NHKドラマ『恋せぬふたり』を手掛けた脚本家の吉田恵里香氏が、「第40回(2021年度)向田邦子賞」を受賞し、24日に都内のホテルで行われた贈賞式に出席。受賞のスピーチで喜びを語った。

  • 『恋せぬふたり』で向田邦子賞を受賞した吉田恵里香氏

向田邦子賞委員会と東京ニュース通信社が主催する同賞は、テレビドラマの脚本を対象に、優れた脚本家を表彰するもの。2004年度の大森美香氏に次ぐ年少記録で受賞した吉田氏に対し、同賞では「『恋せぬふたり』は、他者に対して恋愛感情も性的欲求も持たないアセクシュアルの女性が、同様の男性と同居し、心の安定を得るまでを極めて低い声で、しかも明るいトーンで描いている。セリフも適確で無駄を排している。周囲の人物達との関わりも自然な弾みがあり、この物語に和らかな日常性を与えている」と評価し、表彰状に加え、本賞の特製万年筆、副賞300万円が贈られた。

吉田氏は「『恋せぬふたり』に限らず、映像作品はもちろん脚本家1人で作るものではないと思います。数多くのスタッフの皆さんはもちろん、私の場合は特に家族の支えなしで書くことはできませんでした。いつも夫と両親、そして大好きな息子に本当に感謝しています。そして大学生の頃から私を支えてくださった事務所の皆さんにも感謝しています」と挨拶。

会場には1才10カ月の息子も駆けつけ、抱っこを求めて会場に泣き声が響く場面もあったが、壇上で抱き上げた吉田氏は「一番迷惑をかけたのはこの子だと思います(笑)。本当にありがとう」と感謝の言葉を伝えた。

また今作で、恋愛感情・性欲を持たない「アロマンティック・アセクシュアル」をテーマにしたことについて、「性的マイノリティーの方をドラマの中で消耗品として、ネタとして扱ってしまう危険性も感じております」とした上で、「私は今後も持続的に正しい知識で、生きづらさを感じている方に希望を与えられる、生きやすさを感じていただける、肩にポンと手を置けるような作品を目指していきたいと思ってますし、テレビドラマにもっとそういう作品が増えていけばいいなと思っております。私もベストを尽くします、頑張ります」と意欲を示した。

同式には『恋せぬふたり』に出演した、濱正悟と北香那がお祝いゲストとして登壇。濱は「この作品を通して、人のことを少しでも一瞬でも考えたり思ったりする瞬間は大切だなと、いろんなことを知ったり考えたりして、一(かず)君という役とともに自分も少しは成長できたんじゃないかなと思っております」、北は「この作品を通して、肩に手を置かれた感じで『自分は自分で大丈夫なんだ』と言われたような気がして、こういう作品に役者として出演ができて、本当に良かったなと思います」と感謝した。

さらに、主演の岸井ゆきのはビデオメッセージを寄せ、「自分の気持ちを吐露するシーンはセリフが多かったりしたんですけど、覚えにくいということは一切なくて、考えていることを紡ぎながらしゃべっているというシーンが多くて、(演じた)咲子の気持ちがすごく分かったし、私自身もその言葉について考えながらしゃべることができたので、私も咲子と一緒に成長することができました。ありがとうございました。また吉田さんと一緒に何か物語を作っていけたらいいなと思っています」と呼びかけた。

  • 濱正悟

  • 北香那

  • 岸井ゆきの

  • (左から)審査員の池端俊策氏、大石静氏、岡田惠和氏、井上由美子氏、坂元裕二氏

  • 前年度受賞者の橋部敦子氏