――大泉洋さんが演じる源頼朝はどんな人物になりますか?

源頼朝というと、源氏の軍団を率いて平家を滅ぼし、鎌倉幕府を作りましたが、実際に彼の敵が何だったかといえば、必ずしも平家だけじゃなかったということです。頼朝は縁もゆかりもない土地で育ったいわゆるよそ者でした。そこを貴族出身というたった1つのカードで、坂東武士たちを従えて平家を滅ぼし、そのあと東北だけではなく、日本全国を平定しましたが、それは並大抵のことではなかったと思います。

――では、その敵は誰だったのですか?

一番の敵は仲間だったと思います。敵であり、仲間でもあるという人間関係が、ものすごく濃密に描かれていきます。頼朝が義経や源氏の軍団を率いて、順調に勝ち進んでいったことだけではなく、自分たちの事しか考えていない坂東武士団をつなぎとめ、言うことをきかせていった。たぶんこれまでそんなに描かれたことがない部分を描かれていくので、そこをぜひ楽しみにしていただけたらなと。そういうパワーゲームをやっていく大泉さんはかなり新鮮だと思います。

――小池栄子さん演じる北条政子は、頼朝と結婚してどんどん女帝化していきますが、清水さんはどんな点に注目されていますか?

政子も義時と同じで、若い頃は全く自分の人生がそんなことになるとは思わなかった人ですが、鎌倉幕府成立以降、権力と権威を持って御家人たちを率いていきます。義時が非情な決断をしていく一方で、それを横目で見て踏ん張り続けるという大切な役割を果たしました。また、政子は子どもたちを次々と亡くしていく運命にある女性です。大きな悲劇をいかにして耐えて、日本中の武士が尊敬する女性になっていったのか。そこを乗り越えていく強さは、小池栄子さんならではだと思っています。

――女性の強さも描かれるわけですね。

有名な『愚管抄』という歴史書に、日本は「女人入眼の日本国」という表現がありますが、それは女性たちが仕上げる国という意味です。当時、政子が朝廷などと交渉していくんですが、カウンターパートになるのが鈴木京香さん演じる丹後局や、宮沢りえさん演じる政子の継母・牧の方で、そういった強い女性が描かれます。つまり自分のだんなさんたちを操り、けしかけて、自分自身が積極的に舵取りをしていきます。政子にもライバルがものすごくいたということで、そのへんが発見になると思います。

――北条義時の最大の魅力はどんな点でしょうか。

義時は三谷さんが好きな“振り回される人”ですが、与えられたミッションに全力で立ち向かっていく健気さや一生懸命さがいいですね。義時に天才的な何かがあるわけではないけど、苦労しながらも必死になって、障害物レースをやっていく。決して華麗ではない泥臭い乗り越え方をしていきます。頼朝の影響を受けて、だんだん上手に課題を解決できるようになっていき、時には冷酷な行為に出たりしますが、健気な人間がだんだん変貌していくということで、ある種、人間の恐ろしさというかすごみを見せていく。そこは今までの大河ドラマにはない、ダークヒーローになる場面が出てくると思うので、そこを楽しみにしていただければと思います。

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