みなさんはアメリカの大手コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」が提唱した「組織の7S」という理論をご存知ですか? この「組織の7S」は、中心にある共通の価値観を含めた、ソフトの「4S」とハードの「3S」によって成り立っています。

本記事では、それぞれがどのような要素なのかはもちろんのこと、この「組織の7S」を導入する際の注意点やポイントなど、詳しく解説していきます。

  • 7Sとは?

    「組織の7S」という理論についてご紹介します

7Sとは?

「組織の7S」は、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した理論です。組織改革を行う際に考えるべき下記7つの要素のことを指し、ソフトの「4S」とハードの「3S」から成り立っています。企業を成長させるためには1つの要素だけでなく、それぞれがお互いに補完・補強し合う関係性であることが重要とされています。

  • ソフトの「4S」とは?

    「組織の7S」とは、組織として企業がうまくまわっているかどうかを検討するうえで大切な7つの要素

ソフトの「4S」とは?

まずは、ソフトの「4S」からご紹介していきます。

Skill(能力)

ソフトの「4S」を構成する1つ目の要素は、「Skill(スキル)」です。組織としての能力や社員個人がもつ能力を指し、競合と比較したときの優位性といえます。

Staff(人材)

ソフトの「4S」を構成する2つ目の要素は、「Staff(人材)」です。採用や評価、育成、個人の勤務態度、モチベーションなどが高ければ、全体的にとてもよい組織となります。

Style(スタイル)

ソフトの「4S」を構成する3つ目の要素は、「Style(スタイル)」です。スタイルとは、企業の社風や文化、企業が大事にしているマインドや職場の雰囲気などを指します。

Shared Value(共通の価値観)

ソフトの「4S」を構成する4つ目の要素は、「Shared value(共通の価値観)」です。これは、企業理念やビジョン・ミッションのことで、経営陣だけなく組織全体にこの価値観が浸透していることが望ましいとされています。

  • ハードの「3S」とは?

    ソフトの「4S」は、「スキル」「人材」「スタイル」「共通の価値観」です

ハードの「3S」とは?

続いてハードの「3S」の3つの要素をご紹介していきます。ハードの「3S」は、「Strategy(戦略)」、「Structure(組織構造)」、「System(システム)」の3つの要素で、それぞれの言葉の頭文字をとって、「3S」と名付けられています。

Strategy(戦略)

ハードの「3S」を構成する1つ目の要素である「Strategy(戦略)」とは、企業の方向性を意味し、ライバル企業と比較したときの優位性を獲得するための戦略です。経営資源の適切な配分や優先順位付けを行います。

Structure(組織構造)

ハードの「3S」を構成する2つ目の要素である「Structure(組織構造)」とは、その企業の組織形成や事業の構造のことを指します。部門間の関係性や部署の構成、命令系統の働き方などです。

System(システム)

ハードの「3S」を構成する3つ目の要素である「System(システム)」とは、企業がどのようにまわっているのかのことで、経営管理や運営に関するシステム、業務評価制度、給与制度などを指します。

ハードの「3S」は、着手しやすく結果も短期間で出やすいため、組織改革を行う際にはハードの面から改良されることが多くなっています。

  • 7Sの導入事例

    ハードの「3S」は「戦略」「組織構造」「システム」です

7Sの導入事例

この「組織の7S」を導入している企業はいくつもあります。ここでは、幅広い研磨材の提供や研磨品質の測定、受託研磨加工サービスなどを行う会社・Mipoxを例に挙げて見ていきましょう。

Mipoxの課題は、顧客管理にありました。顧客関連の情報が一箇所にまとまっていなかったため作業に余分な時間がかかっており、効率化が必須課題でした。

そこで、「組織の7S」を用いたことで、作業の効率化を実現。実際に行ったこととしては、「顧客管理をひとつにまとめるためのシステム導入」、そして「社員同士がよくコミュニケーションを取れるような仕組み作り」です。

問題意識を共有できるようにするための社内コミュニケーションツールを導入し、社員同士で頻繁にコミュニケーションが取れるようになったため、社員間で問題の情報共有をするという意識改革が起きたのです。

  • 7S導入の際のポイントと注意点

    「組織の7S」を導入例として、Mipoxをご紹介します

7Sの導入メリットとは

7sを導入することで生まれるメリットをご紹介します。

マネジメント力の向上

まずはマネジメント力の向上がメリットとしてあげられます。管理される側からいきなり管理する側になった場合、うまく部下をマネジメントできない人も少なくありません。もしプレイングマネージャーだったとすれば、自らのパフォーマンスを下げるわけにもいきません。このようなケースでは、管理職がマネジメントに苦戦することが予想されます。

