ドラマやアニメなどでよく見聞きする「御意」という言葉ですが、その意味や使い方を正しく理解していますか。丁寧な言葉に見えますが、ビジネスシーンでの返事として使用していいのでしょうか。

本記事では「御意」の複数の意味、ビジネスで使えるのかや使い方と例文、読み方、「了解」「承知」との違い、アニメ・ドラマでの使用例、類語に英語表現まで、一気に紹介します。

  • 「御意」はかつて武士が主君など目上の人への返事として使用していた言葉です

    「御意」の意味や類語、使い方を解説する記事です

「御意」の意味と読み方とは

早速、「御意」の意味や読み方を確認しましょう。「御意」は、複数の意味を持っています。

「御意」の基本的な意味

辞書の上では、「御意」は以下のような意味を持っています。

  • 貴人や目上の人の考え・意向を意味する言葉。お心・思し召し(おぼしめし)

  • 貴人や主君などの仰せ(おおせ)※、お指図

  • 「御意のとおり」を略した言葉。目上の人に対して、「あなたの言う通りである」と同意や肯定を示すときの返事

※言いつけ・命令のこと

現在よく耳にするのは、3つ目の返事として使うものでしょう。

「御意」の読み方は「ぎょい」

「御意」は「ぎょい」と読みます。「御意」の「御」は「ご」や「お」、「おん」と読まれることが多いですが、「意」が組み合わさったときには「ぎょ」が正しい読み方になります。

なお、同音異義語に「御衣(ぎょい)」という言葉があります。「御衣」は天皇や貴人など高貴な人の衣服(お召しもの)のことを指します。「御衣」にちなんで名付けられた桜が「御衣黄桜(ぎょいこうざくら)」です。緑色の花を咲かすことが特徴で、色合いが平安時代の貴族の衣服である萌黄色(もえぎいろ)に似ていることから、その名が付けられました。

「御意」と「了解しました」「承知しました」の違い

「御意」と似た意味を持つ言葉に「了解」があります。「了解」は「物事の事情や内容を理解して認めること」という意味を持っています。

「御意」と「了解」の違いは、目上の人に使用できるかどうかです。「御意」は武士が目上の人に対してする返事として使われてきた歴史があるので、「御意」の一言で成立します。

一方「了解」は、たとえ丁寧語である「了解しました」という形にしても、目上の人に使用するのは一般的ではありません。目上の人や取引先に対しては、「承知しました」というフレーズを使いましょう。

なお、「了解(しました)」も「承知(しました)」も、了承するという意味を持つため、返事として使うと「理解しただけではなく、受け入れる」というニュアンスになります。

「御意」の使い方と例文

ここでは、「御意」の使い方をご紹介します。

「御意」は現代のビジネスシーンでは使われない

前述のように、「御意」は目上の人の考えや意向、指図を意味する他、それに対しての同意や肯定、命令を受け入れる返事として使用できる言葉です。ですが、主に歴史やフィクション作品で登場する言葉であり、実は現代のビジネスシーンでの使用はあまり一般的ではありません。身近な人とのフランクな日常会話で使うのはいいでしょう。

ビジネスシーンでの返事には、前述のように「承知しました」などを使用するのがおすすめです。

「御意」の例文

【歴史やフィクション作品の場合】
・主君の御意に従い、勝利を祝う豪華絢爛(けんらん)な宴が開催された
・主君から敵の暗殺を命じられた彼は、「御意」と返事をしてその場をあとにした

【日常会話の場合】
母親「しょうゆを切らしちゃったから、帰りに買ってきてちょうだい」
息子「御意!」

ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』には「御意ポーズ」が登場

女優・米倉涼子さん主演の大ヒットシリーズ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』では、米倉さん演じる大門以外の医師たちが、上の立場の医師に命令された際、「御意」と返事をする描写がおなじみとなっています。

2021年に放送された第7シリーズの中では、コロナ禍の感染対策のため、口に出して「御意」と返事をする代わりに、両腕を組んで頭を下げる、独自の「御意ポーズ」が登場。昨今の世情を反映した「御意ポーズ」は、SNSでも話題になりました。

アニメ『鬼滅の刃』でも使用されている

大人気アニメ、漫画である『鬼滅の刃』内でも、鬼殺隊の冨岡義勇や胡蝶しのぶといったキャラクターたちが、お館様こと産屋敷耀哉の命に対し「御意」という返事を使用しています。

