夏が近づくにつれ、店頭に並び始めるとうもろこし。野菜の中でも甘みが強く、子どもから大人まで幅広い年代に好まれる野菜です。

とうもろこしは、穀物として主食にする国があるほど栄養素が豊富な食材。本記事ではその栄養素と効能についてくわしく解説します。また、とうもろこしは調理方法や保存方法によってはせっかくの栄養価が下がってしまうこともありますので、正しい方法をご紹介します。

  • とうもろこしの栄養素や効能について解説します

とうもろこしとは

とうもろこしはイネ科トウモロコシ属の野菜です。初夏から夏にかけてが旬で、この頃になると店頭にとうもろこしが並びます。とうもろこしは鮮度が落ちやすいため、皮つきで売られていることがほとんどです。

とうもろこしの原産地は

とうもろこしの原産地ははっきりとはわかっていませんが、農林水産省のHPによるとメキシコやボリビアなどの中南米付近という説が有力だとされています。起源は今からおよそ5,500年から7,500年ぐらい前。15世紀末に冒険家であるコロンブスがアメリカ大陸からスペインに持ち帰り、世界に広まったとされています。

日本にはポルトガル人が伝え、ある程度広まったのは江戸時代だそうです。その後本格的に栽培がはじまったのは明治時代の北海道。現在、主流のスイートコーンの生産量は今でも北海道が全体の約3割を占めており、そのあとに千葉県や茨城県などが続きます。とうもろこしは世界的にはアメリカが世界の約4割を生産し、次いで中国、ブラジルが続きます。

  • とうもろこしは夏に旬を迎えます

とうもろこしの種類

とうもろこしと言っても、その種類はさまざまです。近年は品種改良が進み、糖度が高まり、生のままでも食べられるものも増えてきています。

野菜として一般的に食べられている甘味種はスイートコーンと呼ばれ、甘みが強い品種の総称です。そのほか硬粒種(フリント種)、もちのような粘りのある糯(もち)種(ワクシーコーン)、ポップコーンの原料になる爆粒種、コーンスターチなどでんぷんを利用する穀物種、家畜の肥料として使われるものなどがあります。

黄粒種(ゴールデンコーン)

とうもろこしの黄粒種はゴールデンコーンとも呼ばれ、粒が濃い黄色の品種を総称してこう言います。具体的には味来(みらい)、ゴールドラッシュ、あまえん坊などがあります。

白粒種(シルバーコーン)

粒が白くてやわらかくジューシーで、まるで果物を思わせる強い甘みが特徴です。生で食べられるものもあり、サラダなどに使われることも。ピュアホワイトや雪の妖精などの品種があります。

バイカラー種(黄粒×白粒)

黄粒と白粒が3対1の割合で並ぶとうもろこしは、バイカラー種と呼ばれます。全般的に甘みが特に強いことが特徴で、最近注目を集めています。具体的にはゆめのコーンや甘々娘(かんかんむすめ)、ピーターコーンなどがあります。

ヤングコーンは品種ではない

サラダやスープなどに用いられるヤングコーンは、とうもろこしを生育途中の段階で収穫したもの。ベビーコーンとも呼ばれていますが、特定の品種を指しているのではありません。

  • とうもろこしは品種改良が進み、種類が増えました

とうもろこしの栄養素と効能

とうもろこしに含まれるの栄養素は以下の通りです。

<スイートコーン(生)> (可食部100gあたり)の成分

エネルギー:89kcal
水分:77.1g
・たんぱく質:3.6g
・脂質:1.7g
・炭水化物:16.8g
・不飽和脂肪酸:1.03g
・食物繊維:3.0g
・β-カロテン:53μg
・ビタミンB1:0.15mg
・ビタミンB2:0.10mg
・ナイアシン2.3mg
・葉酸:95μg
・ビタミンC:8mg
・カリウム:290mg
・カルシウム:3mg
・マグネシウム:37mg ・リン:100mg

