五十嵐は若き大部屋俳優だが、現場で時代劇パートを撮っている監督役の方が、京都で実際に大部屋俳優をやっていた経験があるそうで、本郷は「たくさんいろんなことを教えていただきました。しかも当時の話をリアルにしてくださるのは本当にありがたいことで、勉強になります」と心から感謝する。

大部屋俳優役だから切られ役も多いし、当然ながら、様々な殺陣をこなさないといけない。「すごく難しいお芝居だなと思いました。もちろん全力でぶつかっていく気持ちは必要ですけど、お芝居なので見せ方も大事ですし、さらに撮影を安全に進めるために距離を取る必要もありますから、一瞬でいろんなことを考えなければいけません。運動神経だけでも、熱量だけあってもダメで、実はすごくクレバーさが求められますが、僕は体を動かすことが好きなので、今後も機会があればチャレンジしていきたいです」

本郷が出演した時代劇といえば、大河ドラマ『麒麟がくる』(20)で演じた、天皇を補佐する関白・近衛前久役が記憶に新しいところだ。彼の上品な“公家顔”が絶妙にハマっていたが、侍の役も演じてみたいという。

「これまで僕がやらせていただいた役は、偉い公家や王様など、戦闘能力が低い役が多くて、自分が前線に立って戦うタイプの役はあまりやったことがなくて。でも今回、五十嵐役で殺陣をたくさんやらせていただいたし、初めて中剃りのかつらを被らせてもらったら『ちょんまげ姿が似合ってる』と、意外と周りから好評だったので、今度は戦闘能力の高い侍を演じてみたいです」

ひなたは昭和40年生まれで、ひなた編では昭和、平成、令和と三時代が描かれていく。本郷は平成2年生まれだが、小学校時代に迎えた1999年の「ノストラダムスの大予言」のことを今でもよく覚えているそうだ。

「みんなが『ノストラダムスの大予言』を話題にしていたんです。1999年に地球が終わるから、僕はその時までに、お小遣いを全部使い切ったのに、そうならなかったから『なんだよ、終わらないのかよ』と思った思い出があります(苦笑)。きっと視聴者の方も、リアルに生きてきた世代のシーンが出てくると思うので、そういうドラマの楽しみ方もあるのかなと思います」

第16週では、五十嵐の内に秘めた情熱が少しずつあらわになっていく。朝ドラ前作の『おかえりモネ』で坂口健太郎が演じた菅波光太朗も、五十嵐とタイプは違うが同じく不器用キャラで、回を重ねるごとに人気がバク上がりしていったのも記憶に新しいところだ。今後の五十嵐の成長や大バケにも期待したい。

■本郷奏多(ほんごう・かなた)
1990年11月15日生まれ、宮城県出身。主な映画出演作は、『GANTZ』(11)、『GANTZ PERFECT ANSWER』(11)、『進撃の巨人』(15)、『鋼の錬金術師』(17)、『いぬやしき』(18)、『Diner ダイナー』(19)、『キングダム』(19)など。ドラマの近作は大河ドラマ『麒麟がくる』(20)、『56年目の失恋』(20)、『大江戸もののけ物語』(20)など。映画『嘘喰い』が公開中。

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