●2作連続となるDECO*27提供曲 今回は”新ジャンル”のラブソングに?
――そして「ペタルズ」でもMVを撮影されています。様々な場所にいるようで、実はひとつの部屋にいろんな背景があった……という点がユニークですね。
今回は歌詞の「1Kのなか」というフレーズになぞらえて、「飛び出したいけどまだ飛び出していない」という状況をいかにお部屋の中で表現するか……というところにこだわってMVを撮っていただきました。
――まさに飛び出す前というか、歌い出しとともに目覚めるシーンから始まりますからね。
そうなんです。でも実はそのシーン、撮影はいちばん最後で。ダンスから撮り始めて割と時間が経過していたのもあって、そのシーンのあくびはかなり素に近いものなんです(笑)。
――もしかしたら、それも監督やスタッフさんの計算のうちかも?
……天才しかいない空間でした……!(笑)。あと、撮影のなかで1個気付いたことがありまして。これも偶然かもしれないんですけど、「ペタルズ」ってコロナ禍でなかなかお外に出られない、このご時世にもリンクしている曲だと感じたんです。1Kの中でいろんな世界を体験できたり外を想像してワクワクすることもできるんだと思ったら、自分も元気をもらえますし、いろんな方にも共感していただけるかなと。
――続いて、2曲収録されているカップリング曲についてもお聞きします。まず「好きじゃないよ」は、「ハピネス」に続いてDECO*27さんが手がけられた曲ですが。
でも「ハピネス」とは雰囲気の全然違う、すごくかわいい曲なんですよ。だから最初は、あざとい曲なのかなと思ったんですよね。「『好きじゃないよ』って言ってるだけで、絶対好きじゃん!」みたいに。その方向でイメージしてレコーディングに臨んだら……現場でDECO*27さんとお話しして違ったことが分かりまして(笑)。
――違った(笑)。
「これは、本当に恋愛初心者な女の子が、自分の初めて抱いた気持ちと戦っているような曲です」と。だから曲の中で何度も出てくる「好きじゃないよ」というフレーズも、「『本当に好きじゃないかもしれない』っていう可能性を残して歌ってください」というディレクションをいただいたんです。そういうふうに「そもそも恋じゃないし」みたいなところから入っているのに、サウンドはすごくかわいい……って、新しいジャンルの恋愛ソングのように感じて。そこで改めてDECO*27さんが作る楽曲の素晴らしさを感じましたし、自分も声優として培ってきた表現力をフル活用せねばと……当日に、思いました(笑)。
――ということは、曲のヒロイン像も設定し直したわけですね。
はい。最初はちょっと小悪魔的というか、「『好きじゃないよ』って言ってる私を、見て!」みたいな気持ちだったんですけど、現場で一度リセットしました。中学生ぐらいの、恋愛感情というかドキドキする気持ちがむず痒くて、戸惑ってしまうぐらいの初々しさを持った女の子をイメージして、心の中に宿しました。あくまでも歌っているのは岡咲なんですけど、そういう子を自分の中で主人公として設定することで、私の歌声のまた違う一面を引き出してもらえたような気がしています。
――そうやって歌うなかで、特に楽しかったりお気に入りの部分はどこでしたか?
そうですね……サビの後半にある「あたしドキドキしてるのなぜかしら」っていう高い音のパートは、好きな部分ではありますね。歌詞の中でちゃんと流れを感じられる曲で、そのパートが最後だけ「君もドキドキしていてほしいかも」になって、ちょっと気持ちが漏れちゃっているのもすごくかわいいんですよ!そういう無垢な女の子を描いた曲なので、特に男性の方には「好きなの?好きじゃないの?」みたいな気持ちになりながら、楽しんでいただけたらなと思います!
●「緊張する!」ではなく「楽しみ!」な、”岡咲美保”としての有観客イベント
――そしてもう1曲「魔法の言葉」は、カントリー風のサウンドが印象的な曲です。
今まで歌ってきた中でいちばんしっとりしている曲なので、最初はお仕事とかで疲れたときに聴いて楽しんでいいただけるような曲になるイメージがあったんですよ。なのでファルセットを多用していくようなアプローチも視野に入れていたんですが、レコーディングの際に「あえて元気な声で歌ってほしい」というディレクションをいただいて。ほとんどの部分を地声で元気に歌っていきました。
――それは、どんな意図からのものだったんですか?
たとえばサビに「ラルラリルラ 適当な歌で構わない!」というフレーズがあったり、歌詞は結構ポジティブなものなんです。なので、この前向きな歌詞を受けて今の岡咲美保がこの曲を歌うなら、という視点も意識しながら試行錯誤しました。レコーディング中はサウンドとのバランスがどうなるのか探り探りではあったんですけど、OKをいただいたあとに完成版を聴いたら「シングルの最後に、いろんなことを明るく吹き飛ばしてくれそうなエネルギーを持った曲になったな」と感じるものになっていて、現場でいただくディレクションの大事さを改めて感じました。
――たしかに、今までの曲とは違った角度からの希望やエールを感じさせる曲になっていますね。
本当にそうなんです! 幸せの形やエールの温度にはいろんな種類があるんだなと、改めて勉強になりましたし……現場での切り替えって、アフレコにも通ずるところがあるんですよ。監督さんや音響監督さんから全然違う角度のディレクションをいただくことがあり、それに現場で対応していかなければいけないので、声優としても柔軟さはものすごく求められる部分なんですよね。
――曲だけじゃなくて、何においてもあることですよね。
でもそれはすごく大切なことですし、聴いてくださる皆さんに届くということが作家の方々も含めた”チーム美保”共通の強い想いなので、3曲を通して聴いてくださった最後にエモさや幸せな感情を残しつつ、前向きになってもらえる曲にできていたらいいなと思います!
―― さて、「ハピネス」のリリース時のイベントは無観客配信となりましたが、今後は”リスアニ!LIVE 2022”への出演が決まっています。
今まで経験したことのある作品に関係した有観客ライブとは違って、岡咲美保自身としてライブに出演させていただけると聞いたときに、最初に出てきた感情は「緊張する!」じゃなくて「楽しみ!」だったんです。”リスアニ!LIVE”では準備をしっかりして、精一杯パフォーマンスしたいと思います。そして、それぞれの経験を通じて一歩ずつ成長していけたらと思っています。しっかりと地に足をつけて頑張っていきますので、ぜひ今後も見守っていただけたらうれしいです!