とうもろこし(スイートコーン)は、糖分やでんぷん質などの炭水化物を多く含む野菜です。野菜のなかでは高カロリーの食材ともいえます。

【たんぱく質】体を構成する重要な栄養素

たんぱく質は体の構成要素となる栄養素です。成長期に限らず、日常から欠かさずとる必要があります。たんぱく質はほかにも、ビタミンやミネラルのように、体の調子を整える作用もあります。

【糖質】エネルギー源として欠かせない栄養素

糖質と食物繊維の総称を「炭水化物」と呼びますが、とうもろこしにはこの炭水化物が豊富です。これは、米や小麦のような穀物の未熟種子を食べる野菜だから。糖質は体のエネルギー源としてとても重要な栄養素です。消化吸収が早く、エネルギー源として即効性がありますが、すぐに使われない糖質は中性脂肪となり蓄えられていきます。とりすぎると肥満の原因につながるとされています。

【食物繊維】整腸作用があり、便秘を予防

とうもろこしには食物繊維も多く含まれています。食物繊維は水に溶けてゲル化する水溶性や、水分を含んで膨らむ不溶性のものがありますが、どちらも便を出やすい状態にして便秘予防につなげる栄養素です。

【カリウム】高血圧やむくみを予防

とうもろこしにはカリウムやマグネシウム、リンといったミネラルが含まれています。カリウムは体の余分なナトリウムを排出して血圧を正常に保ったり、体の余分な水分を排出してむくみを予防したりする効能があるとされています。

【必須脂肪酸】悪玉コレステロールを減らす

とうもろこしには、体内で合成できない必須脂肪酸である、不飽和脂肪酸も多く含んでいます。リノール酸(多価不飽和脂肪酸)やオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)は、善玉を増やし悪玉コレステロールを減らす働きがあります。これらは、動脈硬化の予防や改善への期待がされています。

とうもろこしは糖質が多め

とうもろこしは他の野菜に比べるとカロリーが高め。野菜だからと食べ過ぎると、糖質も多くとることになっていまいます。とうもろこしを食べたときは、ほかに糖質を含む米類やパン類を控え目にするなどの工夫をしてもいいかもしれません。

とうもろこしは消化に悪い?

とうもろこしの栄養素のひとつ、食物繊維は、一度に多く取りすぎると下痢を引き起こすことがあります。とうもろこしに限らず、食材はバランスが大切です。栄養豊富だからと偏って食べ過ぎることのないようにしましょう。

とうもろこしの栄養は缶詰でもとれる?

とうもろこしは夏が旬なので、それ以外の季節に生のとうもろこしはなかなか食べられません。そのため缶詰を使うこともあるでしょう。缶詰の場合は、缶汁に栄養素が溶け出していることがあるので、汁ごと使いましょう。食塩や砂糖を加えているものもあるので、気になる場合は無添加のものを選ぶようにします。

  • とうもろこしの主な栄養素は、たんぱく質、糖質、食物繊維など

とうもろこしの賢い選び方

とうもろこしは、収穫後に鮮度が落ちるのがとても早い野菜。ここでは、店頭に並ぶとうもろこし(スイートコーン)を選ぶときのポイントを紹介します。

■皮付きのものを選ぶ

とうもろこしは、皮付きのまま売られているものを選びましょう。皮をはぐのは少し手間はかかりますが、この皮によって中の粒のジューシーさや甘みが守られています。とうもろこし売り場に皮を入れる容器がある場合には、外側の何枚かをその場ではがしても。ただし、全部むいてしまわないようにしましょう。皮は色が鮮やかなものが新鮮です。時間の経過とともに皮の色はあせて薄くなります。

