来年で創業90年を迎える京樽は、お持ち帰り専門店『京樽』でシャリやネタ、全工程を見直し、創業以来初となるメニュー全品を一新した。これに伴い「KYOTO Style.雛菊」(990円)などの新商品を10月19日から販売開始している。

同日に実施された発表会で京樽の石井憲社長と営業本部の丸山翔氏に今回のリニューアルの背景や新商品の特徴など聞いた。

  • 京樽、創業以来初となるメニュー全品を一新

■50種類以上の多様なラインナップを用意

今年4月にFOOD & LIFE COMPANIESの一員となった京樽。以来、合同キャンペーンの実施など、この半年間でさまざまな挑戦に取り組んできた。京樽の石井社長は発表会の冒頭、「この半年間、我々は京樽が持つ伝統を大切にしながらも、FOOD & LIFE COMPANIESの革新性、商品の調達力・開発力を活かして、地道に新たな商品の開発を進めて参りました」とコメント。50種類以上の多様なラインナップを用意したという、今回のリニューアルについて次のように説明した。

  • 京樽の石井憲社長

「伝統の上方鮨でネタ、シャリ、調理工程も含めて、すべて見直しを図って今回の発売に至りました。押し寿司という以前からあったカテゴリでも、新しい押し形で新しい上方鮨を作れないかと考えてきました。また、我々が『KYOTO style.』と名付けた、新たな江戸前鮨との融合させたような生ネタのようなお寿司の詰め合わせ。見て美しく、食べて美味しい、そんなこだわりの京樽の新しい商品を出しています」

「KYOTO style.」は色合いも美味しさも鮮やかなお寿司の詰め合わせ。シャリはネタの旨みを引き立たせるようにまろやかで優しくなるように酢の配合を行い、江戸前鮨で人気のマグロ、マダイなどを生のまま使用している。色鮮やかな見た目と新しいスタイルがハレの日にもぴったりだ。

  • 新上方鮨「KYOTO style.雛菊」(990円)

■お刺身でも食べられるネタを押すしに使用

京樽の代表的な商品である「押すし」も、よりさまざまな味を楽しみやすいように小さめのサイズへと生まれ変わった。

  • 小さ目サイズの「押すし」が新登場

一貫が大きく1セット1種類食べると、それだけでお腹いっぱいになってしまうイメージもある「押すし」。穴子の押すしや鯖を使ったバッテラは馴染深い上方鮨で、京都発祥の「京樽」ではそうしたネタ以外にもたくさんの種類を取り扱ってきた。

今回の商品開発に携わった丸山氏は、「従来の押すしは一口で食べるのはなかなか難しいサイズだったので。今回は一口で食べやすいよう、新たなサイズ感に仕上げています」と語る。

また、今回はサイズだけではなく売り方や調理工程でも見直しを図り、従来の「押すし」にはない新しいスタイルを提案している。さまざまな味わいを楽しみやすくするため、一貫ずつ好きなものを選べるという。

味わいの面でも従来の「押すし」は塩でしっかり水分を抜いた後、甘酢や酢に漬け込み、固く締めたものを押すしにして作るが、フレッシュなネタにこだわった。

「上方鮨と江戸前鮨の中間的な位置付けの色鮮やかな『押すし』に生まれ変わりました。上方鮨はきっちりお酢で締めてあったり、火が通っていたり、そうした食材を使わなければいけない、そんな固定観念を払拭しています。今回、鯵や鯛などはお刺身や握り寿司でも食べられるネタを軽く酢に潜らせただけ、押す直前に酢の中でしゃぶしゃぶするだけの工程で『押すし』にしています」

  • 「穴子押すし3貫」(300円)

  • 「真鯛押すし3貫」(300円)

■女性も食べやすい押すしに

新グランドメニューでは、鰻や穴子といったネタも火を入れすぎることなく、絶妙なバランスで作った商品を提供する。昔は長期保存や持ち歩くことを前提に「押すし」は作られていたが、冷蔵庫や保冷剤が当たり前にある世の中で、食味を落としてまで保存性の高いお寿司が必要かというところに着目。今までは常温で放っておいても悪くならないぐらいしっかりとした加工をしていたが、今回は味に完全に振り切った「押すし」に仕立てているとのこと。

食材のフレッシュさや「押すし」のサイズ感に着目したのは、学生のアルバイトも含む従業員や利用者の声を多数集めたのがきっかけだという。

「とくに女性のお客様や女性従業員から食べづらいとの声をいただきました。また、『上方鮨は酢で締めたり、火が通っていないとダメだ』と思っている人も意外といなくて。時代の流れとともに江戸前鮨の方が売れてくるようになっているんです。『何で生のネタでやらないんですか?』という素直な意見がたくさん上がってきて。そうした意見は決してごく一部の意見ではないし、今までの上方鮨の概念と違うからと一蹴するのではなく、一度すべて吸い上げてみた結果のリニューアルになっています」

新しさだけでなく見た目には伝統的な「押すし」ということも感じさせ、まさに伝統と革新を絶妙なバランスで融合した商品といえそうだ。

石井社長は今後の展望について、「時代に即した上方鮨の在り方、さらに美味しい商品を追求しながら、今後も100年、200年と成長できるような会社でありたいと思っています。今回の上方鮨の全面リニューアルはひとつの大きなトライアルですが、お客様にぜひ新しい味を楽しんでいただければ」と語った。