――サブスク、YouTube、TikTokと様々なサービスが出てくる中で、テレビの音楽番組に求められることというのは、どのように考えてらっしゃいますか?

浜崎:去年は優里さんとか瑛人さんとか、TikTokから生まれるヒット曲が多かったですよね。DISH//さんの「猫」も発表されたのは数年前の曲だけど「THE FIRST TAKE」で改めて評価されるというのもあって、それはコロナ禍というみんなが家にいる時間が多くなる中で、インターネットで音楽に没入できる時間があったからなのかなと思ったんです。先ほども話になりましたが、これからテレビ局はそういういろんな場所でヒットの火種みたいなものが生まれたときに、ブースト(=増幅)をかけるというか、もっと広い世代に知ってもらうお手伝いをする役割になっていくのかなと思います。

木月:そうですね。ブーストする力はまだ相当あると思うんですよね。なかなかネットで音楽を聴こうとしない人に対しては特にそうですし、年配の方で音楽好きの方もいっぱいいるでしょうしね。利根川さんはいかがですか?

利根川:浜崎さんのおっしゃる通りだと思います。結構みんな考えてることは一緒なんですよね。だから、今回お話ししても、基本的にほとんど同じようなマインドだなと思いました。それに加えて、少し答えとしてはズレるかもしれないんですけど、各局各番組のオリジナリティーがすごく大事なんだろうなと思うんです。浜崎さんが前回「埋もれてしまう」という表現をしましたけど、“音楽番組”と何となく全部ひとくくりにされるのは悲しいことで、『Mステ』『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』っていうそれぞれのイメージがちゃんとあるようになれたらいいなと思うんですよね。最近、同じアーティストが同じ時期に同じ曲で年末の音楽特番にひと通り出ることが多くて、どうしても、この番組には出て、あの番組には出ないとなると角が立つとか、そういうことをすごく気にされるんですけど、こっちとしては「その角を立てていきましょうよ」と。もちろん、うちに出てくれたらありがたいですけど、「フジテレビさんからは何年も前からオファーを頂いてるので出ようと思うんですけど、Mステさんは半年前からですよね。だから、そちらにも出るのは難しいです」って言われたら文句言わないです。それぞれの番組の関係性でそういうことが起きた結果、「今年の『FNS』にはああいう人が出て、『Mステ SUPER LIVE』にはこういう人が出る」っていう感じで自動的に色分けされて、両方見たくなると思うんですよね。僕としては『FNS』見ないで『Mステ』見てくださいなんて思ってなくて、『紅白』も楽しみだし、音楽番組を全部見てほしいんです。そのときに、どれを見ても一緒だったら視聴者の皆さんはきっと残念だと思うので、それぞれがそれぞれの進化をして、「これも見なきゃ、あれも見なきゃ」というふうになることが大事かなと思います。

木月:『Mステ』さんならではの関係性で出てくれるアーティストさんって、やっぱり多いんですか?

利根川:ありがたいことにそういう方もいらっしゃいます。歴史がある番組なので「『Mステ』に出ることが1つの目標です」と言ってくださるアーティストもいらっしゃるし、『Mステ』をきっかけにブレイクできたと思ってくださる方もいたりします。それと、うちは山本たかお(エグゼクティブプロデューサー)というボスが、昔からライブハウスに足を運んで、そこに出てるアーティストに「いつかMステ出てくださいね」という向き合いを何十年もやってきてるからこその関係も大きいですね。ただ番組が長い間あるというよりは、ちゃんと下支えしてる動きもあるので、そういうのを間近で見ていると、自分もそうあるべきだなと思います。

木月:山本たかおさんは、よくライブなどでお見かけします。

利根川:アーティスト愛が強くて音楽愛があるので、アーティストからも信頼感が強いですよね。

木月:うちには石田(弘エグゼクティブプロデューサー)さんがいらっしゃいますね。

浜崎:そうですね。そういう音楽愛のあるレジェンドプロデューサーという存在は、やっぱり大事だなと思いますね。

■総勢67組がイブを彩る『Mステ ウルトラ SUPER LIVE 2021』

――12月24日(17:00~)には『ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2021』が放送されますが、今年の見どころはいかがでしょうか?

6時間超の放送で、桑田佳祐さん、YOASOBIさん、星野源さん、NiziUさん、LiSAさん、ジャニーズ13グループなど、総勢67組のアーティストがイブを彩ります。 35周年メドレーでは松平健さんが42人のダンサーと「マツケンサンバII」、サブスクメドレーでは優里さんやAwesome City Clubさんがヒット曲を披露、クリスマスメドレーではゴスペラーズさんやLittle Glee Monsterさんなど、豪華アーティストたちが名曲クリスマスソングをカバーします。

クリスマスイブの『SUPER LIVE』は11年ぶりとなるので、大型歌番組が乱立する中で埋もれないために、“サンタタモリ”のビジュアルにも注目してください。

  • 『ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2021』(テレビ朝日系、12月24日17:00~) (C)テレビ朝日

次回予告…~東京芸人を知る裏方編~

●利根川広毅
1977年生まれ、千葉県出身。千葉商科大学卒業後、制作会社を経て、フリーランスとして『Music Lovers』(日本テレビ)、『グラミー賞授賞式』(WOWOW)などを演出。13年に日本テレビ放送網へ入社し、『LIVE MONSTER』『バズリズム』『THE MUSIC DAY』『ベストアーティスト』などを担当。18年にテレビ朝日へ入社し、現在は『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』『イグナッツ!!』のプロデューサーを務める。

●浜崎綾
1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『新堂本兄弟』『FACTORY』『僕らの音楽』『ピカルの定理』『水曜歌謡祭』などを担当し、現在は『FNS歌謡祭』『MUSIC FAIR』『KinKi Kidsのブンブブーン』『オダイバ!!超次元音楽祭』で総合演出・演出・プロデューサーなどを務める。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『バチくるオードリー』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。