• 昨年11月末に行われた一次プレゼンの様子 (C)福岡放送

17歳から63歳まで、幅広い年代から事業アイデアが集まった中で、それぞれ印象深い企画を聞いてみると、村上Pが挙げたのは「保護犬・保護猫を使った更生施設を立ち上げたい」というもの。

「元々家庭教師をやっていて、今は福祉施設で働いてらっしゃる男性の企画なんですが、様々な家庭に触れる中で子供へのケアが行き届いていない家庭環境を見たり、高齢者への扱いに思うところがあったそうで、障害を持っていたり、家庭環境が複雑だったり、引きこもりといった人たちに保護犬・保護猫と触れ合う機会を作ることで、心にぬくもりを感じてもらう施設を立ち上げたいというものでした」(村上P)

そのアイデアもさることながら、特に印象に残ったのはプレゼンスタイルだ。

村上Pは「皆さん資料を作って説明されるんですけど、彼はマイク一本で自分の言葉だけでプレゼンしていたんです。思いを乗せた言葉がすごく素敵で、聴き入ってしまいました。福岡には、こんな熱い思いを持って活動する方がいるんだと思って、自分の街として誇らしいなとも思いましたね」と振り返り、石津Dも「思わず聴き入ってしまいました。“心に残る”のは、上手なものや派手なものとは限らない。VTR作りにも通じる大事なことを学んだ気がします」と明かす。

そんな石津Dが挙げるのは、「昆虫食」の事業化を提案した、最年少・17歳の高校2年生の行動力。

「彼の中に『とりあえず大学に』という考えはなく、大学進学はせずに起業すると決めていて、『これが令和の高校生か』と感心しました。しかもただ夢見るだけじゃなく、自分の貯金を切り崩して東京出張したり、コオロギの餌を確保するために生産者と直接交渉したりして、有言実行を貫いていました。夢のために真っ直ぐ進むピュアな行動力を目の当たりにして、ひと回り以上歳の離れた自分が勉強させられっぱなしでした」(石津D)

「昆虫食」のアイデアは、学校で聞いたSDGsの講演がきっかけなのだそう。他にもフードロスを解決したいというアイデアを提案した大学生がおり、村上Pは「今の若い人たちはSDGsが身近にあって自分事として捉えているのがすごく分かって、自分たちも考えをアップデートしていかないといけないと思いました。今回は僕らが勉強させてもらうことも多いです」と刺激を受けたようだ。

■番組が10年で培ったイメージが反映

過疎の商店街を救いたい、鳥獣被害を解決したい、子育て世代を応援したい、地元のグルメを広めたい…など、一次選考22案から、5案が最終プレゼンへ進出。地元福岡の起業家からアドバイスを受けてブラッシュアップし、3月に最終プレゼンへ挑んだ。

最終結果は5月に発表されるが、ジャッジは投資家が下すため、全員が出資を受ける可能性もあれば、逆に全員受けられないケースもあり得る。ただ番組としては、事業アイデアを出して、本気でプレゼンするという今回の経験が、今後のビジネスにつながるきっかけになることを願っている。

村上Pは「今まで温めていたビジネスアイデアを実際に投資家にぶつけたら、思わぬ反応があって、投資は無理だけど違う入り口を紹介してもらって、そこから素敵な出会いがあって、起業ということもあるかもしれない。今回プレゼンをされた方が『番組のおかげでビジネスアイデアが固まりました』と言っていたり、『出資を受けられなくても別の方法で秋に起業したいと思います』という方もいらっしゃったので、それを聞いて、僕らもやったかいがあったなと思いました」と手応えを得た様子。

さらに、「『発見らくちゃく!』は、視聴者の依頼を解決するという番組なんですけど、僕らだけで解決するのではなく、まず依頼者の努力があって、僕らは背中を押したり、手が届かないところを手伝ったりする形なので、そのスタンスは今回と根っこが一緒だなと感じました。やはり、番組が10年で培ったイメージは大きいなと思います」と、狙い通り番組のカラーが出たことを実感した。

  • アドバイザーによる一次プレゼン通過者とのブラッシュアップの様子 (C)福岡放送

番組ではプレゼンの模様をはじめ、応募者の奮闘に密着し、レギュラー枠とは別の時間帯で放送予定。「参加者の思いを知ると情が移ってしまって、ついついたくさん取材してしまいました。今は大量の素材を前に、放送尺にまとめるのに苦労しています(笑)」(石津D)と言うほど、応募者それぞれの人生が反映され、そこに懸ける思いが強いため、どこをカットするか悩ましい編集作業になっているようだ。