大阪・堺市の「シマノ自転車博物館」が3月25日よりリニューアルオープンする。新築された地上5階建ての同館は、白を基調としたモダンな造り。関係者は「多様な視点から自転車の魅力を発信していきたい。『自転車の真価』を発見し、『自転車に乗りたくなる気持ち』を創出できる拠点を目指します」とアピールする。

  • リニューアルオープンするシマノ自転車博物館を取材した。写真は、同館 参与の神保正彦氏(撮影時のみ、マスクを外してもらいました)

自転車博物館とは?

大阪を代表する繁華街、難波エリアから電車に揺られること約15分。堺東駅から徒歩5分の好立地にシマノ自転車博物館は建てられた。前身となる「自転車博物館サイクルセンター」が堺市の大仙公園内に開館したのは1992年のこと。当時、日本で初めての自転車博物館だった。同館が大切にしてきた”自転車文化振興”の意義・役割を新館も継承。関係者によれば、ここまで大規模な自転車博物館は世界でも珍しいという。

  • 「シマノ自転車博物館」(大阪府堺市堺区南向陽町2丁2-1)。展示面積は3.5倍に拡充された。公益財団法人シマノ・サイクル開発センターが運営する

展示スペースは1階、2階、4階で構成される。

1階ミュージアムプラザでは、無料のエントランスゾーンに貴重な自転車の数々を展示する。

  • 堺のダルマ自転車。1877年(明治10年)頃のもの

  • 19世紀のフランス、イギリス、アメリカの象徴的な自転車を展示。そのフォルムからも、少しずつ現代の自転車に近づいていく様子が分かる

また、ミュージアムスクエア(多目的ホール)は学校のオリエンテーション、団体の発表会などに対応する広いスペース。壁には、堺と自転車の歴史をたどる展示も行われている。

  • 堺の自転車産業は、明治期に鉄砲鍛冶の技術を持つ職人が自転車の製造を始めたのがきっかけだった

  • 堺市より1936年に皇太子殿下に献上された自転車も展示

チケットは一般個人が500円、高校生大学生が200円で未就学児~中学生および65歳以上は無料。チケットを購入して入場すると、まずはシアターにて「自転車の誕生とあゆみ」という11分の動画を視聴する。ここでは自転車の起源~現在に至る歴史を勉強できる。

  • まずはシアターでムービーを鑑賞する

2階(ホワイトキューブ)に上がると、3つのゾーンが来場者を迎える。Aゾーン(自転車のはじまり)には、黎明期から発展期までの自転車を展示。二輪自転車の始祖と言われているドイツのドライス男爵が発明した「ドライジーネ」をはじめ、貴重な自転車の数々がディスプレイされている。説明文は、子供向け、大人向け、専門家向けを用意。タッチパネルで自由に閲覧できる。

  • 往時を偲ばせる背景とともに、歴史的な自転車を展示

  • タッチパネルで説明文を閲覧できる

また6面のスクリーンを使った自転車誕生のドラマ「発明家たちの夢」(9分)を定期上映する。来場者は、パノラマデッキに座ってゆっくりムービーを鑑賞できる趣向だ。

  • 上面に、6面のスクリーンを配置する

  • レトロな自転車の映えるディスプレイにも注目

Bゾーン(自転車のひろがり)では、人々の暮らしを豊かに彩ってきた自転車文化と、それらを支える自転車の科学や技術を紹介する。

  • わたしたちの生活に欠かせない乗り物になった自転車

一角にあるコーナーでは「なぜ自転車は倒れないのか」を小学4年生にも理解しやすいように解説したムービーを上映。また最新ロードバイクの分解展示により、自転車は精密な部品の結集でできていることを直感的に伝える。

  • 最新ロードバイクの分解展示

  • 「スピードへの夢」と題して、古今東西の自転車を展示。1964年東京オリンピック出場車である片倉シルク・スピードマスターも展示されていた

電動ペダルアシスト、変速機、ブレーキなどを体験できるコーナーも設置。実際にハンドルを握り、ブレーキをかける感触などを確かめられる。このほか、カーボン製フレームの技術を伝える展示では、実際にロードバイクを持ち上げて軽さを体感できる仕掛けも。親子連れで来ても楽しめそうだ。

  • こちらは外装変速機(電動式)+油圧ディスクブレーキの説明

Cゾーン(自転車とこれから)には、サスティナブルな社会に向けて豊かな暮らしに貢献する自転車を展示。自転車がもたらす喜び、人も地球も豊かになる未来を紹介する。

  • 自転車と一緒につくる社会の好循環を、壁面絵巻とモニターで説明

  • 車いすにハンドバイクを連結して、手で漕いで進む三輪自転車。一般的な車いすに簡単に取り付けられ、カーブでも倒れにくいという

このほかCゾーンの最後の展示では、タッチパネルを使って質問に答えていくとサイクリング雑誌の表紙を飾れるユニークな仕掛けも用意していた。

  • 筆者の顔がはめ込まれたサイクリング雑誌。画像はQRコード経由で手持ちのスマートフォンにダウンロードできる

  • 2階の吹き抜け空間は、実車のギャラリー兼収蔵庫になっていた

  • 有名なロードバイクも多数展示。ファンにはたまらない

4階には堺の自転車産業史の年表や、世界の自転車部品などを展示。また自転車に関する専門書籍を閲覧できるマルチメディアライブラリーも公開する。

  • 世界の自転車部品などを展示する

  • マルチメディアライブラリー

じっくり展示を見ていくと、かなりのボリュームになるシマノ自転車博物館。自転車ファンならずとも、子どもから大人まで誰もがワクワクできる趣向がこらされていた。コロナ禍のため原稿執筆時点では人数制限(1時間70名まで)している状況だが、年間で3万人くらいの来館者を見込んでいる。

  • 夏休みこども絵画コンクール、こんな自転車ほしかってん!コンテストをはじめ、様々なイベント、特別展、企画展も予定されている

案内してくれた同館 参与の神保正彦氏は「ここに来て、多くの人に自転車の価値を再確認してもらえたら。あまりに生活に身近すぎるので、人は自転車の価値に気づきにくいんです。自転車が好きな人にも、ここから様々な情報を発信してもらえたら嬉しいですね」と話していた。

シマノ自転車博物館
住所:堺市堺区南向陽町2-2-1
電話:072-221-3196(代表)
開館時間]:午前10:00~午後4:30(入館は午後4:00 まで)
休館日:月曜日、祝日の翌日(土、日の場合は開館)、年末年始