伊藤園は、「第5回 伊藤園健康フォーラム」を12月10日、同社公式YouTubeにて開催した。「感染症時代のストレス対処術と"茶の効用"」をテーマに、専門家による基調講演やパネルディスカッションを実施。本稿ではその様子をレポートする。

新型コロナウイルスに対する茶カテキンの作用は?

冒頭で、伊藤園中央研究所 所長の衣笠仁氏より挨拶が行われた。「コロナ禍では体調を崩す方が多くなっていますが、うつ病などメンタルヘルスの悪化も年代問わず課題になっています。今回の健康フォーラムでは、現状の把握や、お茶がどう役に立つのか、有識者の先生と考えていきたいと思います。健康フォーラムで皆様の健康の質が向上すれば幸いです」と当フォーラムの意義を述べた。

  • 伊藤園中央研究所 所長の衣笠仁氏

基調講演では、奥羽大学 歯学部 教授 山田 嘉重氏がオンラインで登壇した。テーマは「新型コロナウイルスに対する茶カテキンの作用機序」だ。

ストレスが増えると様々な全身的な症状が出てくるが、山田氏の専門分野である口腔内においても、免疫力の低下で歯周病が進行・増悪したり、粘り気のある唾が増えて食べ物が溜まりやすくなることで虫歯のリスクも高まるそうだ。そのため歯医者で歯の清掃をしたり、自分で歯を磨くことが重要になるが、その際にカテキンの活用が有用だという。

  • 奥羽大学 歯学部 教授 山田 嘉重氏

「カテキンを使用することで歯周病の予防や、洗口による歯垢の付着の抑制、虫歯菌に対する殺菌効果が期待できます。検証したところ10%カテキン濃度で1時間、20%濃度で20分間、30%濃度で10分間の処理で殺菌が確認されました。カテキンの使用は口腔内の健康維持において効果的な手法と言えます」

茶カテキンには殺菌作用、抗炎症作用様々な作用があるが、今回の講演では「抗ウイルス作用」に注目した発表も行われた。

「緑茶による新型コロナウイルス感染活性抑制効果として、細胞侵入を抑制する作用が挙げられます。カテキンがウイルスのスパイクタンパクに結合することで、ウイルスの侵入経路である受容体との結合を阻害します。検証を行った際、カテキンの1種であるEGCG(エピガロカテキンガレート)や天然カテキンの混合、粉末茶などどの状態のカテキンでも濃度依存的に結合の抑制効果があることが分かりました」と山田氏。また、カテキンがウイルスタンパクの合成を阻害する「複製過程抑制作用」があることの報告や、抗炎症作用に関しても言及した。

感染症時代のストレス対処術と"茶の効用"

後半は「感染症時代のストレス対処術と“茶の効用”」というテーマでパネルディスカッションも行われた。

パネリストは奥羽大学 歯学部 教授の山田嘉重氏、東京家政学院大学 人間栄養学部 教授の海野知紀氏、徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 准教授の山本哲也氏、医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック 名誉院長の今野裕之氏、伊藤園中央研究所 副所長の瀧原孝宣氏。モデレーターは三菱総合研究所 キャリア・イノベーション本部 主席研究員の奥村隆一氏が務めた。

  • 左から、モデレーターの三菱総合研究所 奥村隆一氏、パネリストの奥羽大学 山田嘉重教授、東京家政学院大学 海野知紀教授、徳島大学大学院 山本哲也准教授、医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック 今野裕之名誉院長、伊藤園中央研究所 瀧原孝宣副所長

まず、コロナ禍での健康課題についての洗い出しが行われた。山田氏は「マスクで口のなかが渇きやすい状態であること、ストレスで甘いものや食事を多く食べることで虫歯や酸蝕歯になりやすいことを懸念しています」と口腔内の環境悪化を、山本氏は「コロナ禍の影響で人との交流が減少し、また孤独感が増大しています」と踏まえたうえで、若年層のメンタルの悪化を課題に感じているという。海野氏はコロナ太りについて、瀧原氏はコミュニケーション減少による高齢者の方々へのメンタルヘルスの影響を挙げた。

このように複数の健康課題が挙げられるが、なかでもストレスを課題と感じるパネリストは多い様子。ストレスを感じた時に意識したいことや、お茶をどのように活かせばよいかの意見が交わされた。

山本氏は、仕事やお金など環境的要因に起因するメンタルヘルスの対処は、支援機関やサポートの制度を活用すること、また個人要因としては『今の現状を理解して、自分が今できることは何か』を考えることが重要と述べた。「少しずつでもできないことができるようになるのは楽しいですし、生活にハリがでます。また3食食べてお風呂に入る、テレワークでオンオフを付ける、睡眠習慣をつけるなど、生活リズムを作ることも大切ですね」とコメントを寄せた。

今野氏は「できるだけ頭を休める時間を作りましょう」とアドバイス。例えばスマホやパソコンを使う時間を制限したり、自分に合ったリラクゼーションの方法を見つけることも良いという。「意識を集中する瞑想、マインドフルネスも効果的です。丁寧にお茶を入れるという一連の流れも、集中することで瞑想のような効果が期待できるでしょう。またお茶にはテアニンというリラックス効果のある成分も含まれます」

海野氏は「お茶に含まれるカテキンには抑うつ症状を改善するという報告もあるので注目したいですね。また少量のカフェインと摂取したり、フラクトオリゴ糖と一緒に摂ることでカテキンの吸収が上がるなど、効果的な組み合わせもあるようです」と食の面からストレスを緩和するアドバイスも行った。

最後に「感染症時代のストレス対処術と茶の効用」として、3つの項目がまとめられた。ひとつめは「口は命の入り口、心の出口」として口腔ケアは健康維持の基本であること。ふたつめは、生活習慣を作る「朝に日光と一杯のお茶で体内リズムを整える」、3つめが「心の健康にお茶を。自分のために、誰かと一緒に」とコミュニケーションに関連する内容だ。

瀧原氏は、「お茶の効果はコミュニケーションの場所にも活かせると考えています。誰かと飲みたい、美味しく飲みたいという想像をしながらお茶を入れる、そういう機会がコミュニケーションを深めるきっかけになるのではないかと期待しています。お茶を"コミュニケーション飲料"という位置づけで考えて、その価値を伝えていきたいですね」と締めくくった。