ダイエットをしようという場合、たとえば運動を習慣化するといったことを考える人も多いものです。でも、新たな習慣を身につけることは簡単ではありませんし、それこそ多忙な社会人であればその時間を確保することも難しい…。
でも、心配無用です。著書『3か月で自然に痩せていく仕組み 意志力ゼロで体が変わる! 3勤1休ダイエットプログラム』(ダイヤモンド社)が大ヒットしている株式会社ライフ・プロデュース代表の野上浩一郎さんが、「食べる」「寝る」といったふつうの1日のルーティンにある行動を、「どうせ食べるなら、こう食べよう」「どうせ寝るなら、こう寝よう」というふうに少しだけ変えることで痩せ体質をつくる方法を提案してくれました。
■どうせ歩くなら、脂肪が燃えやすい「早歩き」をする
ダイエット失敗の最大の要因は、「イベント化」にあります。わたしがいうイベント化とは、食事の糖質を完全にカットする、ハードな運動をはじめるというふうに、生活をこれまでと大きく変えようとすることです。でも、そんな生活をずっと続けることには強い意志の力を必要としますから、多くの人が途中で挫折してしまいます。
そこで、「ふつうの1日のルーティンにある行動を少しだけ変える」ことを考えてみてください。そういう小さな変化は、イベント化というほど大きなものではありません。そのため、日常のルーティンとして定着しやすく、結果的にダイエットに成功する可能性が高まります。
まず考えてほしいのが、「歩く」ということ。リモートワークが広まったいまは多少減ったかもしれませんが、いまも多くの人が通勤時などには歩きます。そのとき、ただスマホを眺めながらダラダラと歩いていてはもったいない。なぜなら、歩くという行為は、脂肪を燃やす有酸素運動だからです。
でも、どうせ歩くならいちばん効率的に脂肪を燃やせる歩き方をしたいですよね。そのための方法が、「カルボーネン指数」というものを利用するというもの。これは、人それぞれの年齢などから脂肪がもっとも燃焼する心拍数を算出した数字です。つまり、その心拍数を保つように歩けば、自分にとっていちばん効率よく脂肪を燃やせるというわけです。
そしてわたしがおすすめするのは、運動強度が40〜60%とされる「早歩き」です。なぜなら、脂肪と同じく有酸素運動のエネルギー源である糖には、「多く消費されると強い空腹感や眠気を招く」という特徴があるからです。ハードな有酸素運動で糖を多く消費すると、強い空腹感から食べ過ぎてしまうことも考えられます。そこで、ハードではないのに脂肪燃焼効果が高い早歩きがベストだというわけです。
■もっとも脂肪が燃えやすい自分の心拍数を知る
以下の計算式で自分のカルボーネン指数を算出し、スマートウォッチなどで心拍数を計測しながら歩いてみましょう。ちなみに、安静時心拍数とは、静かな部屋で5分間安静に過ごしたあと、利き手の人差し指・中指・薬指の3本の指でもう一方の手首の内側にある動脈の脈拍を10秒間測り、その数値を6倍にしたものです。
【カルボーネン指数】
{(220−年齢)−安静時心拍数}×運動強度+安静時心拍数
25歳で安静時心拍数が60の人が運動強度40〜60%の早歩きをする場合、
{(220−25)−60}×(0.4〜0.6)+60=114〜141
となり、脂肪燃焼に最適な心拍数は1分間に114〜141ということになります。早歩きをしていて心拍数がこの数値より低い場合は、歩く速度を上げる、あるいは腕の振りを大きくして負荷を高めましょう。
この歩き方を日常の歩く場面で取り入れることの他、別のことをしているときにもこの歩き方をしてもいいでしょう。友だちとの電話が好きな人なら電話をしながら、音楽鑑賞が趣味の人なら音楽を聴きながら歩くといった具合です。
このことは、「どうせ歩くなら、こう歩こう」とはちょっとちがうかもしれませんが、「どうせ電話をするなら」「どうせ音楽を聴くなら」など、日常の歩く以外の場面でもただそのことだけをするのではなく、少しでも歩くことと組み合わせれば、それだけ痩せやすくなることは間違いありません。
■どうせ食べるなら、「野菜→メイン→炭水化物」の順で
わたしたちが生きていくために欠かせない行動が「食べる」こと。痩せるためには食べるもの自体を見直すことも大切ですが、じつは内容が同じ食事でも、その食べる順番によって太りやすさ、痩せやすさが変わります。
痩せる食べ順は、「野菜→メイン→炭水化物」です。
逆にいうと、炭水化物を先に食べると太りやすくなるということ。なぜなら、たくさんの糖を含む炭水化物をいきなり食べると、血糖値が急上昇し、脂肪合成を高めて脂肪分解を抑制する働きを持つインスリンの過剰分泌を招いてしまうからです。
また、メインのおかずは、肉や魚、チーズなどタンパク質が豊富な食材にしましょう。なかでも、豆腐など植物性タンパク質が豊富なもののほうが、動物性タンパク質の食材に比べて吸収に時間がかかるため、それだけ血糖値の急上昇を抑えることができます。
そして、食事のときには、「ひと口ごとに箸を置いて、早食いを防ぐ」こともおすすめします。
なぜなら、早食いでは満腹感を得られにくいからです。食事をはじめて脳が満腹と感じるまでには20分以上かかるといわれています。そのため、早食いをしてしまうと満腹と感じるまでのあいだに、必要以上に食べ過ぎてしまうことにつながります。
それから、ひと口ごとに箸を置くことと併せて、よくかむことも意識しましょう。よくかむことは、満腹感を得られやすくなることの他、食べ物の味を楽しめたり消化吸収もよくなったりと、いいことずくめです。
■どうせ寝るなら、「7時間」寝る
それから、1日の終わりに必ずやることが、「寝る」ことです。イメージしにくいという人もいるかもしれませんが、睡眠とダイエットには強い関連があります。じつは、睡眠不足が続くと太りやすくなるのです。
心身の疲労をとり、そのメンテナンスをしてくれる睡眠が不足している状態は、人間という生き物にとって危機の状態にあるといえます。すると、体は危機状態を脱しようと、食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌を増やし、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌を減らします。
また、危機状態にあると判断しているため、体はなるべくエネルギー消費を減らし、いわばセーフモードの状態になって代謝を抑えます。そのため、睡眠不足になると、食欲が増えてエネルギー消費が減るために太りやすくなるのです。
ですから、まずは睡眠時間をしっかり確保することが欠かせません。その時間は「7〜8時間」。ハーバード公衆衛生大学院は、「7〜8時間寝ている人に比べて、睡眠時間が少ない人は肥満になるリスクが高いというデータが多数ある」と発表しています。
ただ、忙しい社会人が8時間の睡眠時間を確保することは簡単ではないでしょう。まずは目標値として7時間の睡眠時間を確保することを目指してみてください。
そうしてしっかり睡眠をとれば、もちろん脳の働きも向上します。みなさんにも、しっかり寝て頭がすっきりしているときにはいくらでも仕事がはかどるのに、寝不足のときには同じ仕事でも全然進まないという経験があるはずです。
睡眠不足は、生産性低下を引き起こし、残業をしなければならないためにまた睡眠不足になる…という悪循環を招きます。結局のところ、しっかり寝たほうが、生産性が上がるために睡眠時間を確保しやすくなるのです。加えて痩せられるわけですから、こんなにいいことはありません。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人