多様な働き方が存在する現代では、「委託(いたく)」という言葉を目にする機会も多いのではないでしょうか。

本記事では、「委託」の意味や使い方を解説します。また、「委託販売」や「委託業務」など「委託」を使った言葉の意味や、「請負」や「委任」との違い、類語、対義語、英語表現も説明しますので、ぜひ目を通してください。

  • 「委託」とは?

    「委託」について解説する記事です

委託(いたく)とは

「委託」は「いたく」と読みます。ここでは、「委託」の意味について解説します。

「委託」の意味

「委託」を辞書で調べたときの意味をみてみましょう。「委託」は主に3つの意味を持つ言葉です。

1) 人に頼んで代わりにやってもらうこと。ゆだねること
2) 法律行為などの事務処理を他人に依頼すること
3) 顧客が証券取引所や商品取引所の取引員に注文を出すこと

「委託販売」とは

「委託」を使った言葉に「委託販売」があります。「委託販売」は、商品・サービスの所有権を保有している製造業者や商社が、販売業者に商品・サービスの販売を委託する販売方式です。

一般的に、期限を決めて販売業務を委託します。期限時には、売れ残った商品・サービスの返品、売上金の決済を行います。製造業者や商社は、販売業者に手数料を支払います。

「業務委託」とは

「委託」を使った言葉としてよく耳にするのは「業務委託」です。「業務委託」は、会社や組織が行っていた仕事を外部に委託することです。任された側は自分の責任と裁量で仕事を進めます。

また、個人が企業に労働契約以外の役務提供契約によって依頼され、自営業の形で業務を行い、報酬を得ることも「業務委託」にあたります。外注は「業務委託」に含まれますが、派遣労働者による業務は「業務委託」とはなりません。

「委託業務」とは

「業務委託」の言葉の前後を入れ替えた「委託業務」という言葉も存在します。「委託業務」は「業務委託」で依頼された業務内容のことです。「外部委託業務」と言われることもあります。

  • 「委託」とは?

    「委託」は「人に頼んで物事をやってもらうこと」という意味です

「業務委託」と「請負」「委任」の違い

「委託」や「業務委託」と同じくらい見聞きするのが、「請負(うけおい)」や「委任(いにん)」です。ここでは、「業務委託」と「請負」・「委任」の違いについて解説します。

「請負」の意味

「請負」にはふたつの意味があります。

1) 期限や報酬を決めた上で仕事を引き受けること。また、そのような仕事のこと
2) 請け合うこと。保証すること

「請負」は民法上で規定されている契約の一種です。「請負」で契約すると請負人は仕事を完成させる義務が生じます。未完成の場合、注文者は報酬を支払う義務がありません。

完成品に欠陥や不具合があれば請負人が責任を負担します。ただし、注文者は請負人に対する指揮命令権は持ちません。

「委任」の意味

「委任」にはふたつの意味があります。

1) 仕事などを他人に任せること。委託すること
2) 委任する側が相手に一定の事務処理を委託し、相手がこの事務処理を承諾することで成立する契約のこと

「委任」は民法上で規定されている契約です。受任者は善良なる管理者の注意義務に従って法律行為や事務処理を行う必要はありますが、完成義務は負担しません。また、委任した側は受任者に対して指揮命令権は持ちません。民法上の委任は無償が原則ですが、実際は有償で行われることが多いです。

■「準委任」の意味
「委任」という言葉が使われている「準委任」は、法律行為ではない事務処理を委託する契約のことです。「準委任」では、委任の規定が標準として適用されます。

「業務委託」は「請負」と「委任」の両方を含んでいる

「委託」は他人に仕事を依頼し行ってもらう意味を持つため、「請負」と「委任」の両方が含まれています。そのため、「業務委託」も両方の意味を持ち、契約の目的によって「請負」か「委任」かが決まります。

「請負契約」と「委任契約」の違い

「請負契約」と「委任契約」の違いをみてみましょう。

「請負契約」は、仕事の過程は加味されず、完成品について責任が生じる契約のことです。どのような過程で仕事を完成させるかは請け負った側が決められますが、必ず完成させなければなりません。「請負契約」は建築物の工事などでよくみる契約形態です。

「委任契約」は、善良なる管理者の注意義務が発生します。そのため、仕事の結果だけではなく過程において責任が生じます。「委任契約」される事柄としては、医師に対しての診療契約や弁護士への依頼契約などが挙げられます。

「請負契約」は完成品に対して、「委任契約」は物事の過程に責任を負うという点に違いがあることを覚えましょう。

  • 「業務委託」と「請負」・「委任」の違い

    「業務委託」は契約内容によって「請負」か「委任」かに分けられます

「委託」の使い方・例文

「委託」の使い方について、次の例文を参考にしてください。

・市役所は窓口業務を民間に委託してサービスの向上を図っています
・実店舗を持たないため、ハンドメイドのアクセサリーをあの店舗に委託販売している
・農家は育てた農産物の販売を農協に委託しています
・人件費が上昇した影響で、マンションの管理委託費が値上げされた
・以前実施したイベントの評判がよかったので、再度A社と業務委託契約を結ぶ

  • 「委託」の使い方・例文

    「委託」は日常生活において、さまざまな場面で登場する言葉です

「委託」の類語・言い換え

「委託」の類語を紹介します。「委託」は、使われるニュアンスによって言い換え表現も異なるので、それぞれ覚えておきましょう。

■仕事を他に任せる
委嘱(いしょく)、外注、負託(ふたく)、委任、付託(ふたく)、嘱託(そくたく・しょくたく)、依頼

■職務の権限を与える
嘱託、属託(そくたく・ぞくたく・しょくたく)、委任

■誰かの世話になる・保護される
託(たく)する、預ける、委(まか)す、委せる、任せる、信託

■信用または信頼する
信任、信用、信託、信頼、見込む、頼む、頼る、信憑(しんぴょう)、依頼、委任、任せる

「委託」の対義語

「委託」の対義語は「受託(じゅたく)」です。

「受託」は、頼まれて引き受けること。頼まれて物品や金銭を預かることを意味します。

  • 「委託」の類語・言い換え・対義語

    「委託」の類語・言い換えは会話や文章の内容によって変わります

「委託」の英語表現

「委託」の英語表現は次の英文を参考にしてください。

In order to conclude an outsourcing contract with Company A, a contract is to be prepared.
(A社と業務委託契約を結ぶため、契約書を作成する。)
I have to pay consignment sales commission to that store every month.
(私は毎月、あの店舗に委託販売手数料を支払わなければならない。)
Business outsourcing includes both contracting and delegation.
(業務委託は請負と委任の両方が含まれている。)

  • 「委託」の英語表現

    「委託」の英語表現を覚えて使いこなしてください

「委託」の意味を理解しておきましょう

「委託」には「人に頼んで代わりにやってもらうこと」、「法律行為などの事務処理を他人に依頼すること」、「取引所の取引員に顧客が注文を出すこと」という意味があります。

「委託」を使用した言葉である「委託販売」や「業務委託」、「委託業務」の意味もあわせて覚えておきましょう。

また、「業務委託」と同じくらい見聞きするのが「請負」と「委任」です。「請負」は完成品に対して責任を負うとことで、「委任」は物事の過程に責任が発生します。契約を結ぶ上で大切な要素となるので、違いをきちんと把握するといいでしょう。

「委託」の使い方や類語、対義語、英語表現も参考にして、「委託」の理解を深めてください。