新しい職場でスタートダッシュがうまく切れない…、新しく事を始めようとしてもつい先延ばしにしてしまう…。社会人であろうと学生であろうと、そんな悩みを抱える方は多いと思います。

  • 1分で変わる! “すぐやる脳”になる「行動イノベーション」とは? / メンタルコーチ・大平信孝

これまでオリンピック選手など1万5000人以上の課題を解決してきたメンタルコーチの大平信孝さんに「すぐやる人になる」方法について伺いました。

■「軸なし」と言われた自分にサヨナラ

私はメンタルコーチとして経営者やアスリート、ベストセラー作家の方々の夢や目標実現のサポートを行っています。成功する人たちは、仮にでも即決断し、即行動できるからこそ、成果が出るのです。1万5000人以上の方の目標達成と課題解決を通して、独自に確立したメソッドが「行動イノベーション」です。

サラリーマン時代の私を知っている人からは「大平くん、変わったねえ。同じ人とは思えないよ」とよく言われます。新人時代の自分はといえば「行動できない人間」の典型例のような存在でした。

税関係のシンクタンクだったため、「勉強してスキルを上げたほうがいい」と頭ではわかっていても、本を買っては積読、資格の入門講座に申し込んでも結局行かずじまい。「別に自分は税理士を目指してないし」と言い訳をしてさぼっていました。

転機となったのは、ある日の妻との会話でした。育児休暇中の妻が子育ての傍ら、勉強会やママ友とのランチに忙しく活動するのを見て、「お前は好きなことがいっぱいできていいなぁ」とつぶやいたところ、「あなたも好きなことをやればいいじゃない」と返されました。

「好きなことって何だろうな」とぼやくと、妻が急に真顔になって涙ながらに「30歳過ぎて自分のやりたいこともわからないなんて、この『軸なし!』」とブチ切れられたのです。

そこから本気で自分の軸を見つけようと本を読んだり、セミナーに通うようになり、アドラー心理学や脳科学と出会い、その知識を元に「行動イノベーション」という独自メソッドにたどり着きました。

■アプローチを変えるだけで「行動スイッチ」が入る

「行動イノベーション」を一言で言うと、自分の行動原理を原因論(なぜダメなのか)から目的論(どうすればうまくいくか)に変えるメソッドです。自分自身への「問いかけ」を変えて一歩踏み出すことで、その後の行動が劇的に変化します。

人間の脳には主に本能行動や情動を司る「大脳辺縁系」と学習や言語を司る「大脳新皮質」があります。いくら大脳新皮質で言語レベルの目標を立てても、それだけでは行動にはつながりにくい傾向があります。

「わかっちゃいるけどできない」状況を脱するには「大脳辺縁系」にアプローチして自分の本能、情動を活性化する必要があります。その具体的メソッドが「行動イノベーション」なのです。

かつての私のように「何でも先延ばしにしてしまう」「自己肯定感が低い」「自分を責めてしまう」人が、自然体で無理なく行動できるようになるシンプルメソッドが、「行動イノベーション」です。

このメソッドでは、山にこもって修行したり、自分ではない人になる努力をする必要はありません。気合いや根性論ではなく、自分との付き合い方を少し変えるだけで、誰でも行動できるようになる方法論です。

■新しい職場で戸惑っている人が自己肯定感を上げる方法

就職・転職したばかりのみなさんの中には、メールの対応や挨拶の仕方などで失敗して落ち込んでいる方もいるでしょう。何をしてもうまくいかない気がして落ち込んでいるときは、自分を評価する物差しのメモリをちょっと小さくしてみましょう。

落ち込みやすい人の多くは、「予定通りに事がうまく進んだかどうか」というたった1つの判断基準で考えています。物差しのメモリが大きすぎて部分点が入らず自分を責め、さらに落ち込んでしまいます。

ですから「マニュアルの第一章は理解できたな」とか、「初回訪問の挨拶は何とかクリアした」など、まずは物差しのメモリを小さくして、自分の小さな変化、成果に気付くクセをつけましょう。

「企画は通らなかったけど、鈴木課長は面白いと言ってくれた」というふうに「できていないこと」ではなく、「できていること」に注目します。そうして目的に一歩近づいたと自覚することで、自己肯定感を少しずつ上げることができます。

■人生に劇的な変化を起こす「1分間行動イノベーション」とは

あなたがもし、仕事に行き詰って「なんでできないんだろう」とくすぶっているとしたら、だまされたと思ってまずは寝る前の1分間のトレーニングからトライしてみてください。

「1分間行動イノベーション」を行うゴールデンタイムは、朝起きてからの10分以内と夜眠りに就く前10分以内です。

まず、「50秒セルフトーク」で「本当はどうしたい?」と自分に繰り返し問いかけます。例えば「本当は早く帰りたい」「本当はハワイに住みたい」「本当は大学院に行きたい」などどんなレイヤーの答えでも大丈夫です。

この究極の問いの繰り返しは、あなたの「時間がない」「お金がない」「始めるのが遅すぎる」といった思い込みを徐々に取り払ってくれ、自分の本音、心・体の声、欲望を掘り起こすことにつながります。

次に残りの10秒でそれを実現させるための「行動」を取ります。10秒でできることは限られています。例えばやりたいことが「ハワイに行きたい」なら、「明日ハワイの本を買う」とメモするだけで十分です。

大切なのは脳がワクワクしている間に躊躇なく行動すること。これが発火点となり、ハワイの本を買う→ハワイのコミュニティを知る→ハワイに別荘を持つ人と知り合う→夏休みだけハワイに1週間滞在してみる……というように10秒アクションの連鎖が起き、やがて人生に劇的な変化を起こします。

私がもし新人時代の自分にアドバイスするとしたら、「頭で考えすぎて自分を責めるな。10秒でいいから、未来の自分につながるアクションを今すぐやろう」ということです。

アプローチを変えるだけで実はあっさり「行動スイッチ」が入る。そのメカニズムを今は知っているので、「行動イノベーション」を昔の自分に伝えてあげたいですね。