2021年、様々なターニングポイントを迎えた声優・駒形友梨。2021年12月15日にリリースした1stフルアルバム『stella』の収録や、同作を引っさげて開催予定の2ndワンマンライブについてのインタビューが到着。2022年の活動に向けての意気込みも、同時に語ってもらった。

  • 駒形友梨

●歌で言葉で、詰め込んだ”好き”の気持ち

――後編では、『stella』の収録曲について詳しくお聞きしていきます。まずリード曲「コンパス」は、前編でおっしゃっていた「ライブでみんなと楽しめる曲」のひとつのような曲ですね。

そうなんです。「コンパス」は、曲に関してはライブでみんなともっと楽しめる曲を増やそうというところから始まった曲で……ただ、今回のコンペは今まで以上にいい曲ばかりだったので、この曲もだいぶ悩んだんです。そのなかで「コンパス」に関しては私もいい曲だと感じたうえに、何よりまわりのスタッフさんの「これがいい!」という熱意もすごかったんですよね。

――一方で、歌詞の面では駒形さんの内面をそのまま発信されたように感じたのですが。

はい。「コンパス」は『stella』の中で最初に作詞した曲なので、純粋に今の自分が考えていることや、”過去と未来”とか”宇宙”というアルバムのテーマをそのまま全部乗せられた曲になったと思っています。

――純粋に考えられていることとして、どのような想いを特に強く込められたのでしょうか?

元々好きでこの業界に入ってきて、最初は「ステージの上で歌うのって、こんなに楽しいんだ!」みたいな感動がいっぱいあったのに、年齢や回数を重ねるうちに良くも悪くも慣れてきちゃったりしていることが、自分の中ではよくないなと思っていて。改めて「私は、なんで今この仕事をしてるんだっけ?」と向き合っていったんです。それで「結局『好き』という気持ちだけで今まで来たし、きっとこれからも好きだから、ずっと続けていくし頑張れるのかな」という結論に至ったので、そういう想いを歌に乗せていきました。

――今までもずっと持っていたし、これからも持ち続けていたい想いを、改めてこのタイミングで曲という形に残した。

そうですね。もしそういう気持ちを忘れそうになっても、この歌を聴く度に思い出せるな、って。そういう大事な曲ができてよかったなと思っています。

――そういった想いを込めたこの曲、サビの歌声はとても晴れやかで。聴いていてとても気持ちがいいしポジティブになります。それって、長く応援している方はすごくうれしいでしょうね。

きっと「歌うの、好きだな」という気持ちがすごくシンプルに乗っているから、より楽しそうに見えたりポジティブに聴こえるのかな……って、今なんとなく思いました。実際、私のことを長く応援してくださっている方の中に「この曲は、今までの駒形さんを知っているとよりエモいな」と書いている方がいて(笑)。そこを含めて、私のことを見ていてくださって、曲を聴いてそう感じてもらえるのも本当にありがたいですね。

――そういった姿は、MVからも感じられるところがありましたし。

あはは(笑)。今回はいろんなシチュエーションで歌わせていただきました。今まであまりお見せしたことのなかったレコーディングしているような姿とか、ギターを抱えて空の湯船に入っていたり、たくさんのメトロノームに囲まれて歌ったり……今回ははじめましてのスタッフさんと監督さんだったのもあって、「すごい、この曲でこういう演出になるのか」と驚いたところがいっぱいありました。

――他にも、床に寝ながら歌っていたりもしましたね。

あれ、結構背筋使うんです(笑)。顔を床にべたっとしちゃうとあんまりよく映らないので、身体を引き上げて。最初はその体勢でうまく身動きが取れなかったんですけど、後半にはちょっとずつ「あ、ここまで動いたらいい感じ」というのがわかってきて。そうしたら監督さんに「お! 床をモノにしたね」と言っていただけたんです(笑)。その楽しそうな感じはきっと、MVで観ていただけると思うんですけど。

――しかも、モノにするとより楽しくなりますし。

そうですね。あと、「なんだ。ここまでやってよかったんだ」という安心感も感じました。私、性格的に怖くて最初の一歩がなかなか踏み出せなかったり、踏み出せてもその一歩が小さいというところがあるので、そこを突破してからはより自由に楽しくできたなと感じていました。

――駒形さんが楽しく音にまみれているような姿を、この曲のMVで観られることすごく素敵だと思います。

ありがとうございます。このMVは私の歌う姿とパフォーマンスでみせていきたいというコンセプトだとお聞きしたので、私が音楽とより親しい関係値にいるところをお見せできていたらうれしいです。

●挑戦することで初めて知れた、今までとは違う激しいロックならではの歌い方

――そして『stella』収録の他5曲の新曲も、非常にバリエーション豊かなものばかりです。なかでも僕は最初に「孤悲」に衝撃を受けまして……。

「孤悲」が好きだなという方、結構たくさんいらっしゃるんですよ。『stella』は私のアルバムにしては珍しく明るい雰囲気の作品なんですけど、この1曲がだいぶ下に引きずり下ろすというか(笑)。

――本当にすごいパワーをもった曲ですよね。

そうなんです。レコーディング自体も今まででいちばん長くかかって、1日で終わらず……という感じだったので。そのぶん、聴き応え満載の曲になりました。

――この曲は詞曲ともに矢野達也さんが手掛けられているので、長くファンでいらっしゃる方は「矢野さん曲だから、また何か試練があるだろうな」と感じられていると思います。

あはは(笑)。ただ今回は、最近高いキーの楽曲を好きになって個人的に覚えて練習していたおかげで、主メロの難しいところは矢野さんの想定よりはすぐに歌えていたようで。「なんだ、すぐ歌われちゃった。ちぇっ」みたいな感じだったんです(笑)。でも感情表現や、あとはコーラスとかハモではまだまだ実力不足を痛感しましたし、今までの矢野さん曲とはまた違う種類の難しさを感じました。

――表現の部分で感情を膨らませるという点では、その「孤悲」から「創だらけの詩」という2曲の並びも印象的でした。

「創だらけの詩」は、最初の熊谷さんとの打ち合わせで「『0から1を生み出すのはすごく大変だけど、でもやるんです!』みたいな曲を書きたいです」とお話ししたら「全然いいと思いますよ」と言っていただけて、そのテーマに決めました。でもこの曲が『stella』の中で最後に作詞した曲だったので、書いているときにはだいぶ「作詞つらいよー」という気持ちが膨らみまくっていました(笑)。

――実際、産みの苦しみを感じていたんですね。

はい。でも熊谷さんが私が元々書いた歌詞をすごく綺麗に整えてくださって、もう”先生”という感じで……。途中の状態のものを提出して、それが直って返ってくるということも初めてだったので、すごく勉強になりました。

――サウンド的にも、初の激しいロックということで、歌うときのアプローチも全く違ったのでは?

全然違いました。私の声って暗く聴こえがちみたいなので、今までずっとキャラクターソングとかを歌うときに意識的に明るくしようとしていたからか、普段から口角が上がった状態で歌っているみたいなんです。でも「創だらけの詩」のレコーディングでは、「ロックはそういう歌い方をしません。口を縦に開けてください」と言われて。

――口の開け方から違うんですね。

そうなんです。実際にやってみたら、自分でもレコーディングで聴いたことのないような音色が出たので、歌いながら「すごい!」と思いました。あとロックならではの熱さを維持しながら歌う難しさも感じたんですけど、3月のライブで熱い空間を作れるようにしっかり仕上げていきたいですね。