「泡沫の夢と消える」「泡沫の恋」などというフレーズを、聞いたことがある方もいるでしょう。この「泡沫」とはどういう意味なのでしょうか。

本記事では泡沫の読み方や意味、泡沫キャップや泡沫候補などの泡沫を含む言葉などもご紹介。泡沫という言葉への理解を深めてください。

  • 泡沫の意味

    「泡沫」について解説します

泡沫とは? 意味や読み方を解説

まず泡沫の読み方や意味などを見ていきます。

泡沫の読み方

「ほうまつ」または「うたかた」と読みます。泡沫をそのまま音読みすると「ほうまつ」ですが、古い日本の言葉にある「うたかた」と読む場合もあります。

泡沫の意味

「ほうまつ」と読む場合も「うたかた」と読む場合も、どちらも意味は「泡、あぶく」です。泡やあぶくはすぐに消えてしまうことから、「はかないもの、すぐに消えてしまうもの」を指す言葉としても使われます。

「はかない」という言葉を確認すると、「束の間であっけない、むなしく消えていくさま」という意味があります。不確かでつかみどころのないものを指します。

泡沫の「沫」は「あわ」とも読み、「飛び散る水の粒、しぶき、水のあわ」といった意味があります。常用外の漢字だからといって、「沫」を「末」などと表記するのは誤りです。泡沫と書きましょう。この「沫」を含む言葉にはほかにも「飛沫(しぶき)」があります。

  • 泡沫の意味

    泡沫とは泡のことで、「はかないもの」という意味があります

泡沫の由来

古くから日本には、水の泡を意味する「うたかた」という言葉がありました。これは「浮玉形(うくたまかた)」や「空形(うつかた)」、「浮きて得難(えがた)きもの」などの言葉から変化した、という説があります。

一方、中国には泡を意味する「泡沫」という言葉がありました。どちらも泡を意味することから、「泡沫=うたかた」と当てはめて読むようになったとも言われています。このような読み方を熟字訓と言います。

「うたかた」は熟字訓

「泡沫=うたかた」のように、漢字2字以上をまとめて訓読みにすることを熟字訓と呼びます。熟字訓の例には、以下のようなものがあります。

・昨日(きのう)
・大人(おとな)
・五月雨(さみだれ)
・紅葉(もみじ) など

  • 泡沫の読み方

    泡沫は「ほうまつ」や「うたかた」と読みます

泡沫を含む言葉

泡沫はどのように使われているのか、代表的な言い回しや言葉を見ていきます。

泡沫政党

「ほうまつせいとう」と読みます。国会議員が存在しないほどの、ごく規模の小さな政党のことを指しています。

泡沫の夢

「泡沫の夢」は「うたかたのゆめ」と読みます。夢を、すぐに消えてしまうほどのはかないものに例えた表現です。

・例文
「私の世界一周旅行の計画は、泡沫の夢と消えてしまった」

泡沫夢幻

「ほうまつむげん」と読みます。夢とまぼろしの「夢幻」と連ねることで、はかなさを表現しています。「泡沫夢幻の世の中」などと使います。

泡沫候補

「ほうまつこうほ」と読みます。選挙に立候補はしているものの、当選する確率がごく低い候補者のことを指しています。

泡沫キャップ

熟語ではありませんが、「泡沫(ほうまつ)キャップ」というものもあります。蛇口の先端に取り付ける部品のことで、フィルターで水の中の汚れを取り除いたり、細かい穴で水流を整えたりする役割があります。

  • 泡沫の類義語

    泡沫を含む言葉を確認しましょう

泡沫の類語

泡沫という言葉の意味や使い方を確認したところで、次に類語を見ていきましょう。

水泡

「すいほう」と読みます。文字通り、「水のあわ」という意味です。泡沫と同じように、「はかないもの」という意味もあります。「水泡に帰す」という表現もあり、これは「努力が報われることなくムダに終わる」という意味を指します。

・例文
「私のミスによって、これまでの苦労が水泡に帰してしまった」

「つゆ」と読みます。水滴のことを指しますが、この露も同じく「はかないこと」を指します。ほかにも「ほんのわずかなさま」という意味もあります。

夢幻泡影

「むげんほうよう」と読みます。仏教用語で、「夢、幻、泡」というはかないものを並べることで、人生のはかなさを表現しています。

仮初め

「かりそ(め)」と読みます。一時的なことを指す言葉です。「仮初めの恋」などと表現することがあります。ほかにも「いいかげんなさま」を指し、「上司の忠告を仮初めにしてはならない」などと使います。「仮初」と書くこともあります。

  • 泡沫の対義語

    「仮初め」も泡沫の類語です

泡沫の対義語

泡沫の対義語として、「一瞬でなく長く続くさま」を指す言葉があります。いくつか見ていきましょう。

永久

「えいきゅう」と読みます。途切れることなく、果てしなく続くことを指し、「とわ」と読むこともあります。同じ意味の言葉に「永遠」があります。

永続

「えいぞく」と読みます。長続きすることを指します。

不滅

「ふめつ」と読みます。滅びないこと、ずっとなくならないことを指します。不滅であることをより一層強調する「永久不滅」という四字熟語もあります。

有力

「ゆうりょく」と読みます。勢力や威力があることを指す言葉ですが、ほかにも、可能性が強いさまや見込みのあるさまという意味もあり、泡沫の対義語と言えるでしょう。

選挙で当選確率の低い候補を「泡沫候補」というと前述しましたが、反対に当選確率の高い候補は「有力候補」と言います。

  • 泡沫の使い方

    対義語を知ることで、泡沫への理解を深めましょう

泡沫の英語表現

泡沫を英語でいうと、「foam」「bubbles」などが挙げられます。「foam」は「a bubble」の集合体を意味しています。この言葉自体にはかなさのニュアンスはありませんが、以下のようにして表現することができます。

・例文
「All his dream burst like bubbles.」(すべては泡沫の夢と消えてしまった)

なお、「はかない、むなしい」を意味する英語には以下のようなものがあります。

・empty
・fleeting
・fragile

また「泡沫の恋」は「a short-lived love」などと表現されます。

泡沫の意味や読み方、類語の泡沫政党などを知っておこう

泡沫は、中国の言葉に、古くから日本にある「うたかた」という読み方を当てはめた熟字訓です。「泡」も「沫」も「あわ」と読むことから、泡沫は「泡、あぶく」のことを指しますが、「すぐに消えてしまうようなはなかいさま」も表現しています。この機会に類語や対義語なども併せて覚えて、ボキャブラリーを増やしましょう。