女優の大島優子が、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、渋沢栄一(吉沢亮)の後妻・兼子(かねこ)を好演している。栄一を含め渋沢家の人たちになかなか受け入れられず苦悩するも、それを乗り越え、妻としてしっかりと栄一を支えていく兼子。制作統括の菓子浩プロデューサーに、難しい役どころに大島を起用した理由や、実際の演技を見て感じた女優としての凄みを語ってもらった。

  • 『青天を衝け』喜作役の高良健吾、兼子役の大島優子、栄一役の吉沢亮(左から)

■難しい役どころに大島優子「胃が痛くなるくらいプレッシャー感じた」

豪商・伊藤八兵衛の娘である兼子は、明治維新後に家が没落したため、妹たちを養うべく芸者の道へ。そして、栄一の先妻・千代(橋本愛)の亡きあと、やす(木村佳乃)の紹介で栄一と結婚した。

千代の死後すぐの再婚に子供たちは戸惑い、栄一も千代を忘れることができず、兼子は耐えられず離縁を申し出るも、栄一から「許してくれ。これからは俺をもっと叱ってくれ! 時には今のように『捨ててやるぞ! このへっぽこ野郎!』と罵ってくれ!」などと懇願されると、「わかりました」と受け入れた。その後、栄一が仕事の話をしているときに素朴な疑問をぶつけたり、徳川慶喜(草なぎ剛)とのやりとりで落ち着いた振る舞いを見せたり、自分の意見も言える凛とした素敵な女性として描かれている。

第34回で初登場し、第37回から本格的に登場。終盤からの参戦に、大島は「残り少ない回数という重要なラストスパートの時期だと知った時、胃が痛くなるくらい、かなりのプレッシャーを感じました。うれしさ半分、急に怖さもあふれ出た感じでした」と吐露しつつ、「兼子はもともと没落した家を自分が盛り立てていくんだという強い意志を持っていた女性なので、栄一に対しても、面と向かって自分の考えを伝えようとしたのだと思います。きっと渋沢家に入った時も、家族に馴染めず、居場所がなく、心が折れていたとは思いますが、そのなかでも自分から家族として馴染んでいこうと努力をしていったのではないかと思います」と、兼子像をしっかりつかんでいた。

また、「栄一は何度も千代のことを思い出すんです。その姿を見て、兼子はすごく寂しい思いをしますが、逆に言えば、それぐらい栄一が千代のことを大事にしていたことにも気づき、その思い出も大切にする栄一を、兼子は素晴らしいと受け止めていきます。そんな栄一の思いを大事にしてあげようと思える兼子は、すごく強い人というか、懐が深い人だなと。すべてをまるっと包み込むような素敵な女性だなと思いました」とリスペクトしていた。

■「大島さんだったらスッと入ってこられるのでは…」起用理由も明かす

制作統括の菓子浩プロデューサーも、兼子役は「とても難しい」と感じていたようで、その難しい役どころを大島に託した理由について、「ドラマ上、ずっと栄一と千代との愛情を描いてきて、千代が亡くなったらすぐに兼子と再婚する。とてもアウェイな状況ですが、大島さんだったらスッと入ってこられるのではないかと思いました」と明かす。

そして、「実際、撮影したものを見ても、兼子はすごく芯のある女性ですし、栄一にもちゃんと物を言うし、それでいて、栄一に千代を忘れてくれと言うのではなく、千代の面影とともにいる栄一に兼子が寄り添っている」と絶妙な兼子になっているようで、「大島さんには申し訳ないなと思ったのですが、実年齢より上のシーンの方が多くて、どんどん老けていかなければいけない。特殊メイクを多用しているわけではないんですけど、すごく自然にドラマの中で年を重ねられていて、本当に上手な方だなと思いました。まったく違和感なく年を取られていきます。すごいですね」と演技力を絶賛。

さらに、「自分が自分がということでもなく、ドラマの役柄としての自分のポジションをすごく的確に捉えていらっしゃって、その中で演出の要求に応え、ほかのキャストたちとのチームワークも築かれている。終盤からポンとその座組に入られたのに、とてもうまくやっていらしてすごいなと思いました」と感心していた。

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