■ヒゲの色やボリュームに注意

とうもろこしの先端から束になって生えているヒゲも、鮮度をみる材料になります。ヒゲがふさふさとたくさん生えているものほど、実もたくさんついています。茶色いものは完熟の証しで、全体的に白っぽいものは熟していない可能性も。ヒゲはしっとりとして乾燥していないものを選びましょう。

■粒はぎっしり、張りのあるものを

皮付きのものがよいとしましたが、お店によっては中の粒が見える状態で並べていることもあります。その際は、粒がぎっしりと並び、ツヤがあってぷっくりと張りのあるものを選びましょう。

  • とうもろこしは皮付きのものを選びましょう

とうもろこしの栄養を効率よくとる調理方法

とうもろこしは鮮度のよいうちに食べることが基本です。ここでは、とうもろこしの栄養素をできるだけ無駄なく効率よくとるための、おすすめの調理法を紹介します。

■ゆでる際は皮付きで

皮付きのまま購入したとうもろこしは、2~3枚の皮を残した状態のまま、ゆでましょう。こうすることで栄養素の流出を抑えられ、風味も逃げにくくなります。

■ラップをして電子レンジ加熱しても

とうもろこしの栄養素のビタミンやミネラルには、水に流れ出てしまうものもあります。電子レンジ加熱ならこの心配が少なく、水っぽくならずに仕上げることできます。皮付きのものは、やはり2~3枚残して皮ごとチン。皮がないものはラップに包んで加熱します。

■スープなどには「芯」も活用

とうもろこしには粒のほか、芯にもうまみが詰まっています。スープや炊き込みご飯などにする際は、芯も加えて調理して、食べる際に取り除きます。芯が出汁のような役割を担って、おいしさがぐんと増します。芯には、たんぱく質の構成成分である、アミノ酸も含まれています。

  • とうもろこしの芯ごと炊き込むご飯もおすすめ

とうもろこしを上手に切る方法

とうもろこしを2等分や3等分したい場合、あらかじめ1周ぐるりと包丁で切り込みを入れると手で折りやすくなります。加熱して粗熱をとってからだと少し切りやすくなります。

炒め物やスープ、サラダに使いたいときは、粒を包丁でこそげ取ります。とうもろこしを2等分して、断面をまな板に立てて固定します。手でしっかりとうもろこしを押さえながら、包丁を上から下に入れてこそげ落としします。

とうもろこしの保存方法

くり返しになりますが、とうもろこしは鮮度が落ちるのが早いのが特徴。収穫後から糖分がどんどん失われ始め、24時間でおいしさが半減するとも言われています。少しでも早く食べることが理想です。

■皮付きのまま冷蔵室へ

皮付きのとうもろこしは、そのまま冷蔵室へ入れましょう。冷気に直接触れないよう、ペーパータオルや新聞紙に包むのがおすすめです。

■加熱して冷蔵・冷凍保存

とうもろこしをすぐに食べないという場合は、先ほどご紹介した方法のいずれかで加熱し、粗熱をとってから冷蔵室または冷凍室で保存します。水分をふき取って、ペーパータオルやラップなどでしっかり密閉してから保存しましょう。粒だけの状態して保存してもいいですが、粒は芯についたままの状態のほうが風味が逃げにくくおいしさが続きます。

  • とうもろこしは購入したら早めに食べましょう

とうもろこしにはたんぱく質や糖質、食物繊維が豊富

とうもろこしには、三大栄養素にも数えられるたんぱく質や、糖質、食物繊維が豊富に含まれています。どれも体の健康を保つうえで欠かせない、重要な栄養素です。そのほかカリウムなどのミネラルや、ビタミンも含む、まさに栄養の宝庫ともいえる野菜です。

とうもろこしは鮮度が進みやすい野菜なので、店頭では皮付きの新鮮なものを選び、購入後は速やかに食べるのがおすすめです。電子レンジ加熱だと、栄養素の流出も最低限に抑えられます。すぐに食べないという場合は、加熱して冷蔵または冷凍保存するとよいでしょう。