芳醇な香りとシャリシャリとした食感が美味しい「洋梨」。本記事では、洋梨に含まれる栄養成分や期待できる効果・効能を紹介します。また、生と缶詰との栄養成分についても比較しました。
「皮ごと食べてもいいのか」という疑問も含め、おいしい洋梨の選び方や食べ方、保存方法についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
洋梨の栄養成分とは
洋梨はバラ科ナシ属に分類される、果樹になる果物のことです。別名「西洋梨」とも呼ばれています。日本でよく目にする和梨は丸い球型ですが、洋梨はお尻に向かって大きくなる瓶状の形をしているのが特徴です。
ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどの海外では、梨といえば一般的に洋梨のことを指します。
生の洋梨と缶詰で比較
洋梨100gあたりの成分について、文部科学省の食品成分データベースでは以下の通りとなっています。生の洋梨と缶詰の洋梨に分けてみてみましょう。
■生の洋梨
- エネルギー:48kcal
- 水分:84.9g
- たんぱく質:0.3g
- 脂質:0.1g
- 炭水化物:14.4g
■缶詰の洋梨
- エネルギー:79kcal
- 水分:78.8g
- たんぱく質:0.2g
- 脂質:0.1g
- 炭水化物:20.7g
加熱処理される洋梨の缶詰は、ビタミンEや食物繊維は残る一方で、ビタミンCや酵素などが減少するといわれています。また、缶詰は生の洋梨と比べて糖分を多く含んでいるため、カロリーが高くなるのが特徴です。
洋梨の摂取で期待できる効果・効能
洋梨の成分と、期待できる効果・効能を紹介します。
ソルビトール
ソルビトールは糖アルコールの一種で、冷涼感のある甘味料といわれています。一般的な砂糖と比べて、口にしたときに血糖値の上昇が緩やかなので、食べても太りにくいとされているようです。
また、ソルビトールには咳止めや解熱効果のほか、整腸作用としての効果も期待でき、虫歯になりにくいという特徴もあるとされています。和梨や洋梨は、果物の中でもソルビトールを多く含んでいる果物です。
カリウム
カリウムはミネラルの一種です。体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する作用があるため、塩分の摂りすぎを防止するだけでなく、高血圧の予防やむくみの緩和にも効果が期待できるでしょう。
カリウムもまた解熱作用を持つ成分であるため、夏バテや風邪で熱があるときに食べるのはおすすめです。
アスパラギン酸
アスパラギン酸はアミノ酸の一種です。エネルギーの代謝を助け、たんぱく質を合成する働きがあります。疲労回復の効果にすぐれていることから、栄養ドリンクなどにもよく配合されている栄養素です。
アスパラギン酸は、洋梨の皮に多く含まれているといわれています。
プロテアーゼ
プロテアーゼはたんぱく質分解酵素のひとつです。たんぱく質をアミノ酸に分解する力を持っています。調理に使うと肉を柔らかくしたり、食後にデザートとして食べるだけで消化をサポートしてくれます。
洋梨の原産地・生産地
洋梨はヨーロッパ中部や西アジアに原生していた果物で、日本には江戸時代に渡来。以来、日本では沖縄県以外の各地で栽培されています。日本国内の代表的な生産地としては、山形県や青森県、長野県、岩手県などがあります。
特に、山形県は洋梨の収穫量が全国1位で、総収穫量の70%を占めています。
洋梨の品種・種類
洋梨は20種類以上の品種がある果物です。日本で栽培されている洋梨は、ラ・フランスが大部分を占めています。その次にバートレットやル・レクチエが続きます。
洋梨は皮ごと食べてもいいの?
