●初のデジタルシングル、テーマは「幸せとは何か」

──『Waver』を経て、2022年1月にはデジタルシングル「箱庭の幸福」がリリースされます。こちらはどのような楽曲ですか?

この曲は2022年1月より放送されるTVアニメ『リアデイルの大地にて』のEDテーマ曲です。その世界観に合わせながらも、『Waver』で成長した田所あずさの次のシングルということも考えながら制作しました。歌詞のテーマは「幸せとは何か」。歌のなかに登場する子は、自分の好きな物だけを周りに集めて、これで私の幸せは完成したと思っています。そんなときに、「あの子」がバケツをこぼしたり、クレヨンで塗りつぶしてきたりと、自分の箱庭に入り込んできます。そんな「あの子」が邪魔なはずなのですが、それでもいて欲しいと願う。そんな歌になっています。

──邪魔をしてくる「あの子」がいてくれたほうが幸せだと思っている。

誰にも関わらず気ままに生きることは、一見すれば幸せそうに見えます。でも、自分の想像通りのことしか起きない不変の世界よりも、予想外のことを連れてきてくれる誰かと関われる世界のほうが幸せを感じられるのでは?と思ったんです。

──レコーディングはいかがでしたか?

幸せが完成していると思っているけども本当は幸せではないのかもしれない、「あの子」が邪魔してきているのに、傍にいて欲しいと思っている。その温度感をどう持っていけばいいのか悩みました。あたたかく包み込むように歌うと幸せ過ぎるだろうし、かといって悲しすぎるのも違うし……。とにかくバランスが難しかったですが、最終的には大木さんとジョンさんから「囁くように、置いていくように柔らかく歌うのがよさそう」とアドバイスしていただき、それを意識しながら歌いました。また、頭の部分がほぼ声のみなので、緊張感がすごかったです。とても集中力が必要なレコーディングでした。

──本曲のMVも制作されたとお聞きしました。

今回のMVのポイントは「ループ」。思いがけないことは何も起きない、不変の世界を「ループ」という形で表現しました。その「ループ」が何かのきっかけで止まり、別の動き方をし始める、というようなMVに仕上がっています。

──こういったMVの制作にも積極的になっている?

そうですね。曲のことをいちばん理解しているのは私なので、打ち合わせで監督に説明するのも私の使命かなと思っています。ただ、その後はもう監督を信頼して、お任せしていました。実際、とても素敵な仕上がりになったと思います。

●タイアップ曲への向き合い方の変化

──先ほどお話があった通り、本曲はTVアニメ『リアデイルの大地にて』のEDテーマ曲です。作品への印象を教えてください。

『リアデイルの大地にて』は、現実世界では病気で自由に生きられなかった各務桂菜ちゃんという子が、自身がプレイしていたVRMMORPG『リアデイル』の世界に転生するという物語です。原作を読んだとき、私にとっての幸せって何だろうと考えました。

──田所さんが作品を読んだときの気持ちが「箱庭の幸福」にも表れているような気がします。

『Waver』をリリースしてから、タイアップ曲でも自分が作品を読んで感じたことを表現したほうがいいんじゃないかと思うようになって。だから「箱庭の幸福」は、私が作品を見て感じた想いも込めた歌になっています。

──タイアップ曲への向き合い方も『Waver』を経て変化した。

そうですね。今までのタイアップ曲は「神の目線」で作品のことを歌うというアプローチをしていました。一方、『Waver』では自分の考えをとにかく曲に乗せていたんです。そのふたつが上手く融合すればよりよくなるんじゃないかと思い、今回はアプローチの仕方を変えました。これからのタイアップ曲でも、自分の感じたことを乗せつつ、作品のことを思って歌いたいですね。

──本日はありがとうございました。最後に、田所さんにとって2022年最初のリリースとなる本曲の推しポイントを改めて語ってください。

ここまで結構重たいことを言ってきましたが、この曲はジョンさんが避暑地で気持ちよく作ったというくらい、本当に耳心地が良くて素敵な曲です。曲を聞いてぜひ癒されて欲しいですね。2021年は、色々なことに挑戦できた年でした。その経験を活かしつつ、2022年はこれまで力を蓄えてきたことが報われるような、より実りのある一年にしたいですね。

●「箱庭の幸福」リリース情報

2022年1月5日デジタルリリース
作詞:大木貢祐
作曲・編曲:神田ジョン

田所あずさ(たどころあずさ)11月10日生まれ。茨城県出身。ホリプロインターナショナル所属。主な出演作は『半妖の夜叉姫』もろは役、『明日ちゃんのセーラー服』四条璃生奈役、『ウマ娘 プリティーダービー』シンボリルドルフ役ほか