新型コロナの影響で、私たちを取り巻く環境や価値観が大きく変わった。特に、どこで、どのように働きたいかを見つめ直しているという人たちが急増している。

「やりがい」「さらなる収入」を求めて転職を希望する、もしくは「派遣という働き方に興味がある」人は、今後ニーズが高まる業界や職種について気になるところだろう。

そこで、総合人材サービスの「パーソルグループ」が、長年の蓄積データをもとに転職市場と人材派遣業界のこれからを分析し、給与の大幅アップが見込める注目の職種を発表しているので紹介したい。

転職時、決定年収の上昇率ランキング

正社員として転職を希望する場合、年収アップが期待できるのはどの業種なのか。

パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、2019年1月カラ12月末と2021年1月~12月までの間に転職した男女を対象に、決定年収(転職を受け入れる企業が採用時に個人に提示する年収)が上がった業種のランキングを発表した。

  • 業種別コロナ前後の決定年収 上昇率ランキング 提供:doda

上記10のうち9つの業種でコロナ前の決定年収を上回ったことが分かる。また、決定年収が上がった業種の1位は「総合商社」で約10%上昇している。

「2021年の歴史的な物価上昇が商社の利益を押し上げ、優秀な人材を確保する動きが見られました」と分析するのは、doda編集長の喜多恭子氏。

決定年収上昇率ランキングの2位は「インターネット/広告/メディア」で、求人数も2019年から2021年にかけて150%と大幅に伸びている。

「特に基本スキルに加えてマネジメントができる人材や進行管理能力のある人材の採用に力を入れる企業が増え、決定年収を押し上げています」(喜多氏)

業界問わず転職市場は回復傾向

求人数に関しても2019年1月の求人数を100として指数化した求人数はいずれの業種でも右肩上がりで上昇し、2022年1月には平均186.5%まで伸びている。

  • 業種別求人数の推移 提供:doda

特に「IT・通信」「人材サービス・アウトソーシング・コールセンター」「建設・プラント・不動産」は200%を超えている。

ただ、専門的なスキルを求められる職種が多いため、「自分には無理」と感じる人がいるかもしれない。

確かに、コロナによる緊急事態宣言が発令された2020年4月から9月頃までは即戦力が重視された。でも、2021年6月以降は未経験者歓迎の企業が増え、2019年1月と比較して2022年1月には未経験の求人数は平均144.0%になった。

  • 未経験者歓迎求人の推移 提供:doda

このような傾向に対して、喜多氏は以下のように分析している。

「業績好調で成長が見込める企業では、人材確保が急務となっています。提示金額を引き上げたり、たとえ未経験者でも育成に力を入れたりする企業が増えているので、転職を考えている人にはチャンスを広げる追い風が吹いていると言えるでしょう」

派遣の受注数は右肩上がり

一方、人材派遣サービスを展開する「パーソルテンプスタッフ」の取締役執行役員 石井義庸氏は

「リーマンショックのときとは比較にならないほど、コロナ禍での派遣受注数は早く回復しています」

と話す。リーマンショック時は、派遣の受注が2割ほど減少して長期にわたり低迷したが、新型コロナが発生した2020年春に一度落ち込んだ受注数はその後右肩上がりに回復していると言う。

  • 派遣の受注数提供:パーソルテンプスタッフ

「派遣で働いている稼働者数は昨年12月にコロナ前の水準に戻り、今年4月以降も増加すると見込んでいます」(石井氏)

派遣料金は上がった? 下がった?

1都3県の派遣料金に関しても、一般事務職や販売職ではほぼ横ばいながら経理や秘書などの専門事務職は微増、ITエンジニアは全般的に増加傾向が続いている。

  • 派遣料金の推移(1都3県) 事務領域 提供:パーソルテンプスタッフ

  • 派遣料金の推移(1都3県) ITエンジニア領域 提供:パーソルテンプスタッフ

「コロナ禍で在宅勤務や時短などの多様な働き方が認知され、派遣で働く際にも選択肢が増えました。これからはますます自分に合った働き方を選ぶ人が増えるでしょう」(石井氏)

以上のデータや分析結果を参考にしながら、自分らしい働き方を考えてみてはいかがだろう。