声だけで成立させるオーディオドラマ。アニメ声優の経験もなかった大友にとって「どうやってアプローチしたらいいのか……」とかなり悩んだという。自宅で何度も練習したものの、どうしてもつかめなかった大友は、これまでの生身の芝居で学んだことに立ち戻った。「どんな形式でも、相手に気持ちを伝えるときに核になる思いは変わらないと思ったので、普段のお芝居と同じく、相手を思って言葉を紡ぎました」。

アフレコ時、茉夕が思いを寄せる先輩・安藤叶多を演じた矢部昌暉は、別ブースでの収録だった。「映像がなくても、目の前で掛け合いをすることで、空気感は共有できると思うのですが、それもなかったので」とさらなる不安に苛まれたというが「本当に相手の声だけが頼りなので、神経を研ぎ澄まして臨みました。普段はカメラの場所とか、どう動くかまで意識してお芝居をするのですが、そういったことがなかったので、逆に相手の声や吐息などの大切さを実感でき、セリフを相手に届ける距離感を意識できました」と学ぶことが多かった現場だったという。

またオーディオドラマのなかで、大友は茉夕のセリフ、モノローグ、ナレーションという3役をこなした。普段はやらないという台本へのマーキングも行ったことで、見えてきたものも多かった。「間とか呼吸という、台本の行間に書かれているものを、より強く意識できたと思います」。

2012年にドラマ『結婚同窓会 ~SEASIDE LOVE~』で女優デビューを果たした大友。キャリアは10年近くになるが「オーディオドラマに挑戦できたことは、これまでの女優生活のなかでも、大きな転機の一つになるだろうな」という予感があるというほど、得られるものは多かった。出来上がったオーディオドラマに「やっぱり自分の声だと恥ずかしいですね」と苦笑いを浮かべていたが「皆さんが憧れるようなシチュエーションがすべて詰まったような作品になっています。このドラマを聴きながら、茉夕ちゃんと一緒に甘酸っぱい1年間を過ごしていただけたら」と作品をアピールしていた。

『クールな先輩とハツコイ模様』は、GMOインターネットグループのGMOメディアが提供するチャット型小説サービス「プリ小説」の4周年を記念したオーディオドラマ。Spotify限定で無料配信中(11月5日より毎週金曜日に最新話を配信。全10話)。

■大友花恋
1999年10月9日生まれ、群馬県出身。2012年に女優デビュー。2013年に「ミスセブンティーン」でグランプリに輝き、『Seventeen』の専属モデルに就任し、2021年8月1日発売の9月号で卒業。近年の出演作は、映画『君の膵臓をたべたい』(2017)、ドラマ『チア☆ダン』(TBS/2018)、『新米姉妹のふたりごはん』(TX/2019)、『初情事まであと1時間」第8話(MBS/2021)、現在放送中の『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)、映画『劇場版 あなたの番です』の公開も控える。また、2017年4月から2021年3月まで『王様のブランチ』(TBS)にレギュラー出演し、9月から再び、産休入りした横澤夏子の代役として出演している。