いつかは自分のお店を開きたい。そうした夢を叶えるには、開業資金がいくらかかり、どのように調達したらいいのか、あらかじめ把握しておくことが大切です。そこで本稿では、業種ごとに必要な開業資金の内訳や金額、そして、開業資金の集め方について解説します。
■必要となる開業資金の内訳と金額
一口にお店を開くといっても、必要となる開業資金は業種によって異なります。まずは、開業資金の内訳と金額を、業種別に見てみましょう。
<飲食店(カフェ、レストラン、居酒屋)>
カフェの開業資金は、500~600万円が相場と言われています。一方のレストランは飲食店の中でも開業資金が高く、最低でも800~1,500万円程度必要です。居酒屋は、600万円前後が相場となっています。
資金の内訳は、物件取得費、内外装工事費、厨房機器費のほか、食器や看板、レジにかかる費用、経営が軌道に乗るまでに必要な運転資金など。レストランの場合、居酒屋などより内装にかかる金額が高くなる傾向にあります。
<美容院、理髪店>
美容院や理髪店の開業資金の目安は、700~1,500万円程度です。資金の内訳は、テナント費用、内外装工事費、備品等、運転資金など。飲食店や美容院は、店舗取得のための契約金や内外装工事、設備導入などがあり、開業資金が高額になりがちです。
<ネイル、エステサロン>
ネイルサロンやエステサロンの開業資金は、200万円程度とされています。資金の内訳は、物件取得費、内装工事費、家具・備品等、商材費、広告宣伝費などです。自宅の一室で始める場合、100万円未満で済むケースもあります。
<コンビニエンスストア>
コンビニエンスストアの開業資金は、店舗設備を本部が用意する場合、300~350万円程度です。資金の内訳は、研修費、開店準備手数料、開店準備金など。ただし、フランチャイズオーナーが店舗設備を用意する場合、3,000~5,000万円程度かかり、かなり高額となります。
<事務所(税理士等)>
税理士等の事務所を構える場合の開業資金は、50~300万円が相場です。資金の内訳は、事務所取得にかかる費用、業務用ソフトウェア、備品等。自宅で開業する場合は、50万円程度など、比較的安い資金で済みそうです。
■開業資金を集める方法
では、開業資金はどのように調達すればいいのでしょうか。資金調達には、主に4つの方法があります。
1. 自己資金
開業資金を用意する時、まず基本となるのが、「自己資金」です。自身でコツコツ貯めてきた貯金のほか、以下のようなものを自己資金にできます。
退職金
会社を辞め、退職金をもとに開業する人も多くいます。退職金のある会社に勤めているなら、退職金規程などで金額等をよく確認しておきましょう。
株式や投資信託、車、自宅の売却
所有する株式や投資信託、車、自宅などの資産を売却し、自己資金に充てる方法もあります。これらを売却して自己資金にすることは、貯金同様、「確実に資産を築いてきた結果」とみなされ、経営者としての評価にもつながります。
生命保険の解約返戻金
保険を解約して受け取った解約返戻金を自己資金とする方法です。支払った掛金総額よりも目減りすることがあるため、その点に気を付けましょう。また、保険契約を解約せず解約返戻金の一定範囲内でお金が借りられる「契約者貸付」という制度もあります。
身内からの贈与
自分で貯めるより評価は下がるものの、身内からの贈与も自己資金に含めることができます。贈与税の非課税枠は年間110万円ですので、この範囲にとどめておくことが多いようです。
2.融資
開業資金を自己資金のみで用意できない場合、銀行や国、自治体などから融資を受けるのが一般的です。ただし、開業期は民間の金融機関から融資を受けることは難しいため、以下のような公的融資を検討しましょう。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、日本に5つある政策金融機関の1つで、政府が100%出資している銀行です。日本政策金融公庫の融資には、「新創業融資制度」や「中小企業経営力強化資金」などがあります。
●新創業融資制度
新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人が、「無担保・無保証人」で利用できる制度です。融資実行が申し込みから1か月程度と早く、自己資金割合が創業資金総額の10分の1でよいなどの特徴があります。
●中小企業経営力強化資金
超低金利で借りることができ、返済期間が比較的長く設定されています。「無担保・無保証枠」が2,000万円まであり、自己資金の要件がありません。ただし、認定支援機関の助言と指導を受ける必要があります。また、公庫が指定する事業計画書の作成や、融資を受けた後は、公庫に対し1年ごとに経営状況を報告することも求められます。
都道府県、市町村などの制度融資
自治体、金融機関、信用保証協会の三者が一体となり、信用力の乏しい起業家を支援するための融資です。金利が低いことがメリットですが、融資実行まで時間を要し、融資額の半分の自己資金が必要、また、経営者本人が連帯保証人にならなくてはいけない点を知っておきましょう。
3.補助金や助成金
その他、主に経済産業省が管轄する「補助金」、主に厚生労働省が管轄する「助成金」などを活用することもできます。
補助金
補助金とは、国や自治体の政策目標のために、政策に合った事業を行う事業者に給付されるものです。補助金の目的に合っているかどうかの審査があり、支出した経費に対して一定割合が給付されます。応募期間が短いため、機会を逃さないよう情報収集が欠かせません。
助成金
助成金の多くは、雇用の課題に取り組む事業者に対して支給されるものです。審査がなく、一定の要件を満たすことで受給できます。あらかじ金額が決められていることが多く、後払いが基本となっています。
4.クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて個人から少額のお金を集める方法です。「購入型」「寄付型」「金融型」があり、日本で一般的な「購入型」は、投資してもらう見返りとして、モノやサービス、体験、権利などを販売します。
クラウドファンディングは、どのくらい資金が集まるのか不透明なため、「自己資金や融資を補うもの」程度に捉えておきましょう。
■開業資金の調達は計画的に
特に飲食店や美容院などの場合、開業資金は決して小さな金額ではありません。開業を決意したら、計画的に自己資金を貯めていくことが大切です。そのうえで融資を検討し、補助金や助成金の申請、さらに、クラウドファンディングによる資金調達を考えてみましょう。