みなさんは「依然」という言葉をよく耳にしますか? 少し堅い表現になので、日常会話の中ではあまり使わないかもしれませんが、「依然として」という慣用句はよく耳にする言葉ではないでしょうか。

今回は、同音異義語である「依然」と「以前」の違いをはじめ、「依然」の意味や使い方、対義語や英語表現に至るまでをくわしく解説します。この機会に「依然」の意味や使い方を覚え、正しく使えるようにしましょう。

  • 「依然」とは?

    「依然」についてご紹介します

「依然」とは?

「依然」とは、ある物事が、もとの状態から一向に変化することなく長い間続いている様子のことを表す言葉です。日常では特に、国内や海外ニュースなどで緊迫した状態が続いていたり、物事の決着が長い間ついていなかったりするような状態を表す際に、使われることがあります。

「依然」の意味

「依然」の意味は、物事の状態・状況が変わらずに長時間(長期間)続いているような状態のことです。ここでは「依然」という言葉を形成している2つの漢字を分解して、それぞれの意味をみてみましょう。

最初の漢字である「依」には、「そのまま」や「もとのまま」といった意味があります。2つ目の漢字である「然」には、「そのとおり」という意味があるので、この2つを合わせて、「そのままのとおり」「もとのとおり」という意味になるといえます。 なります。

慣用句「依然として」

「依然」は、単体で使用されることはほとんどなく、慣用句の「依然として」という形で使用されることが多い言葉です。慣用句として使われる場合も、意味は同じで「ある状態がしばらく続いていること」を表していますが、ネガティブな意味合いとして使われる場合が多いといえます。

同音語「以前」との違い

「依然」の同音異義語として「以前」という言葉がありますが、2つの言葉は意味もイントネーションも、異なります。「依然」のイントネーションは、いぜんと順番に上がっていきますが、「以前」は逆に順番に下がっていきます。

また、意味も「依然」が「もとのままの状態で何も変わらない様子」を表す一方で、「以前」は「ある時点よりも前のこと」「昔のこと」という意味を持っており、使う場面は全く違います。

「旧態依然」とは

「依然」に関連する言葉として「旧態依然」という言葉があります。「旧態依然」の「旧態」には「昔の状態」、「依然」には「もとの状態から変わらない」という意味があり、それぞれの意味をあわせて「昔の状態からそのまま変わらない」という意味になります。ちなみに「旧態依然」の読み方は「きゅうたいいぜん」です。

  • 「依然」の類義語

    慣用句の「依然として」という形で使われることが多いです

「依然」の類義語

ここでは「依然」の類義語をご紹介します。もとの状態のまましばらく状況が変わっていない様子を表す「依然」の類義語としては、「いまだに」、「今もなお」、「相変わらず」などが挙げられます。

いまだに

1つ目の「いまだに」には「今になってもまだ」という意味があります。昔の状態のまま何も変わっていない状態を表すという点で「依然」と同じような意味を持っており、「依然」の類義語と考えることができます。

一方でこの2つの言葉にはニュアンスの違いがあります。「依然」はニュートラルな気持ちで、昔と変わっていない状況や様子を伝えている言葉です。一方で「いまだに」には問題がある昔の状態から、なんのアクションも取れていないまま現在に至っているというような意味があります。

そのため、「いまだに」には、「心配」や「焦り」のようなネガティブな感情が込められているということができます。

今もなお

2つ目の「今もなお」は、「前々から続いている物事が今現在でも変わらず続いているさま」という意味を持つ言葉です。「今も尚」、「今も猶」と書くこともあります。

「今もなお」は「依然」と全く同じ意味を持つ言葉なので、「依然として」と置き換えて使用することができます。

相変わらず

3つ目の「相変わらず」は、「以前と同様に」「昔と変わらず」というような意味を持つ言葉です。「相変わらず」は、「相変わらず調子が良い」「相変わらずよくならない」というようにポジティブなことをいう場合にも、ネガティブなことをいう場合にも使うことができます。

  • 「依然」・「依然として」の英語表現

    「依然」の類義語は、「いまだに」、「今もなお」、「相変わらず」です

「依然」・「依然として」の英語表現

「依然」・「依然として」の英語表現は、「still」や「as yet」、「remain」などです。「still」には、「まだ」や「いまだに」という意味があり、前の状況が続いているというニュアンスがあります。

「as yet」には、「今のところまだ…」「現時点ではまだ…」というような意味があり、「先はどうなるかわからないが」という含みを持った表現になります。

「依然として」という表現をしたい場合は、「remain」という言葉を使うと良いでしょう。「remain」自体は、「とどまる」や「残る」といった意味の言葉ですが、「It remains unchanged.」というように使えば「依然として変わらない」となります。

  • 「依然」を使った例文

    「依然」・「依然として」は英語で、「still」、「as yet」、「remain」などです

「依然」を使った例文

先ほども上記で述べたように「依然」は、「依然として」という慣用句として使用することが多い言葉です。ここでは「依然」と「依然として」を使った例文をご紹介します。

「依然」の例文

まずは、「依然」を使用した例文からみていきましょう。

1. 元ボクサーだったそのおじいさんは、依然衰えを感じさせない身体つきをしている。

2. 「オミクロン株」という新型コロナウイルスの変異株が南アフリカから突然出現したが、感染力や致死率などは依然不明である。

3. 昨夜の大きな地震から一夜明け、被害の状況が少しずつ明るみになってきたことにより、今後の対応が話し合われてはいるものの、依然問題が山積みである。

4. 被害者は依然行方不明のままだ。

「依然として」の例文

続いて、「依然として」という慣用句を用いた例文をみていきましょう。

1. ウクライナの国境には、何万人という規模のロシア軍の兵士が押し寄せており、依然として緊迫した状況が続いている。

2. 今冬に開催予定の北京五輪の外交的ボイコットを発表したアメリカに続き、オーストラリア、イギリスやカナダも外交的ボイコットを発表したことで、IOCの組織内では依然として混乱が続いている。

3. 昨晩、乗っていた自動車で事故を起こし逮捕された伊藤容疑者は警察の尋問に対し依然として沈黙を続けているようだ。

4. 予想外の展開の中、彼は依然として平然を装っているように見える。

  • 「依然」は「依然として」というように使うことが多い言葉

    「依然」と「依然として」それぞれの例文をご紹介します

「依然」は「依然として」というように使うことが多い言葉

「依然」には、「昔の状態から長い間、何も変わらない状況が続いているさま」という意味があります。「以前」とは同音ですが違う意味を持つ言葉です。

かしこまった表現の言葉なので、日常生活などカジュアルな場面より、ニュースで、事件や事故、国際情勢や地域の様子を表す際などのフォーマルな場面で聞くことが多い言葉といえます。

英語表現としては、「still」や「as yet」、「remain」などが使用できますが、それぞれニュアンスが違うことを覚えておきましょう。また、「as yet」は、「先のことはわからないが…」というような含みを持たすことができる表現なので、シチュエーションによって使い分けることができます。

みなさんもこれを機に「依然」という言葉の意味をきちんと理解し、正しいタイミングで使えるようにしましょう。