映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』(5月20日/6月24日公開)が公開される。2001年から2010年にかけて『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載された人気漫画の実写化作品で、亡き母を生き返らせようと禁忌を犯して挑んだ“人体錬成”に失敗し、左脚と右腕を失った兄エドワード・エルリック(山田涼介)と、身体全部を持って行かれ鎧に魂を定着させた弟アルフォンス・エルリック(水石亜飛夢)の物語を描いている。

映画の第1作は2017年12月に公開され、魅力的なキャラクターが多数登場する中で公開当時から話題となっていたのが、本郷奏多演じる人造人間(ホムンクルス)・エンヴィーの再現度だ。『完結編』二部作でもキーパーソンとなり、作品に力を与えている。今回は本郷にインタビューし、評判となった役作りについて話を聞いた。

  • 本郷奏多 撮影:友野雄

    本郷奏多 撮影:友野雄

■「あのキャラが動いてたら、こうだよね」を大事に

――前作が公開された時に、特に本郷さんの再現度がすごいと話題になってましたが、評判は届いていましたか?

正直、すごく特徴のあるビジュアルのキャラクターなので、大丈夫なのか、どうしたらいいのかとたくさん話し合いましたし、ドキドキしながらキャラクターを作りあげていきました。難しいですよね……漫画やアニメだから成立するビジュアルのキャラクターはいろいろいると思うんですけど、中でもエンヴィーは難しいキャラで。例えば髪の毛の長さや質感、束感などもいろいろ試した記憶があります。正直なところ、自分ではどう評価していただけるかはわからないですけど、そうやってエンヴィーが出来上がりました。

  • (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

――改めて見ると意外と布が少ないですが、寒かったりはしなかったですか?

そうなんですよ! 最初は灼熱の日からスタートだったんで良かったんですけど、半年ぐらいかけて撮影してたら、どんどん寒くなってきて(笑)。グラトニー役の内山さんと一緒のシーンが多かったので、力関係が逆転して行くというか……内山さんは暑い格好をしているから、最後は逆に「あったかいよ〜」と言われてました。

――キーパーソンとして魅力を放っていたと思います。何かポイントはありましたか?

ホムンクルス達って、物語を最後まで理解しないと、目的がよくわからない謎の集団という立ち位置なんです。観ている方に「こいつら、時々出てくるけどなんなんだ」という気持ち悪さを持ってもらえたらと、シーンを作っていきました。見た目にインパクトのあるキャラが多いので、人間達はちょっと違う異質な感じ、気持ち悪さを大事に作っていきました。

――そういう役って、得意な方だったりしますか?

得意意識はあります。普段から、人間じゃない役が多いので(笑)

――本郷さんは漫画などのカルチャーが好きということで、漫画原作の映画に出演することには嬉しさを感じますか? 逆にプレッシャーですか?

やっぱり嬉しいです。『ハガレン』も元々好きな作品だったし、実写化するためにすごい数の大人たちが本気を出して少しでも良いものを作ろうとしている。そこに参加できるのは楽しくて、出来上がった作品を見た時の感動も大きいです。

漫画原作の作品に出演させていただくことは多いんですが、自分が大事にしたいなと思っているのはやっぱり原作のキャラクターのイメージなんですよね。原作ファンは役者さんのオリジナリティーを見たいというよりも、「あのキャラが動いてたら、こうだよね」ということを楽しみにしているんだと思っています。名前のある作品を映像化させていただいている側なので、原作が1番大事だと思っていますし、僕個人としては原作のイメージを大切に、漫画を読み込んでアニメも観て、体現できるようにしています。

――設定を読み込んで、さらに演技として出力しなければいけないことについてはいかがですか?

やっぱり元々好きな原作なので、普通にファン目線として「こういうふうにやってほしい」「こういうことはしないでほしい」ということがわかるから、とにかくそれを実行しているという感覚です。

――だからこそ、みんなが納得するようなキャラクターが出来上がっているんですね。

いやもう、全然ですよ!(照れて)

■原作を好きな人にも納得いただけるように

――エド役の山田さん、リン役の渡邊圭祐さんとのシーンも多かったですが、お二人についてはどのような印象でしたか?

山田さんは前回から共演させていただいていて、ものすごく素晴らしい俳優さんだと尊敬しているんですけど、相変わらず素敵でした。渡邊さんは今回初めてご一緒しまして、リンは飄々として掴みどころがないキャラクターだけど、話が核心に迫る時はぐっと集中して目力が入るというところをすごく素敵に表現なさっていて、すごいなと思って見ていました。

――山田さんについては完成報告会見で「立体映像なんじゃないか」などともおっしゃってしましたが…

山田くんは完璧なので。お芝居の熱量も素晴らしいです。実は『ハガレン』ってコミカルなシーンが多くて、漫画では時々エドがデフォルメされて2頭身くらいになるんですが、あの絵が思い浮かぶようなお芝居を実写でもしてらっしゃって、それって簡単なことじゃないと思うんです。ちょっと間違えると寒くなっちゃいそうな難しいところを正確に通すお芝居をなさっていて、漫画のあの感じを表現されているのは、山田くんの技術力だと思います。カメラが回っているところ以外での立ち振る舞いも素敵で、周りに気を配ってなじめていない人がいたら声をかけたり、そういう姿勢も素晴らしいし、すごいスターだなという感じがします。

――エンヴィーは嫉妬のホムンクルスですが、本郷さんは嫉妬するようなことはあるんですか?

僕は嫉妬という感情は嫌いというかもったいないと思って、自分が抱くことは少ないです。それよりも現状を受け入れて自分をどう変えていくべきかの方が大事だと思うので。

例えばグラトニーの「暴食」などはわかりやすいんですけど、エンヴィーの「嫉妬」は表すのが難しいですよね。ただ、『最後の錬成』では原作のエピソードを完結まで描いていただけたので、最後まで見ていただけたらわかってもらえると思います。原作を好きな人にも納得いただけるように、3本の映画でしっかりと『ハガレン』の世界を表現した作品になったと思いますし、原作をまだ読んでいない方も、映像の迫力やキャストの面白さなど、どこか魅力的だと思ってもらえるポイントがある作品なので、ぜひ1作目から見返して劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

■本郷奏多
1990年11月15日生まれ、宮城県出身。主な出演映画に『GANTZ』シリーズ(11年)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』シリーズ(15年)、『いぬやしき』(18年)、『キングダム』(19年)、『Diner ダイナー』(19年)、『嘘喰い』(22年)など。TVドラマでは、『ラブホの上野さん』(17年)、『アカギ』シリー ズ (15、17、18年)、『56年目の失恋』(20年)、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(20〜21年)、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(21〜22年)など。