現代のビジネスシーンでは使われることのない「御意」ですが、上記のようにドラマやアニメなどのフィクション作品ではよく使用されることがあります。

  • 「御意」は歴史やフィクション作品などで登場する言葉です

    「御意」は歴史やフィクション作品などで登場する言葉です

「御意」の類語・言い換え

ここでは、「御意」の類語・言い換えをご紹介します。「御意」の意味によって類語・言い換えは異なります。

前述の「承知しました」の他にも、以下のような表現があります。

かしこまりました

意味: 命令や依頼などを謹んで承る意味を表す。承りました

「御意」の意味の中でも、相手の命令・依頼を把握して受け入れる言葉としての類語です。

把握しました

意味: しっかりと理解すること

こちらも「御意」の意味の中でも、相手の命令・依頼を把握して受け入れる言葉としての類語です。

ただし、「把握しました」は物事を理解したというときに使う言葉です。そのため、「御意」のように「受け入れる」という意味合いまではないので留意しましょう。

おっしゃるとおり

意味: 言うとおりである

「おっしゃる」は「言う」の尊敬語で、目上の人の言葉に敬意を示しています。「おっしゃるとおりです」などの形で使用します。

「御意」の意味の中でも、目上の人に対して、同意や肯定を示すときの言葉としての類語です。

ごもっとも

意味: 相手の言い分が道理であると肯定する様子

「○○様のご意見はごもっともです」などの形で使用します。

こちらも「御意」の意味の中でも、目上の人に対して、同意や肯定を示すときの言葉としての類語です。

御心(おこころ)

意味: 相手のことを敬ったときに、その考え・気持ち・思いやりなどを指す

「御意」の意味の中でも、目上の人の考え・意向を意味する言葉としての類語です。

思し召し(おぼしめし)

意味: 相手のことを敬って、その考えや気持ちなどを指す言葉

こちらも「御意」の意味の中でも、目上の人の考え・意向を意味する言葉としての類語です。これらの他にも、ここまでかしこまってはいないですが「お考え」「ご意向」などもあります。

  • 「御意」の意味や類語、使い方を解説する記事です

    「御意」の類語・言い換えも把握しておくと便利です

「御意」の語源・由来

「御意」は鎌倉時代から江戸時代ごろにかけて、武士がよく使用していた言葉とされています。前述のように、「御意のとおり」を略した言葉として、目上の人に対して肯定を示すときの返事として使われてきました。

さらに、主君から命令が下されたときに「あなたの言う通りにします」という意味でも、返事に「御意」を使用していました。ドラマなどで見聞きするフレーズは、こちらの意味で使われていることが多いようです。

  • 「御意」の類語・言い換えも把握しておくと便利です

    「御意」はかつて武士が主君など目上の人への返事として使用していた言葉です

「御意」の英語表現

ここでは、「御意」の英語表現を解説します。「御意」の「目上の人の考え」を意味する英語は「your will」や「your pleasure」「your wish」などです。

「はい」という返事の意味で使用する場合は「yes+敬称(sir, lordなど)」と表現します。使い方は次の英文を参考にしてください。

英文: In accordance with the lord's will, we headed for the provinces.
意味: 主君の御意に従い、われわれは地方へと向かった。
英文: 「Our victory is imminent. Let's keep up the momentum and attack!」「Yes, my lord!」
意味: 「われらの勝利は目前である。このまま勢いを落とさず攻めるぞ!」「御意!」

  • 「御意」をどのように使うかによって、英語表現は異なります

    「御意」をどのように使うかによって、英語表現は異なります

「御意」とは「主君の命令に対しての返事」などの意味を持つ武士の言葉

「御意(ぎょい)」は「貴人や目上の人の考え・意向」「貴人や主君の命令」、そして「目上の人に対して、同意や肯定を示すときの返事」という意味を持つ言葉です。さらに、「主君の命令に対しての返事」としても用いられてきました。

元々は鎌倉時代から江戸時代ごろにかけて武士が使用していた言葉であるため、現在のビジネスシーンではあまり用いられることはありません。ですが、ドラマやアニメなどによく登場する言葉なので、意味を知っておくとより内容を楽しめるでしょう。

また、ビジネスシーンで同じような意味を表現したい場合は、今回紹介した類語をうまく使ってみてください。