自身の年齢が中高年に差し掛かり、高齢者となった両親などから相続に関する話題を持ちかけられる機会が増えたという人は多いことだろう。また中には、実際に親族の相続対策に関わった経験があるという人もいるかもしれない。

ただ、多くの人にとって相続は未知の体験であり、不慣れなことも多い。相続対策に携わる中で、さまざまな困難に直面したという人もいるに違いない。

そこで今回は、50代以上のマイナビニュース男女会員508人を対象にアンケート調査を実施。「親族の相続対策に関わる中で最も大変だったこと」などを聞いた。

  • 親族の相続対策に関わる中で最も大変だったことは?

Q.ご両親など親族の相続対策に関わったことはありますか?

「はい」(48.4%)
「いいえ」(51.4%)

Q.親族の相続対策に関わる中で最も大変だったことは何ですか?(自由回答)

■「両親の意思の確認」

・「両親に納得してもらえるように話をするのが大変だった」(59歳/男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「両親に相続対策を提案して、実行してもらうこと」(56歳/男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「生きているうちに、死後の相続について相談することに気が引けた」(59歳/男性/その他電気・電子関連/事務・企画・経営関連)
・「どのように相続を分配するか、一つ一つ確認しなければならなかったこと」(54歳/女性/その他電気・電子関連/事務・企画・経営関連)
・「自分がお金に執着しているようにとられることに抵抗があった。両親からの愛を失うような気がしてならなかった」(63歳/男性/その他/技能工・運輸・設備関連)
・「なかなか子供が両親にずばり聞くのが難しい話であるので、遠回しに話をしないといけない部分がありますね」(50歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「親の意向と、相続する側の意向とを合わせること。相続対策に関して親が熟知していて、その旨、親から言ってくれれば、ことはスムーズに運ぶが、そうではない場合はかなり困難を伴う」(63歳/男性/輸送用機器/メカトロ関連技術職)
・「私の両親は若い頃から、周辺からも少し変わりものと有名で、以前に相続についてみんなを集めて話した時に『私達を殺して金がほしいのか?』など、ひどい事を何度となく言われた事を思い出します」(52歳男性/その他/その他・専業主婦等)

■「資産の全体像の把握」

・「父親の預金等が複数あったので大変だった 」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「ペイオフ対策で分散していた銀行口座を整理するのが大変でした」(59歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「どのくらいの資産価値があるかわからなかったので、いろいろ調べてもらうのに時間が必要だったこと」(60歳/男性/総合商社/事務・企画・経営関連)
・「相続にあたる不動産屋や物品、貴金属、保険証券、株券、現金など色々と多種多様に存在していたので、整理するだけでも大変だった」(62歳/男性/フードビジネス/IT関連技術職)
・「結局財産はなかったのだが、その確認作業に時間がかかったこと」(56歳/男性/官公庁/公共サービス関連)
・「急死だったので、資産の有り様とかの整理とか、遺書も何も準備がなかったことが大変だった」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「庭の植木とか、どこまでを財産とするのでしょうか。難しい」(55歳/女性/教育/専門職関連)

■「資産の公平な分配や調整」

・「金融資産と不動産資産の配分」(69歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「兄弟間での分配が苦労する。関係が悪くなりそう」(56歳/男性/輸送用機器/事務・企画・経営関連)
・「兄弟姉妹を納得させることが難しかった」(52歳/男性/半導体・電子・電気機器/事務・企画・経営関連)
・「法定相続人割合を、他の被相続人に理解してもらう事に苦労した」(73歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「法律がよく分からなかった。不動産の分配が上手く行かない」(58歳/男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「遺産分割協議がなかなか条件が厳しくて、何とか折り合いをつけて、まとめるのが大変だった」(61歳/男性/官公庁/事務・企画・経営関連)
・「兄弟の取り分をどうするかで迷いました。親と同居をして面倒を見た兄の取り分を多くしたいが、兄は均等を主張していたので困りました」(60歳/男性/教育/専門サービス関連)
・「やはり財産の分割割引など細かなところ。兄弟だけならすぐ分かり合えるが、そこにそれぞれの配偶者など絡むと一筋縄ではいかない」(62歳/男性/放送・新聞/クリエイティブ関連)

■「必要書類の入手の困難さ」

・「書類関係が複雑で、とても大変なことだと感じました」(65歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「金融機関に提出する書類集め」(59歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「相続対象者の押印書類等を集めること」(70歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「書類の準備や、役所・金融機関の手続き」(62歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「誰に何を聞いて良いのか、わからなかった。また行政、銀行、証券会社等へ提出する行政書類や各種書類の準備が面倒であった」(59歳/男性/教育/事務・企画・経営関連)
・「転居のたびに戸籍を移していたので、全部の戸籍を取り寄せるのが面倒だった」(58歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「必要書類を準備する上で、故人が過去に居住した場所の役所から必要書類を取り寄せなければならなかったこと。また、単に戸籍謄本と言うだけではだめで、相続に必要な情報が書かれているものが必要だが、そんな知識はないので非常に戸惑った」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)

■「各種手続きの煩雑さ」

・「父名義の土地の相続の手続きが大変でした」(52歳/女性/食品/販売・サービス関連)
・「農地の相続手続きの煩雑さ」(67歳/男性/その他/専門職関連)
・「相続税対応をどのように進めていけば良いか分からなかったこと」(50歳/男性/流通・チェーンストア/IT関連技術職)
・「銀行口座を引き出すのが困りました」(56歳/男性/ビル管理・メンテナンス/営業関連)
・「相続放棄の手続きが、なかなかややこしかったこと」(73歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「祖父の相続の際に、別居の親族に相続放棄してもらうのが大変だった」(50歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「銀行の口座の凍結で預金をおろせなかったこと」(53歳男性/その他/その他・専業主婦等)

