キリンビールは、3月17日、同社の国産ウイスキーの事業戦略および、同社の国産ウイスキーブランド「陸」のリニューアル、「富士」ブランドの海外展開や新商品に関する発表を行った。
「キリンの国産ウイスキー」現状は?
ます、キリンビール 代表取締役社長 堀口英樹氏より、同社の国産ウイスキー事業について発表が行われた。
キリンビールが掲げる全体戦略は大きく2つ。ひとつは酒税改正を見据えた「一番搾り」「本麒麟」といった「強固なブランド体系の構築」、そして高付加価値ブランド・サービスの飛躍的成長を狙う「新たな成長エンジンの育成」だ。「国産ウイスキー事業は、10年先のキリンビールを支える事業として、同社の持続的成長を達成するための中核戦略のひとつとして位置づけています」と堀口氏。
またウイスキー市場の現状についても解説が行われた。ウイスキーは70年代以降に盛り上がり、1983年をピークに徐々に衰退していたものの、2009年のハイボールブーム、そして2014年にはNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」の影響を受け国産ウイスキーの人気が急速に高まっている。2021年には「ジャパニーズウイスキー」の定義が明確化され、さらに国内外で注目を浴びているという。
キリンビールの2021年における国産ウイスキーの出荷売上高は、市場の前年比見込みが92%のところ、同社の国産ウイスキーは93%と市場よりもやや良い結果となったそう。2020年に発売した「陸」「富士」のブランド別で見ると、「陸」は配荷店が7,200店増、販売数量は前年比17%増、「富士」は国内前年比で約3倍以上、またアメリカやフランスでの海外展開を本格的に開始し、海外前年比は約20倍以上と大きく伸ばしている。
ブランドの基盤を順調に構築する同社の国産ウイスキーは、2022年の事業方針として「キリンの新たな成長エンジンに向け、富士御殿場蒸溜所のウイスキー『陸』『富士』のブランド育成を加速させること」を掲げる。ミドル・スタンダードの「陸」は大型リニューアル、3,000円以上のプレミアムな価格帯の「富士」は海外市場への展開強化、そして新商品の展開による新しい需要の創造や話題化を狙うという。
両ブランドを支える静岡県御殿場市の富士御殿場蒸溜所についても言及された。この蒸溜所はモルトウイスキー・グレーンウイスキーの両方を仕込みからボトリングまで一貫して行う世界でも珍しい蒸溜所であり、マスターブレンダー田中城太氏は国際的なアワード「アイコンズ・オブ・ウイスキー2017」で世界最優秀ブレンダーに選出されるなど、世界でも高い評価を受ける品質のウイスキーを手掛ける。同社は富士御殿場蒸溜所のウイスキーを通じて、さらなるウイスキー市場の魅力化・活性化を目指していくと意気込む。
2022年の国産ウイスキー売上計画は、全体で前年比78%増の42億円を目指す。そのうち「陸」は前年比147%増の19億円、「富士」は前年比202%増の12億円と大幅な成長を見込んでいる。
「陸」「富士」2022年の展開は?
続いて、キリンビール 事業創造部 主務 原田崇氏より、国産ウイスキー「陸」「富士」の商品戦略について説明された。
国内のウイスキー市場は量販店を中心に成長しており、全体では3,000円以上の「スーパープレミアム」、量販業態では1,000円台と3,000円以上の商品が伸びていると原田氏。また海外の市場動向を見ると、ジャパニーズウイスキー市場は世界的にも好調で、特にアメリカ・フランスで支持されているそうだ。
そのような市場背景を受け、同社では、ミドル・スタンダードブランドの「陸」は国内に向け富士御殿場蒸溜所のウイスキーを手軽に発見してもらうための製品、またプレミアムブランド「富士」は、国内・海外に向けて同蒸溜所の魅力や世界をより深く理解してもらうための製品だと位置づける。
「キリンウイスキー 陸」は、4月5日に大型のリニューアルを行う。2020年の発売以降、ユーザーから味わいや香りの良さ、本格感について高い評価を得ているという同商品は、富士御殿場蒸溜所の多彩な原酒を主体としたブレンドで「ほのかな甘い香りと澄んだ口当たり」「何層にも感じる香味豊かなおいしさ」を強化。またユーザーからの評価は高い一方、ブランド認知度の低さが課題となっていることを受けパッケージも変更する。「陸」のロゴを大きくし、金帯や富士御殿場蒸溜所のマークをあしらったウイスキーらしいデザインにすることで、ブランド認知や識別の強化を図る。
リニューアルにあっては、キリンの国産ウイスキーとして17年ぶりのTVCMを実施する。サンプリングや料飲店を通して50万人規模の飲用体験を創出し、デジタルやSNSでは1億リーチを目指す。30~40代のライトユーザーを中心に、生活の導線に入るようなコミュニケーションを取っていくという。
また富士御殿場蒸溜所のDNAやウイスキーづくりを体現したフラッグシップブランドである「キリンウイスキー 富士」は、海外での展開をさらに注力し、世界規模での知名度アップを狙う。「シングルグレーンウイスキー 富士 30年」で世界的な品評会WWAとISCで2冠を達成するなど世界的にも高い評価を獲得しており、引き続きジャパニーズウイスキーの魅力を世界に発信していく。
6月7日には新商品「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士」も登場し、ラインナップが拡充。全ての原酒を同じ富士の伏流水・つくり手・自然環境で造り込み、熟練のブレンド技術が生んだ、富士御殿場蒸溜所の特長を反映した「味わいまで美しい」ウイスキーだと自信を見せる。また「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 2022 マスターピース」をキリンオンラインショップDRINXにて4月19日より数量限定で販売する。