洋梨は、皮のほうがアスパラギン酸を多く含みます。しかし、洋梨は病害に弱く虫などの影響も受けやすいことから、育てるときにある程度の農薬を使用することが多いです。そのため、皮ごと食べるのは残留農薬の影響が懸念されます。
アメリカのエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は毎年、残留農薬値が高い農作物のリスト「ダーティー・ダズン」を発表。アメリカ農務省と食品医薬品局が調査した結果をデータ化しています。
2020年版において洋梨は、残留農薬値が高い農作物として第9位にランクインしていました。
洋梨を食べるときは皮をきちんと剥いて実の部分だけを食べるか、もしくは減農薬・低農薬で栽培された「皮ごと食べられる」と謳っている洋梨を選びましょう。
おいしい洋梨の選び方
おいしい洋梨の選び方として、次のポイントを参考にするといいでしょう。
- 手に取ったときに重みを感じる
- 見た目がふっくらとしている
- 甘い香りがする
- 全体的に黄色いもの(外皮が黄色系の場合)
洋梨は、表面に傷がないもの、もしくはなるべく少ないものがおすすめです。手に取ったときに、部分的に柔らかくなっていないかも、あわせて確かめましょう。
品種によって多少異なりますが、日本でよく出回っているラ・フランスやル・レクチエなどは、でこぼことした形状のものが多いです。しかし、形がいびつでも味に影響はありません。
洋梨の食べ方
洋梨は基本的にりんごと同じ食べ方をします。ラ・フランスを例にとって切り方の手順を説明します。
- ラ・フランスを縦半分にカットする
- 半分にした実をさらに縦半分にカットする
- ヘタとお尻に切り込みを入れ、ヘタと種を取り除く
- 皮を端の方から薄く剥く
洋梨を追熟させるには? おすすめの保存方法って?
洋梨は木の上で完全に熟さないという性質があり、未熟の内に収穫されます。未熟のままの洋梨はゴリゴリとした硬い食感で甘みも少ないため、おいしく食べることが難しいといえます。
そのため、食べる前に追熟させる必要がある洋梨も多いです。ここでは、追熟させる方法とその後の保存方法を紹介します。
洋梨を追熟させる方法
洋梨の追熟は収穫直後か、もしくはスーパーなどで購入した後かによって、方法が異なります。
【収穫直後】
はじめの10日間は、洋梨を約4℃の冷蔵庫で保管します。その後、約20℃の室内に置いて追熟させます。30℃を超えてしまうと、追熟がうまくいかず風味が格段に落ちてしまうため、注意が必要です。
【購入後】
スーパーなどで購入した硬い洋梨は、乾燥しないように紙袋に入れ、15〜20℃前後の室内に置いて追熟させます。量がたくさんある場合は、食べる分だけ室内に保管し、残りは温度の低い場所で冷蔵させて追熟のペースを遅らせるといいでしょう。
洋梨の保存方法
洋梨の皮が黄色くなり始めたら、冷蔵庫の野菜室に保存します。その後、外皮が黄緑になり、実を押して柔らかさを感じられたら、それが食べごろになった証拠です。ラ・フランスやル・レクチエなどは、食べ頃になるといい香りが漂います。
少し長めの保存を望むなら、食べごろになった洋梨をビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に保管するのがおすすめです。ただし、完熟した洋梨は傷みやすく、長期保存には向かない果物ですので、なるべく早めに食べるようにしましょう。
洋梨は皮を剥いて食べましょう
洋梨はヨーロッパ中部や西アジアで原生した果物で、江戸時代に日本に到来しました。洋梨の品種にはラ・フランス、バートレット、ル・レクチエなどがあり、国内では山形県が収穫量1位となっています。
洋梨にはさまざまな栄養成分が含まれており、甘味料の一種とされるソルビトールは果物の中でも豊富に含まれています。整腸作用が期待でき、砂糖に比べて血糖値の上昇が緩やかなのが特徴です。
洋梨の皮にも栄養成分が含まれていますが、残留農薬が懸念されるため、皮は剥いて食べるのがいいでしょう。記事で紹介した洋梨を追熟させる方法や保存方法も参考にして、普段の食生活に取り入れてみてください。