「無事にイベントが終了して安堵した」など、安堵という言葉はビジネスシーンでも使われることがあります。しかし「堵」という漢字が常用漢字ではないことから、言葉の由来をよく知らずに使っている人も多いでしょう。
本記事では、安堵の意味や言葉の成り立ち、対義語や類義語などを紹介します。語彙力に自信がない人は、ぜひご一読ください。
安堵とは
安堵の読み方
「安堵」とは、「あんど」と読みます。
安堵の意味1
安堵とは、「気掛かりなことが取り除かれて安心すること」という意味がある名詞です。心配していたことがうまくいってほっとした時に使われます。
安堵に使われている「安」は常用漢字で、「やすらかである」「落ち着いている」などの意味があり、心が穏やかである様子をあらわしています。「堵」は常用漢字ではありませんが、「防ぐ」「さえぎる」「垣根」「塀」などの意味がある文字です。
2種類の異なる意味の漢字が一緒になって「垣根の内の土地で安心して生活すること」という意味の、安堵という言葉になりました。現在では「心配ごとが取り除かれて安心すること」という意味で使われます。
安堵の意味2
中世において、安堵は領地など財産権の移転において、支配者や主人から被支配者や従者に与えられる、下記のような法的な承認行為をさしていました。
・本領安堵 : 先祖代々の土地を継続して自らの財産とすることを確認保証すること
・和与(わよ)地安堵 : 訴訟や紛争で和解して自らの財産としたことを確認保証すること
・買得地安堵 : 土地購入を承認すること
など
また、これらの権利を確認・承認することを「安堵する」と表現していました。
安堵の由来
安堵はもともと、「垣根の中にある土地で安心して生活すること」という意味で使われていました。他者の侵害から人身や財産が防御された堵(垣)の中で安心して過ごせている状態をあらわすのが、安堵の本来の意味です。
安堵の使い方・例文
・入試を終えた息子を迎えに行ったら、安堵の表情を浮かべていた
・無事到着したとの知らせを受けて、安堵の胸をなで下ろした
・クレーム対応をなんとか終えられ、安堵のため息をついた
・部下からプレゼンで勝ったとの報告を受けて、部署のメンバーから安堵の声が上がった
・ゲストが乗っている新幹線の遅延が解消したことがわかって、安堵の息を漏らした
上記のように、安堵という言葉はビジネスシーンでもよく使われる表現です
安堵の類義語と意味の違い
安堵には似た意味を持つ言葉がいくつかありますので、違いを理解して使いわけましょう。安堵の代表的な類義語を紹介します。
人心地
・大変だったプロジェクトが終了して人心地がついた
・大変だったプロジェクトが終了し安堵した
「人心地」とは「ほっと、くつろいだ感じ」という意味がある言葉です。「緊張から解放されて、ほっとした気持ちになる」という意味の「人心地がつく」という慣用句でよく用いられます。
安堵と人心地は、似た状況で使われる言葉として覚えておきましょう。
安心
・目的地に帰着したとの知らせを受けて安心した
・目的地に帰着したとの知らせを受けて、安堵の胸をなで下ろした
「安心」には「気掛かりがなく心が落ち着いていることやその様子」という意味があります。安堵は「気掛かりなことが取り除かれて」安心することであり、安心に比べて意味が限定されている言葉です。
安心の方が安堵に比べて広い意味で使われている点に注意して使いわけてください。
胸をなで下ろす
・クレーム対応を終え、胸をなで下ろした
・クレーム対応を終え、安堵のため息をついた
「胸をなで下ろす」とは「心配ごとが解決してほっとする」という意味がある慣用句です。「胸をなで下ろす」は「安心する」「安堵する」にも言い換えられますので、意味がごく近い類義語として覚えておきましょう。
溜飲が下がる
・前回の大会で負けた相手に勝ったことで、みな安堵していた
・前回の大会で負けた相手に勝ったことで、みな溜飲が下がる思いだ
「溜飲が下がる」は、「胸がすっきりする」「不平や不満、恨みが解消して気が晴れる」という意味がある表現です。「溜飲を下げる」と表現することもあります。
安堵は「心配ごとがなくなりほっとする」という意味で使われる言葉です。「溜飲が下がる」は「嫌な気持ちが消えて気が晴れる」という意味なので、少しニュアンスが異なる点に気をつけましょう。
安堵の対義語
安堵とは逆の意味を持つ言葉がいくつかありますので、安堵との違いを理解しておきましょう。安堵の代表的な対義語を紹介します。
不安
・無事到着したとの連絡がなく、何かあったのではないかと不安に思っていた
・無事到着したと知らせを受けて、安堵の胸をなで下ろした
「不安」には「気掛かりで落ち着かないことや、その様子」などの意味があります。安堵とは逆の状況で使われる言葉ですので、対義語として覚えておきましょう。
危惧
・彼は資格試験の合格が難しいのではないかと危惧している
・彼は資格試験に合格したことがわかって、安堵していた
「危惧」には「危ぶんで、恐れること」という意味があります。将来起きるかもしれない悪いことに対して、不安な気持ちを持って恐れている状況で使われる言葉です。
安堵は過去に起きたことが問題なかったことで、安心している気持ちをあらわしています。
つまり危惧と安堵は、いつ起こったことに対することなのか、それに対する気持ちなどが逆になっている対義語です。
憂慮
・ゲストが乗っている新幹線が遅れていて、イベント開始に間に合うかどうか憂慮している
・ゲストが乗っている新幹線の遅れが解消され、イベント開始に間に合いそうで安堵した
「憂慮」の意味は「心配すること」「思い煩うこと」です。将来起きるかもしれないことに対して心配する気持ちをあらわします。過去に起こったことへの安心を意味する安堵とは、時間帯や気持ちなどが逆の状況で使われます。
心配
・プレゼンに勝てるかどうか心配している
・プレゼンに勝てて安堵した
「心配」には、下記のような意味があります。
- 物ごとの先行きなどが気掛かりで心を悩ませること
- 気にかけて面倒をみること
安堵の対義語にあたるのは前者で、将来のことに対する心配ごとをさします。安堵は過去に起こったことへの安心ですので、使われる対象や気持ちが心配と逆になっています。
懸念
・プロジェクトをスムーズに進行できないのではないかと懸念している
・プロジェクトをスムーズに進行でき、安堵している
「懸念」の意味は「気掛かりで不安に思うこと」で、将来発生するかもしれない問題点に対して心配していることをさします。あるいは気になったことが心から離れないような、不安で頭がいっぱいになっている状況でよく使われる言葉です。
過去の不安が取り除かれてほっとした気持ちをあらわす安堵とは、使われるタイミングや気持ちが逆である点をおさえておきましょう。
安堵とは心配ごとが解消されて気持ちが楽になること
安堵とは、気掛かりだと思っていたことが除かれて、安心することを意味する言葉です。似たような意味を持つ言葉に、「安心する」や「胸をなで下ろす」などがあります。感情に関わる言葉であり、「憂慮」や「心配」など対義語として使われる言葉も多いですので、使い方を間違えないように気をつけましょう。
安堵はビジネスシーンなど、改まった場でも使える表現です。社会人であれば、使用できるシチュエーションも多いので、ぜひ覚えておきましょう。