1987年にテレビ放送された『仮面ライダーBLACK』を、まったく新しい世界観で甦らせる『仮面ライダーBLACK SUN』(2022年配信予定)の企画がついに動き出した。「仮面ライダーシリーズ」の中でも、壮大なスケール感と魅力あふれるヒーローキャラクター、そして当時の最新技術を用いた意欲的な映像表現で人気の高い『仮面ライダーBLACK』を、いかにして「復活」させるのか。徐々に情報が明らかになり、仮面ライダーファン、ならびに世界中の映画ファンから熱い注目が集まっている。
日本の映画界の明日を担う気鋭の映像クリエイターが大結集を果たして取り組む『仮面ライダーBLACK SUN』に多大なる期待を込め、監督の白石和彌氏、コンセプトビジュアルを手がけた樋口真嗣氏に続いて、今回は特撮監督を務める田口清隆氏にインタビューを行った。
大人気作『ウルトラマンZ』(2020年)をはじめ、多くの特撮テレビドラマ、特撮映画で手腕をふるってきた田口監督だけに、『仮面ライダーBLACK SUN』でも意欲的な映像表現を盛り込んで、観る者に衝撃を与えてくれるに違いない。ここでは、『仮面ライダーBLACK SUN』の特撮監督を引き受けた経緯や、少年時代にテレビで体験した「仮面ライダー」の思い出を交えつつ、『仮面ライダーBLACK SUN』にかける意気込みを訊いた。
――『仮面ライダーBLACK SUN』の「特撮監督」を務めることになった経緯をお伺いしたいです。
直接のきっかけは、樋口真嗣さんから「手伝ってほしい」と言われたことです。『仮面ライダーBLACK SUN』が公式発表(2021年4月3日)されたときは、まだ白石(和彌)さんが監督をやることしか明かされていなかったでしょう。でも、その時点ですでに僕は樋口さんも関わっていることを知っていたので、内心「白石さんと樋口さんが組んでいるのだから、すごい作品ができるんだろうな」と、あくまで他人事として捉えていたんです。
それからすぐ、樋口さんから「話があるんだ」と事務所に呼ばれて、一対一でお会いすることになったのですが、もしかしたら、タイミング的にコレなのかな……と思っていると、案の定でした(笑)。そこで「やります」とご返事をして、正式に参加が決まったわけです。
――白石監督とも以前からお知り合いだったのですか。
白石監督の『麻雀放浪記2020』(2019年)で、戦後の町並みが映る冒頭シーンの特撮を手伝っていたことがあり、そこでご挨拶する機会がありました。
いつも僕の作品で美術をお願いしている稲月正人さんから「いま、東宝のスタジオでミニチュア撮影をやってるんだけれど、手伝うんだったら見に来てもいいよ」と声をかけてもらって、すぐ「手伝いますから、行きます!」って(笑)。
ミニチュア作りから、東宝スタジオの屋上でセット作りのお手伝いをしていました。白石監督は以前に僕が監督した『ゲハラ』を観ていらして、僕のことも認識してくださっていました。僕も白石監督の映画が好きで何本も観ていたので、うれしかったですね。後に「夕張映画祭」でも白石監督とご一緒して、お話をする機会に恵まれました。
――田口さんは円谷プロの『ウルトラマン』シリーズの印象が強いですが、昨年、『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)のエピソード32、33の監督を務められましたし、もともと東映の特撮作品にも携わっていたんですね。
主に、デジタル合成で参加していました。『仮面ライダー龍騎』(2002年)の終わりごろから入って、『仮面ライダーキバ』(2008年)の最初あたりまで。思えば、けっこう長いことやっていましたね。『ウルトラマン』の監督に入るのは『ウルトラマンギンガS』(2014年)ですから、そのずっと前になります。
――『仮面ライダーBLACK』や、『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)はご覧になっていましたか。
当時7歳でしたから、『BLACK』も『RX』もよく観ていましたし、最初の『仮面ライダー』(1971年)も再放送で観た記憶が残っています。でも、シリーズをすべて追いかけていたわけではなくて、『仮面ライダーストロンガー』(1975年)は好きだったけれど、『仮面ライダーアマゾン』(1974年)はまったく観ていない、みたいな感じでした。
フジテレビで放送していた『とんねるずのみなさんのおかげです』の1コーナーだった「仮面ノリダー」も好きでしたね。放送をビデオに録画して、何度も観ていた思い出があります。僕にとって等身大ヒーローの原体験は「ノリダー」だったのかもしれません。