そういった際に7Sを活用すれば、マネジメント力の向上が期待できます。例えば、「System(システム)」として外部講師を招聘した新任マネージャー研修を取り入れていれば、管理職としての資質や果たすべき責務、部下との接し方などを幅広く学べるでしょう。

人事評価制度の改善

企業の成長には「優れた社員を高く評価する」「賞与や昇給に関する適切な評価基準を作成する」といった要素も欠かせません。「組織の7s」におけるハード面・ソフト面からの組織改革を行うことで人事評価制度を改善させ、優秀な人材の流出を防ぐようにしましょう。

従業員のやる気アップ

「組織の7s」を用いて分析や改革を行うことは、従業員のモチベーション向上につながります。「組織の7s」はよりよい組織マネジメントを生みます。適切なマネジメントができれば、従業員のモチベーションも向上するでしょう。

企業や組織の経営課題や問題の発見に役立つ

企業や組織の経営課題は多岐にわたるものですが、7sは1つの要素・1つの観点からだけでなく、ハード・ソフトの複数面から分析するため、表面的な課題だけでなく、本質的な問題の発見にも役立ちます。

また、何から着手すべきかの優先順位もつけやすいので、課題解決の実行もしやすいでしょう。

7S導入の際のポイントと注意点

優良企業といわれる企業のような組織を作るために「組織の7S」を導入する企業も増えています。しかし「組織の7S」には、導入の際に注意すべきポイントが多数あります。ここでは、特に気を付けるべき点をご紹介していきます。

ハードの「3S」重視は危険

「組織の7S」を導入するにあたり、覚えておく必要があるのが、「組織の7S」の中でも特にハードの「3S」の方を重視するのは危険だということです。

上記でもご紹介したとおり、ハード面は簡単に着手できるうえ、変化がすぐ目に見えて出てくるという意味では非常に変えやすい部分です。しかし、ハード面を重視してソフト面が疎かになってしまうことで出てくる弊害があります。

その弊害とは、社風や職場の雰囲気、カルチャーの調和よりも戦略などが優先されてしまい、組織の中で個性やカルチャーの統一がうまくいかずぶつかり合ってしまうことです。

「組織の7S」はそれぞれの要素が互いに補強し合い、うまくバランスが取れている状態のときだけに働くものなので、そもそもハードかソフトどちらかを注力してしまうとそのバランスが崩れ、組織の内側から崩れていってしまいます。

まずはソフトの「4S」に着手

企業のベースや軸といった内面となる部分だからこそ一番に着手するべきなのがソフトの「4S」です。

スキルのある人材や会社のスタイル、企業理念やカルチャーをはじめに整えておかなければ、いくらよい戦略を立てても競合他社と戦えません。まずは、土台となるソフトの「4S」を先に整えることがポイントです。

7Sで最も重要なのは共通の価値観(Shared value)

「組織の7S」の関係性を図で表すと、「共通の価値観(Shared value)」が7要素の中心にあり、その周りを共通の価値観(Shared value)以外のソフトの要素とハードの要素が取り囲んでいるような図になります。

組織を育む中で、企業内の共通の価値観は全社員が同じ方向を向いて働き、成果を上げるためにはとても重要なものになります。

共通の価値観がしっかりしていれば、そこから社風やカルチャー、職場の雰囲気が形成され、それにあった人材が集まってきます。そこから必要なスキルやシステムが定まっていき自然と精鋭が集う組織が育まれます。

  • どれが欠けてもいけない「組織の7S」

    共通の価値観(Shared value)が最も重要です

組織の7Sで分析してみよう

「組織の7S」は「共通の価値観(Shared value)」を中心としたソフトの「4S」とハードの「3S」の7要素が密接に関わり合い、うまくバランスを取ることで成り立ちます。

戦略やシステムなど、ハードの3つの要素は、着手しやすく成果もすぐに目に見えるので、「組織の7S」を導入する際にはハードから始めてしまいがちです。しかし企業の根本で組織の軸となる部分である「4S」こそ、時間をかけて大切に築いていく必要があります。

「組織の7S」を理解しうまく利用することで、それぞれの企業の問題点や、将来的に問題となりそうな点を早期に発見し、改善していくことができるでしょう。