きょう15日に最終回を迎えるTBS系火曜ドラマ『ファイトソング』(毎週火曜22:00~)で、主人公・木皿花枝を演じている女優・清原果耶。2015年の女優デビュー以来、ドラマや映画への出演を重ね、丁寧に役と向き合う姿勢は多くのクリエイターたちから高い評価を受けてきた。2021年には連続テレビ小説『おかえりモネ』でこれまでの朝ドラとは趣の違うヒロインを演じ、その実力を存分に発揮したが、『ファイトソング』でも新しい表現に挑み、“躍動感ある強さ”という、新たな魅力を見せている。
■『透明なゆりかご』『おかえりモネ』で芯の強さを見せる
清原の代表作と言えば、2018年に放送された連続ドラマ初主演作品『透明なゆりかご』(NHK)を挙げる人も多いだろう。本作で清原は、産婦人科医でアルバイトをする看護学生・青田アオイを演じているが、産まれる命と消えていく命を扱う医療現場で、さまざまなことに動揺し、感情を露わにしながらも、生きることの強さをストレートに表現した。本作での、物事に真っすぐ向き合う芯の強さを見せる芝居は、清原の持つ女優としての大きな魅力だと感じさせられた。
本人もインタビューで「役と向き合っていることが好きで、幸せな時間」と話していたが、じっくりと演じる役に向き合うからこそ、清原が作り上げる役柄の言葉は“セリフ”ではなく“思い”として視聴者の心に届く。
『透明なゆりかご』で、清原の魅力を大いに引き出した脚本家の安達奈緒子氏と、再タッグを組んだのが、2021年放送の連続テレビ小説『おかえりモネ』。清原自身も「安達さんが私の芝居の癖を意識して書いてくださったような脚本でした」と話すように、清原演じた永浦百音は、内に秘める芯の強さをしっかり表現することが要求されるようなキャラクターだった。
連続テレビ小説と言えば、月~金曜日まで、毎朝15分放送されるという特性上、いわゆる“ながら見”や見逃してしまっても話が入ってくるようなシンプルさが一つの大きな特徴だったが、『おかえりモネ』はじっくりと、とても丁寧に主人公の気持ちに寄り添うような作風だった。ヒロインのセリフの少なさも話題になったぐらいだ。
それは、清原が言葉は少なくても、しっかりと胸の内をブレずに表現できるという信頼感から来るものだったのだろう。百音が、震災によって傷ついた人たちに「同じ思いをさせたくない」と、頑なさを持って真摯に向き合う強さと、清原が役に向き合う思いがリンクするような、芯の強いキャラクターを好演した。
■『ファイトソング』で能動的に行動する“動”の印象がプラス
そんな『おかえりモネ』のあとに、連続ドラマ主演として挑んだのが『ファイトソング』だ。清原が演じた木皿花枝は、空手の日本代表を目指しているという超体育会系。これまであまりスポーツ女子のイメージがなかった清原だが、空手着で「オス」と空手の型を決める姿はさまになっている。会見でも「体育の成績は5だった」と話しており、当初は意外に感じたが、凛々しさとキュートさが混じり合ったその姿は、彼女の新たなる魅力に感じられた。
しかし花枝は、事故によって入院すると、自身に大きな病気が見つかり、空手の夢が途絶えてしまう。人生のどん底を迎えて無気力の女の子が、自身の心の支えとなっていた音楽の作者と出会い、“取り組み”と称した恋愛をすることで、前に進んでいくというストーリーだ。
この作品で、これまでどちらかというと“静”のイメージが強かった清原に“動”という印象がプラスされた。もともと、芯のしっかりした静かなる強さを表現することは、彼女の大きな特長だったが、いわゆる動的な表現での“強さ”も花枝からは存分に感じられた。“受け”と“攻め”と分類すると“攻め”の芝居で、“躍動感ある強さ”を魅せてくれている。
もちろん、そこには空手少女だというキャラクターづけも、大いに影響している部分もあるが、基本的に花枝は能動的に行動を起こす。その生きる“強さ”を、清原はダイナミックに表現しており、とても新鮮に感じられる。
■“攻め”つつも、ここ一番ではしっかりと“受け”の芝居
一方、第9話の、菊池風磨扮する慎吾からの真剣な告白シーンでは、最初花枝が主導権を持っていたが、慎吾が「ちゃんと伝えたいんだ」とスケッチブックを使って告白し出してから、スッと“受け”の芝居にシフトする。慎吾の気持ちを慮って表情を曇らせてからのシーンは、軽口を挟みつつも、まさにこれまでの清原の“静の強さ”が堪能できるシーンだった。
“攻め”つつも、ここ一番ではしっかりと“受け”の芝居をすることで、より感情が深まる。観ている人は、なんとも言えず引き込まれるのだ。
3月11日に行われた第45回日本アカデミー賞授賞式で、清原は映画『護られなかった者たちへ』で最優秀助演女優賞を獲得。受賞のスピーチでは「俳優として、映画を愛する人間としてもっと成長できるように精進してまいります」と力強く発言していた。現在20歳の清原だが、しっかりと言葉を選び、丁寧に思いを伝える表情や佇まいは、貫禄すら感じられた。今後の映像界を担っていく中心人物となることを想像させるような……さらなる活躍が期待される。
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