JR東海は3日、新形式の在来線通勤型電車315系の報道公開を実施した。中央本線の中津川~名古屋間で2022年3月5日から運転開始し、2023年度中に同区間の車両(特急列車は除く)を315系に統一する。報道公開では、置換え予定の211系と並んで展示された。
新型車両315系のエクステリアデザインは、長く親しまれているコーポレートカラーのオレンジを配色しつつ、在来線通勤型電車の新しい顔として、「直線を使用した幾何学的な形状」「横長に連続した前面表示窓」「排障機能を向上させたスカート形状」を採用し、「先進性×親近感」を表現。標識灯は長寿命かつ省電力のLED灯を使用している。
インテリアデザインのコンセプトは「優しく安心感のある快適な移動空間」。車内はオールロングシートで、1人あたりの座席幅は46cmとなり、既存の211系(5000番台)と比べて1cm拡大している。背もたれに窪みを設け、色の濃淡を付けて座席スペースを明確にしたほか、腰への負担が少ない理想的な姿勢をサポートする座席形状とし、座り心地が向上しているという。座席端部の袖仕切りは大型化され、上部に透明ガラスを採用。天井を高くし、床面の色を中から外に向かって色を濃くするグラデーションとすることで、開放感のある車内空間を演出している。車内の窓はカーテンなしとする一方で、赤外線・紫外線を99%カットする遮熱・遮光ガラスが導入された。
快適な移動空間を提供すべく、冷房能力が211系と比べて約3割向上。国内初導入というAIによる自動学習・制御最適化機能により、315系全車両の温度・湿度・乗車率等の車上データが地上のサーバへ送られ、サーバ内のAIによって最適化された冷房制御を実現するという。冷房装置の動作状態を車両から車両基地等へ常時送信し、故障の予兆段階で迅速なメンテナンスを行うことで、故障を未然に防止することも可能になる。
バリアフリー設備の充実も図り、全車両に車いすスペース、全編成に車いす対応トイレを設置。優先席は床面等を色分けし、車いすスペースの床面表示を行うことで、それぞれのスペースをわかりやすく案内する。車両の床面高さを低くし、乗降口の車両端部を傾斜させることで、車両・ホーム間の段差縮小も実現(段差縮小幅は約5cm)。ドア上の車内表示器はカラーユニバーサルデザインに対応したフルカラー液晶ディスプレイとし、運行情報や駅の階段位置など視覚的に表示できるようにした。
セキュリティ強化のため、車内防犯カメラを1両につき5カ所、非常通話装置を1両につき3カ所設置。ATS-PTや電力変換装置といった主要機器を二重系化して信頼性を向上させ、車両・地上間のデータ通信装置の導入、台車等の振動状態を常時監視する振動検知装置の導入により、異常発生の抑制や迅速な検知を実現する。非常走行用蓄電装置は2022年夏以降に順次搭載予定。これにより、停電時等でも最寄り駅まで走行可能になる。
台車は一体成型による台車枠とタンデム式軸箱支持構造を採用しており、JR東海の次期特急車両HC85系と同じ台車構造とのこと。制御方式はVVVFインバータ制御。モーターを駆動する電力変換装置にSiC素子を導入するなど省エネルギー化を図り、消費電力量を211系と比べて約35%低減している。315系の最高速度は130km/hとなる。
315系は2021~2025年度に計352両を新製する計画で、日本車両が製造を担当。2021年度に56両(7編成)、2022年度に56両(8編成)、2023年度に120両(20編成)、2024年度に64両(16編成)、2025年度に56両(14編成)を投入予定とのこと。315系の新製投入により、国鉄末期からJR発足初期に製造された211系(1986~1990年新製、計250両)をはじめ、213系(1988~1990年新製、計28両)、311系(1989~1990年新製、計60両)を置き換えていく。このうち国鉄から継承した211系(計8両)は2022年3月中に引退する予定。JR東海保有の全車両が同社発足以降に新製した車両となる。