■「時間や手間がかかった」

・「長い時間がかかるから、非常にストレスが溜まる作業ですね」(50歳/男性/その他電気・電子関連/技能工・運輸・設備関連)
・「遠隔地だったので、不動産登記にいく手間がかかった」(64歳/男性/重電・産業用電気機器/事務・企画・経営関連)
・「実家と自宅は遠方なので、何かことがあるごとに行き来をすることが大変だった」(54歳/男性/食品/技能工・運輸・設備関連)
・「仕事の忙しい合間にも度々連絡がきて、その都度、話し合ったり対応したりするのがしんどかった」(52歳/男性/サービス/IT関連技術職)

■「関係者との距離感や接し方」

・「どこまで口を挟んでいいのか、の加減が難しかったです」(58歳/男性/その他金融/営業関連)
・「お金の話はとてもデリケートなものなので、言葉使いに気をつけた」(62歳/女性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「自分の意見はあったが、無理強いはできないと思い、発言を慎重にするよう気を遣ったこと」(61歳/男性/その他金融/営業関連)
・「親族の『財布』を預かった行きがかり上、この使い道について領収書等完備することに心がけた。使途不明金の撲滅を徹底」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)

■「親族間で揉めたこと」

・「兄弟の確執ですね。親は、面倒見てくれる子供に多くあげたいけど、そうすると兄弟の揉め事になりますからね。大変、大変。泣く」(58歳/女性/流通・チェーンストア/販売・サービス関連)
・「相手が譲歩しないので親も意地になってしまって、決着が付いたものの、もう一切縁が切れた状態になって大変な思いをした」(63歳/女性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)

■「それほど大変ではなかった」

・「両親もそもそも賛成だったので、後は司法書士にお任せしました。とても楽でした」(53歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「誰も相続で主張する事が無かったので、大変な思いはしませんでした」(52歳/男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)
・「元々、受け取りを希望していたわけではないので、成り行きに任せていた」(54歳/男性/輸送用機器/その他技術職)
・「最初から相続放棄の意思を得ており、その通りに実行したので特に大変だった事は無い」(66歳/男性/その他電気・電子関連/メカトロ関連技術職)
・「税理士さんに丸投げでした」(66歳/男性/銀行/事務・企画・経営関連)

■「すべてが大変だった」

・「すべて大変です。後悔がないように、相続人が納得できるように」(51歳女性/その他/その他・専業主婦等)

■「その他」

・「相続税が安くなるように、税理士さんに対策を考えてもらった」(61歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「公正証書というか、役場の第三者を入れないといけないことを実感しました」(52歳/男性/通信関連/営業関連)
・「子供にいま住んでいる住宅を生前贈与しようと思いましたが、子供たち夫婦は別に住宅を購入していて、宅地をどう処分すればよいか悩ませてしまいました」(54歳/男性/その他/技能工・運輸・設備関連)
・「死去したことも知らされてなかったのに相続で連絡が来て、墓の相談までされたこと」(66歳/男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「私が税理士なので、他人のことであれば的確なアドバイスができるが、身内にするのが一番しんどいです」(53歳/男性/専門コンサルタント/専門職関連)

■総評

調査の結果、50代以上のマイナビニュース男女会員のうち、両親など親族の相続対策に関わったことがある人は半数近い、48.4%となった。

次に、親族の相続対策に関わる中で最も大変だったことを聞いた。主なコメントとして、「両親の意思の確認」「資産の全体像の把握」「資産の公平な分配や調整」などが挙がった。やはり、そもそも両親などの被相続人の気持ちを確認し、並行して相続資産の全貌を把握し、その上で各相続人への納得度の高い分配を心がける、という各ポイントに苦労している人は多いようだ

また、「必要書類の入手の困難さ」や「各種手続きの煩雑さ」、「時間や手間がかかった」などの実務面を指摘する声もあった。実際の相続業務を行うにあたって、その煩雑さや複雑さ、時間や労力がかかることが大変だっという体験談が寄せられている。

「関係者との距離感や接し方」や「親族間で揉めたこと」に消耗したという人もいた。相続は"争族"という異名もあるように、関係者間の利害が対立しやすい。親族の相続対策に関わる上では、そのようなデリケートな部分に気を遣い、慎重な対応をせざるを得ない様子がうかがえる。

一方で、「それほど大変ではなかった」という意見もみられた。税理士や司法書士などの専門家に任せた、あるいは相続する財産そのものが殆どなかったなど理由はさまざまだが、いずれにせよ、相続対策であまり苦労しなかったことは喜ばしいことなのかもしれない。

今回の調査では、50代以上の人のおよそ半数が、親族の相続対策に関わったことがあり、その中でさまざまな苦労を体験していることがわかった。寄せられたコメントの中では、多種多様な事例が語られている。これから相続対策を考えている人にとっては、大いに示唆に富む内容になっているのではないだろうか。

調査時期: 2022年3月3日
調査対象: 50代以上のマイナビニュース男女会員
調査数: 508人
調査方法: インターネットログイン式アンケート

※写真と本文は関係ありません