昨年に引き続き新型コロナウイルスによる経済への影響が続く中、2021年は日経平均株価がバブル期以来の高値を更新する歴史的な1年となりました。一方で国内における新型コロナの流行や、首相交代などの出来事の度に、株価は大きく変動しました。

今回は2021年が終わりを迎えるこのタイミングで、一足先にこの1年の株価の値動きを振り返り、年末にかけての投資のヒントを見ていきたいと思います。

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【2021年前半】バブル以来! 30年ぶりの高値を更新

まずはバブル以来の高値を回復した前半の値動きを見ていきましょう。2021年の日経平均は27,575.57円でスタート。2020年末の上昇の勢いを受け、3万円台の回復への期待感が高い中での始まりとなりました。

その後、新型コロナワクチン接種の推進を背景とする世界的な経済回復期待や、日本国内における新型コロナ感染者数も1月前半をピークに下落傾向にあったこともあり株価は上昇基調に。2月15日に終値で3万円台を突破、翌2月16日には更に上昇し、バブル以来となる実に30年半ぶりの高値をつける歴史的な滑り出しとなりました。

コロナ禍という未曽有な事態にもかかわらず、危機の下支えのための世界的な金融緩和が後押しし、日経平均はあのバブル以来の水準まで上昇したのです。

  • 11月26日の終値時点の日経平均株価チャート(出所)STREAMより引用

しかし3万円台を回復した後は、不安定な値動きとなります。特に影響を与えたのは、3月下旬に発表された日銀による市場連動型ETFの買い入れ指針の変更です。日銀が行っている、株価指数下落時に買い入れる市場連動型ETFのうち、日経平均に連動するものを除外し、TOPIX連動型のみとする方針を決めたのです。

これにより、ユニクロを展開するファーストリテイリングなど、日経平均の構成比率が高い銘柄を中心に売りが加速し、日経平均は下落しました。3月以降、新型コロナの動向などから日経平均は下落基調が続きますが、この金融政策の変更による影響も大きかったと考えられます。

  • バブル以来の高値を付けた2月中旬以降は大きな下落も目立った(出所)株価情報を基に筆者作成

【2021年夏】新型コロナの感染状況により弱含み、今後も注目か

日本をはじめ世界の株式市場は、経済大国アメリカの影響を受けやすい傾向にありますが、今年は国内の動向によっても大きく株価が変動した1年だったように思います。

その一つはやはり国内の新型コロナ動向です。昨年末から年始にかけての第3波に続き、4月後半から5月にかけての第4波、そして8月にかけて過去最大の流行となった第5波と今年に入っても大きな感染の波が形成されました。

感染拡大に伴い経済回復の遅れが懸念され、4月後半そして7月後半から8月後半にかけては、新型コロナのニュースフローを受けて日経平均も弱含みとなりました。

新型コロナの感染拡大による行動抑制は国内経済の停滞と直結します。実際、11月15日に発表された国内の実質GDP成長率は年率ベースでマイナス3.0%と2期ぶりのマイナス成長となりました。10月以降は感染状況が落ち着いていることもあり、経済の回復も見て取れていますが、経済動向そしてマーケットの動きを見ていく上で新型コロナ動向はまだ重要なカギを握っていると言えるでしょう。

【2021年秋】首相交代により大変動

そして秋になると、国内政治動向を背景として相場は上下に大きく変動しました。8月後半にかけての株式市場は、夏場の新型コロナ対策への不満から内閣支持率が停滞し、政治の先行き不透明感から株価も下落基調でした。

ところが、衆議院総選挙並びに自民党総裁選挙を控える中で、継続が予想されていた当時の菅首相が9月の自民党総裁選に出馬しないこと発表し、相場は急反動します。首相が交代することにより、新たな経済政策や財政出動への期待感が高まったのです。これにより日経平均は8月30日から9月8日まで8連騰となり、4月以来の3万円台を回復。その期間での上げ幅は約2,500円となりました。

しかし9月末の自民党総裁選の結果を受け、再度相場は下落となりました。9月29日に行われた自民党総裁選では、河野太郎氏と岸田文雄氏の決選投票となり、岸田文雄氏が勝利し、首相の座を勝ち取りました。市場としては、政策の真新しさが期待されていた中で派閥の動向により新総裁が決まったことにより、失望感が強い結果となりました。

総裁選後、岸田首相が金融所得課税の見直しを発表したことや、海外情勢では中国の不動産大手、恒大集団の債務不履行問題など複数の要因が重なり、今度は9月28日から10月8日まで8日営業日続落。これは2009年以来の約12年3ヶ月ぶりの出来事で、市場関係者からは「岸田ショック」と言われるなど、不名誉な船出となりました。この間に、3万円台をつけていた日経平均株価は再度27,500円近辺まで下落し、菅首相退陣によって上昇した分をすべて戻してしまいました。

このように8月後半から10月初旬にかけては国内政治動向で相場が変動しました。普段相場を見ない方でも、ニュースを見る中で株価の話を耳にした方もいるのではないでしょうか。政治の体制が安定しているかどうかは経済政策等の動きにも関わってくるため、海外投資家からの関心も高く、株式市場へ影響を与える要因の一つです。特に選挙などの大きいイベントが控えている際は注目度合いを上げておくとよいでしょう。

【年末】新型コロナ変異種「オミクロン株」の影響は?

最後にこれからの値動きについて予習しましょう。年末にかけての日経平均は再度3万円台の回復が期待されていたところですが、11月後半に入り状況が変わってきています。南アフリカで新型コロナ変異種「オミクロン株」が発生したためです。

夏場にかけてもインドで発生したとされるデルタ株によって世界的な感染拡大となりましたが、新たな変異種も感染拡大を引き起こすのではないかと警戒感が高まっています。変異種の報道が出た11月26日には、日経平均も今年で4番目の下落幅となる700円超の下落を記録しました。

株式市場が最も嫌気するのは、先行きが不透明なことです。また感染拡大への警戒感から、各国でアフリカ地域からの入国を中心とした渡航制限も実施され始めており、人の移動の回復を背景とする世界経済の回復が期待されていた中で、経済停滞の懸念もくすぶっています。

年末にかけては例年上昇の傾向があり、"年末ラリー"も期待されていたところですが、一気にムードが変わってきました。仮に楽観的な見通しをしていた方は軌道修正が必要かもしれません。一方で個人投資家の特権は、常にポジションを持たなくてもよいことです。先行きが不透明なときは"休むも相場"。これまでのコロナ禍相場の動きを復習しつつ、年末そして来年前半にかけての投資戦略を考えてみてはいかがでしょうか。