謎のおじさん“しもべえ”を主人公としたNHKドラマ10『しもべえ』が、1月7日よりスタートする(総合 毎週金曜22:00~22:44 ※全8回)。女子高生のユリナが何気なくアプリをダウンロードして以来、ユリナが困っていると無言のおじさん“しもべえ”が駆けつけ、彼女を助けてまた無言で去っていく……という不思議ながらも、なんとも興味をそそられる内容となっている。そこで、“しもべえ”役の安田顕と、ユリナ役の白石聖を直撃。安田はまったくセリフのない強烈キャラをどう演じたのか、白石はそれをどのように受け止めたのか。役作りの秘訣や共演の感想とともに、2021年の活躍について振り返ってもらった。

  • 『しもべえ』“しもべえ”役の安田顕(左)とユリナ役の白石聖

ユリナは明るくて、のんきで、将来のことをまじめに考えない女子高生。いつもスマホをいじっている今どきの17才のユリナが、ある日発見した「しもべのしもべえ」というアプリを何気なくダウンロードする。その日から、ユリナが柄の悪い男子に絡まれたり、困った状況に陥るとどこからか中年のおじさんがやってきてユリナを助けてくれるようになる。一体、おじさんは何者なのか?

――本作の脚本を読んだ印象。ストーリーに感じた魅力を教えてください。

安田:青春だ! と感じました。そしてすでに、いいドラマになるなという気がしています。僕が学生の頃には、酔っ払った親父が電話をかけてきて、親父の歌っている声がよく留守電に入っていました。さだまさしさんの「案山子」を歌っているんですよね。「元気でいるか、お金はあるか、今度いつ帰る」という気持ちを歌っている曲なんですが、気がつくと今度は僕がそういった留守電を吹き込む側になっているんだなと感じています。“しもべえ”として青春を俯瞰で見ることができる役回りをいただき、青春を見守る側である役柄に挑戦する機会をいただけたドラマです。“しもべえ”役なので主役で呼んでいただいたはずなんですが、「あれ、僕は主役だよな?」と思うこともあります(笑)。ゴジラ、ガメラ、ウルトラマン、エヴァンゲリオン、ガンダム……みんなそうですが、タイトルにはなっているけれどそんなに出番は多くなかったりして。“しもべえ”には、そんな印象を持っています(笑)。

白石:学生時代って、学校やバイト先など限られた世界が自分のすべてになっていたなということを思い出しました。そこで起きる友だちとのすれ違いなど、ちょっとした出来事も事件のように感じたり。今になってみるととても小さいことだなと思うけれど、当時の自分としてはものすごく大きな悩みだったんだなと思います。ユリナの悩みやピンチを“しもべえ”というおじさんが助けてくれるんですが、そこでユリナもいろいろなことを感じていきます。ユリナがどのように成長していくのか、その点にも注目していただけたらうれしいです。

――不思議な関係性で共演を果たすことになりました。共演の感想をお聞かせください。

安田:白石さんには、空間把握能力に長けているなという印象があります。あとは、佇まいがとてもさっぱりしている。今後お仕事をしていく上でも、それはとても大切なことなのではないかなと思っています。

白石:ありがとうございます! 安田さんが、“しもべえ”をよりチャーミングに見せるための提案をしたり、監督と話し合っている姿をよくお見かけしています。魅力的なおじさんといいますか(笑)、安田さんだからこそ、魅力的でかわいらしいおじさんである“しもべえ”をここまで立体的に演じることができるんだなと感じています。

安田:ありがとうございます。おじさんになると若い方と共演をすることも多くなってくるんですが、ある方は“曲者のおじさん”、またある方からは“変なおじさん”と言われたこともあります。“魅力的なおじさん”というのは、今までで一番うれしい言葉ですね(笑)。白石さんはなんだか、こちらが神輿を担ぎたくなるような方。僕に力なんて全然ないんだけれど、こんな僕でも「なにか支えになれれば」と思わせてくれる役者さんです。

■安田顕は手先、白石聖は声の表現にチャレンジ

――“しもべえ”は無言のキャラクターとなります。演じる上でのご苦労はありますか?

安田:試行錯誤ではありますが、“手先”に感覚を持つように心がけています。僕自身、人と話をしていると、その人が何を考えているのかなど、顔だけではなく、意外と手先にも表れたりするものだなと感じています。例えばおしぼりがあれば、それをひっくり返している人もいれば、あちこちを拭いている人がいたりと、手先にも感情が表れてくる。本作でユリナの母親を演じている矢田亜希子さんが、以前『愛していると言ってくれ』というドラマに出演されていましたが、セリフがなくとも手話で感情が伝わることがたくさんあったとお話されていました。手話とは違いますが、僕も手先で何か表現ができないものかと考え、本作をきっかけに新しい表現の仕方が見つかればいいなと思っています。また“しゃべらない”というのはなかなかストレスが溜まることでもありますが、白石さんがきちんとリアクションを待ってくれるのでとてもやりやすいです。本当にありがたいです。

白石:安田さんにそんなふうに感じ取っていただけていたなんて、とてもうれしいです。安田さん演じる“しもべえ”は、たとえ話さなくともそこに存在するだけで、伝えたいことや、言葉まで聞こえてくる気がします。安田さんの目から感情が伝わってくる部分もあり、セリフがないこともまったく気になりませんでした。

――白石さんは、ユリナ役を通して新しい挑戦になったことはありますか?

白石:私はいろいろな声を出せたらなと思っています。台本を読んでいると、叫ぶシーンもとても多くて。コメディということもあって、反応や声を大きくすることを求められたりもするんですが、そこにひとつ声の表現を足すことができたらいいなと思っています。大きく感情を表すシーンだけではなく、日常会話のシーンでも「ここはポイントになるかもしれない」と思ったセリフは、少し違った声を出してみるなど、いろいろな声を探していきたいなと思っています。