コロナ禍もはや3年目、密を避けるレジャーは引き続き盛り上がっている。坂道や荒れ地も風を切ってぐいぐい走れる電動アシスト付きのスポーツ自転車、いわゆるeBikeなんて最高だ。今回はドイツのメーカー「Bosch(ボッシュ)」のドライブユニットを搭載した「TREK(トレック)」のeBike「TREK Powerfly 5」に試乗した様子をレポートしよう。
eBike、日本市場での人気ジワリ
eBike(イーバイク)とも呼ばれる、スポーツタイプの電動アシスト付き自転車に注目が集まっている。電動アシスト付き自転車はなんといっても心臓部である「ドライブユニット」が重要。モーターやギア、電源制御部を一体化したもので、クルマやオートバイでいえばエンジンに当たる部分だ。
電動アシスト付き自転車は、1993年にヤマハ発動機から発表されたモデルが初発であったが、eBikeはヨーロッパから始まり広まった。
eBike向けのドライブユニットを初めて開発したのが、ドイツの「ボッシュ」だ。自動車部品メーカーの大手だが、社内スタートアップとして「Bosch eBike Systems(ボッシュ・イーバイクシステム)」が始まり、2017年、日本市場に参入した。
また、数多くのスポーツ自転車メーカーがあるアメリカでもeBikeは急拡大中。2020年6月の販売台数は、前年同月比で190%の増加を記録したほどだという。アメリカのスポーツ自転車といえば、日本でも人気の「TREK(トレック)」や「Cannondale(キャノンデール)」などがある。これらのメーカーにも、ボッシュのドライブユニットを搭載したモデルが続々と登場している。
富士山麓に位置する山梨県・鳴沢村(なるさわむら)で、これらの車両に試乗する機会を得たので、紹介していこう。
富士山ふもとの鳴沢町で試乗会開催
試乗会の集合場所は、国道139号沿いの「道の駅なるさわ」。富士五湖の中心に位置し、富士山を眺望できる絶好のロケーションだ。首都圏から自転車を車載し、ここを自転車ツーリングの格好の拠点とし、山へ、町へと出かけるのに良いポイントだ。
まずは、道の駅なるさわの第3駐車場から紅葉台レストハウスを経由して三湖台へ向かう、片道約60分の山コースを紹介する。ガイドを務めてくれたのは、トレイルアドベンチャー・フジの岩間一成さん。
このコースでは「TREK Powerfly 5(トレック パワーフライ5)」に乗車。トレックは、カーボンを使用した超軽量のフレーム製造やロードレースへのスポンサードなどのイメージがあるが、マウンテンバイクにも注力中している。このモデルは前にサスペンションを搭載し、路面のデコボコからの衝撃も緩和しつつ、お手頃な価格を実現している。クルマならさしずめ、都会派SUVといったところだろうか。
スポーツ自転車にはヘルメットが必須。2022年秋発売予定モデルのMTBスマートヘルメット「SENA M1 EVO」を試用させてもらった。
MTBヘルメット「SENA M1 EVO」はスピーカーとマイクを内蔵させているため、走行中でも仲間と会話が楽しめる優れ物。左側にボタンが3つあり、電源やペアリング、音量調節もここで行う。
ヘルメット、グローブを装着し、自転車操作、コースの注意点などの説明を受けたら、いよいよ出発。ギア、ブレーキ、アシストモードの変更など、しっかり覚えてからスタートしたい!
今回の試乗車両は、すべてボッシュのドライブユニットを搭載しているため、基本的な操作・性能はおおむね同じ。「TREK Powerfly 5」には、同社が手掛けるeMTB向けドライブユニットでは最高パフォーマンスのモデル「Performance Line CX(パフォーマンスライン CX)」が採用されている。
「プラスとマイナスのボタンで、アシストモードを調節します。モードは、オフ、エコツアー、eMTBモード(自転車メーカーによってはスポーツモード)、最強のターボモードの全4段階。最初からターボやeMTBモードなどの強いモードで走り出さないようにしてください」と岩間さん。
なおボッシュの「Performance Line CX」に備わる「eMTBモード」は、一律のアシストではなく踏む力に応じて自動で適切なアシストが加わるモード。落ち葉や岩場など滑りやすい路面でもコントロール性に優れていることが特徴だ。
自転車に乗って感じる山梨のポテンシャル
走り始めるとさっそく、見たこともないような景色に驚愕。
「この森は、富士山が噴火して流れてきた溶岩が冷え、固まった場所にできました。今から約1200年前、茨城県の霞ヶ浦の水と同じくらいの量の溶岩が流れてきたといわれています。有名な青木ヶ原樹海も、その時の溶岩によってできたものです」と岩間さんから説明を受ける。
地面には石がゴロゴロ転がり、上をタイヤで通ればお尻が痛いし、手にも振動が伝わる。「そういう時は、ペダルを左右水平にして、立って乗ると衝撃が伝わりにくい」とのこと!
それから、ブレーキは一気に握るようなことはせず、右手と左手のブレーキをどちらも使いながら、ゆっくりブレーキングするのがコツ。
さらに、上り坂では軽めのギアがお勧めだが、注意点が1点。「ターボモードと一番軽いギアの組み合わせだと、モーターの力が強すぎて、後ろのタイヤが滑る危険もある。ターボモードにするなら、ギアは2番目くらいまで。もしギアを最も軽くするなら、スポーツモードとかeMTBモードがお勧め」とのこと。
以上、片道約60分の初心者向けコースであるが、さすが自然豊富な山梨県。聞くと、イノシシやシカ、ツキノワグマなどの野生動物もいるとの話。森を抜け、崖道を行き、富士山を眺め……どこを見ても目が楽しい。ドライブユニット「Performance Line CX」が坂道や荒れ地でも強力にアシストしてくれるので、走りに必死にならずとも周囲の景色を見る余裕もあった。
次の記事では、同じくボッシュのドライブユニットを搭載した「キャノンデール」のロードバイクタイプのeBikeも紹介しよう。
※登山道は登山愛好家、トレイランナー等、多くの方が利用する場所です。マナーを守って安全な走行を心がけましょう。また、走行が危険な場所、立ち入りや自転車走行が禁止されている場所もあります。eMTBを楽しむにあたり、eBikeのレンタル、乗り方やマナーについて教えてもらえるガイドツアーを利用するのがおすすめです(トレイルアドベンチャーフジ トレイルツアー TEL/080-2165-9693)。