14歳より芸能界をひた走ってきた今井翼。2018年から1年半の活動休止を経て、昨年復帰して以降は、舞台、映画、ドラマなどで、俳優としての存在感を発揮してきた。今年で40歳という節目を迎えた今井は「立ち止まったからこそ、見えてきたものがある」と穏やかな表情を見せる。

そんな今井が、自由に休暇を過ごすというドキュメンタリー『#休暇今井』が、フジテレビの動画配信サービス・FODで、7日からスタート(全6話、毎週火曜0時最新話配信)。無防備な表情で様々な本音を語ったプライベートの今井が切り取られているが、彼は40代を迎えた今、どこに向かおうとしているのか――。

  • 『#休暇今井』に出演する今井翼

    『#休暇今井』に出演する今井翼

■故郷・藤沢で初めてキャンプ

――撮影は30代最後の年となりましたが、今回ご自身のライフヒストリーとなるドキュメンタリーに参加されたきっかけから聞かせてください。

僕はこれまでこういったプライベートな時間を出すようなことをしてこなかったし、30代最後の年なので、会いたい人に会いに行ったり、故郷に帰ったりすることで、まさに素の僕を楽しんでいただけたらと思い、参加させてもらいました。それは、自分を見つめ直し、発見する時間にもなりました。

――1話で、元プロ野球選手の川崎(※正しくは「立つ崎」)宗則選手と対談されてみていかがでしたか?

僕はすごく野球が好きなので、いくつになっても野球選手に会えることにはとてもワクワクしました。川崎選手はプレーはもちろん、人を惹きつける人柄にすごく興味がありました。また、僕と同世代ですが、今はBCリーグで親子ぐらい年齢差がある年下の選手たちと一緒に野球をされています。そこに、野球が好きだという純粋な気持ちを感じ、大いに共感できました。また、僕自身は仕事を通じて、人に喜んでもらえることが、表現者としても一番の喜びだと感じていますが、川崎選手とお話をしていても、同じような思いを感じました。

――川崎選手とキャッチボールをする時のはじけるような笑顔も印象的でした。

一流の野球選手とキャッチボールができるということで、変に力んでしまったところはありましたが、川崎選手が「ナイスボール!」と言ってほめてくださったので、そこはまさに野球少年の気持ちに戻ったような時間でした。

――故郷の藤沢に戻り、通学路を歩いて母校の小学校を訪問されたり、キャンプで料理をしたりするフラットな表情もいい感じでした。

地元の藤沢には、たまに車で帰ったりしますが、自分自身の原点となる街なので、海を眺め、通学路を歩いてみると、いろいろなものがよみがえりました。また、今回初めてキャンプをやってみて、結構楽しいなと思いました。家で作る料理じゃないので、勝手が違ったりしましたが、スーパーで食材を調達し、作りながらメニューをアレンジしたりして、初めてなことも多くて面白かったです。

――フラメンコの師匠である佐藤浩希さんと自宅で飲む回では、フラメンコについての熱い情熱も伝わってきました。フラメンコを始められたきっかけは、自分をさらけ出せるダンスという点に惹かれたからだとか。

そうですね。僕たちは、常に頂く楽曲や台本がある中で自分を表現する。俳優業であれば1つの人格を作って作品に参加するという形ですが、フラメンコというのは、自分自身を解放する表現になるので、そこに惹かれました。それは音楽に合わせるクラシックバレエとも真逆な気がしていて、その人の生きてきた道そのものが見える気がします。僕はそこからのめり込んで15年続けてきましたが、フラメンコにも俳優と同じように年輪と経験が出るだろうし、これから熟成していくであろう魅力をすごく感じています。

■「俳優としての自覚が芽生えた」山田洋次監督との出会い

――続いて、山田洋次監督との対談も非常に味わい深かったですが、やはり山田監督は今井さんにとって特別な存在ですか?

30代の時に山田洋次監督と出会えたことで、僕は初めて俳優としての自覚が芽生えたので、いわば恩師です。手とり足とりといろんなことを教えていただきました。現場に入ると、愛ある厳しさを感じますが、プライベートでお話をさせてもらっても、得られるものは多いです。今回は俳優が芝居をする上で、何を大事にすべきかということを改めてお聞きできて、とても温かい時間が過ごせたと思います。

――山田監督が今井さんについて「こざかしい芝居をしないところがいい。不器用であってほしい」と言われていましたが、その言葉をどんなふうに受け止めましたか?

そうですね。俳優はストーリー全体を頭に入れた上で、1つ1つのシーンを演じます。お芝居というのは、言ってしまえばあくまでもウソの世界ですが、それを見る人は日常の世界の続きであってほしいというか、その世界を楽しんでもらい、自己投影してもらえるのがベストなのかなと。山田監督が僕について、あまり余計なことをしないでやった方がいいと言ってくださったので、そこは自分の中でも大切にしていこうと思いました。

――それは役者さんからすれば、逆に難しくはないですか?

確かにそうです。ただ、確かにお芝居って、シンプルな方が伝わる気がします。もちろんディレクターさんによっては、もっと細かく演じてほしいといった演出は入るし、作品によっても違いはあります。でも、僕自身は山田監督と出会ってから、狙った芝居はあくまでも自己満足になってしまうのかなと、思うようになりました。

――そこでの気付きは役者として大きかったですか?

人それぞれだとは思いますが、特に僕は俳優としてまだまだ積まなければいけない経験や課題がたくさんあります。ひとつの発見をくださったことは、本当にありがたいですね。