――2020年に復帰されたあと、現場に臨む上で心がけていることはありますか? 最近はいい感じで少し肩の力が抜けたような印象も受けますが。

今でも初めての現場への怖さはありますし、いまだに朝から緊張することのほうが多いです。でも、そんな時にはそのマインドにあまり逆らうことなく、自分と上手く付き合っていければいいのかなとも思います。やはり年齢や体力など関係なく、自分が表現者として必要とされる以上は、経験を重ねていくしかないので。それに、その当時は悩んでいたことが、のちに全く違う作品で「ああ、あの時はこうだったのか」と気づくこともあります。

――神尾楓珠さんの主演映画『彼女が好きなものは』(公開中)では、神尾さんの恋人で同性愛者の役柄を演じられました。神尾さんは、今井さんの包容力にとても助けられたと舞台挨拶で語っていました。

いえいえ。楓珠くんこそ堂々としていた感じでした。あれは、壁だと言われていたものが壁ではないということに気づく作品で、僕自身もそういう役柄を演じるのは初めてで緊張しました。共演してみて、楓珠くんはすごく純粋で真面目な人だなと感じましたが、僕自身もそういうタイプの人が魅力的だと思います。

■なるべく遠くを見ず、1つずつ

――40歳になられて、役者としての心境の変化や、見えてきた景色の違いなどはありますか?

年齢と共に演じる役も変わってきたし、もちろん得意、不得意な表現というのはあります。逆に言えば、そういう手応えのようなものはまだ見つからないというか、常にチャレンジだなと思って取り組んでいる感じです。もちろん自分を褒めてあげることも大事ですが、満足したらつまらないような気もしています。

また、当たり前の話ですが、良い作品に出会えた喜びや充実感は、その仕事をやってからじゃないと味わえないですよね。もっと言えば、全てをやり遂げたあとの解放感や清々しさは、終わった翌日のたった1日しか感じられないです。だから、その達成感を得るために、毎回1つずつ課題を乗り越えていかなければいけないので、なるべく遠くを見ず、1つずつ積みあげていければいいなと思っています。

●今井翼
1981年10月17日生まれ、神奈川県出身。95年より歌手、俳優、タレントとしてテレビや舞台など多彩なジャンルで活躍。約1年半の休業期間を経て、20年2月に活動を再開。システィーナ歌舞伎『NOBUNAGA』、ミュージカル『ゴヤ-GOYA-』、大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)、ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ)などに出演。

衣装:BerBerJin
スタイリスト:渡邊奈央(Creative GUILD)