今後、本格的に社会に進出してくる若年層をZ世代と呼び、マーケティングをはじめビジネス界で注目されています。これまでX世代やミレニアル世代といった概念がありましたが、Z世代にはどのような特徴があるのでしょうか。
今回はZ世代の特徴について生活スタイル、仕事やキャリアといった切り口で解説します。Z世代にうまくアプローチするための参考資料としてください。
Z世代の定義
Z世代とは、1990年代の半ばから2012年頃に生まれた世代です。生まれたときからすでにインターネットやデジタルデバイスが存在しており、デジタルネイティブ、スマホネイティブであるのが大きな特徴です。
Z世代の呼称はアメリカから来ており、Z世代の1つ上がミレニアル世代(Y世代)、さらにその上はX世代です。なおZ世代の次はα世代とされていますが、まだ明確な定義は確立されていません。
Z世代、ミレニアル世代、X世代はいずれもアメリカ生まれの概念です。それぞれの世代の特徴は、アメリカの文化・政治・経済などの影響を受けている側面もあるため、他国の同世代にそのまま当てはまるとは限りません。
日本のZ世代を考えるなら、日本特有の事情も考慮する必要があります。
生活スタイルから見るZ世代の特徴
Z世代の行動にはどのような特徴があるのか、ライフスタイル面について解説します。
1.デジタルネイティブ・スマホネイティブ
Z世代が生まれた頃は、すでにインターネットが広く利用されていました。幼少期からインターネットに触れるのが当たり前の時代で育っています。
スマホやタブレットなどの端末を使いこなすことができ、デジタル機器への苦手意識はそれほどありません。
2.SNSの利用頻度が高い
インターネットで情報を探すことはよくありますが、SNSで情報を得ることが多い傾向です。SNSに慣れているので、自分の考えを発信することに抵抗感がなく、SNSのつながりをリアルの人間関係と同じく大切なものと考えています。
また、一度SNS上で公開された情報はデジタルタトゥーとなることを理解しているため、個人情報への警戒心は強く、本名を公開して親にみつかる「Facebook」よりも匿名性の高いSNSの方が人気があります。
最新の情報をスピーディーに得られる一方、フェイクだと気づかず拡散してしまうこともあり、SNSの情報の真偽をいかに見極めるかは、Z世代にとっても課題と言えます。
3.オープンなコミュニケーションをする
SNSで自分の考えや意見を発信することになれているので、オープンで平等なコミュニケーションをします。他者から意見を押し付けられたり、自分の意見を述べるのを我慢させられたりするような環境にはなじみづらいです。
4.社会運動に積極的
Z世代は環境破壊や人種差別といった社会問題への関心が強いのも特徴です。実際にSNSを通じて、アメリカの「Black Lives Matter」などの社会運動・ムーブメントが発生しました。
環境活動家で知られるグレタ・トゥーンベリさんも、2003年生まれのZ世代です 。地球温暖化の危機を訴えた彼女の姿勢は、多くのZ世代の支持を得ました。
仕事・キャリア面で見るZ世代の特徴
Z世代の働き方にはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
1.安定志向
Z世代は社会的に不安定な時代を生きてきたことから、仕事・キャリアに関してはやや保守的で、安定した収入を得られる職種・職業を好みます。経済面でも消費には慎重で、無駄な出費は避ける傾向です。
アメリカでは大学の費用が年々増加 しており、奨学金という形式でローンを背負う学生も多いです。 大学を出た時点で数百万円、多いと1,000万円以上の借金を抱えるため、より安定・高収入の職を望むのは当然のことでしょう。
その一方で、SNSなどを通じてさまざまな働き方があることも知っています。会社での出世だけがすべてではなく、個性を生かした仕事をするため独立をする人もいます。
2.プライベート重視
Z世代は仕事とプライベートのバランスの大切さを意識しています。仕事にすべてをささげるような働き方は好みません。職場の人との人間関係もあくまで仕事限定であり、プライベートも交流しようとはあまり考えません。
飲み会などの参加もあまり積極的ではなく、断る人もいます。飲み会でプライベートをあれこれ探られるのも苦手です。
3.タムパ(タイムパフォーマンス)重視
費用対効果を重視する「コスパ」に対し、時間対効果を重視する考えの「タムパ」という言葉が使われることがあります。
Z世代は仕事でタムパを重視する傾向があり、短い時間で効率的よく成果を出すことが望ましいと考えます。プライベート重視でもあるため、仕事は定時で終わらせることが理想です。
サービス残業や付き合い残業などは、Z世代が職場で強く嫌うものの1つで、タムパに逆行するものでしかない時代遅れの働き方と考えます。
4.キャリアアップに意欲的
安定志向でありながらも、同時にいつどうなるか分からないという不安を感じるため、自分の市場価値を高めたいと考えています。自身のキャリアをしっかりと見据え、資格取得やスキルアップに励むZ世代も多いです。
価値観から見るZ世代の特徴
Z世代の価値観について見られる傾向について解説します。
1.現実主義
Z世代が育った時代は、どちらかと言えば不景気な時代です。よって楽観的な考えはあまり持たず、現実に即した行動・考えを取る傾向があります。
Z世代の親は2008年のリーマンショックなどで経済的に困窮したケースも多く、子供ながらに深刻さを目の当たりにしています。よってZ世代は労働や投資について、若くてもしっかり考えています。
2.ダイバーシティやインクルーシブを重視
ダイバーシティとは多様性のことで、Z世代は多様な価値観・考えを尊重する傾向が見られます。よって異なる人種・性的少数者・障害者など、他者との違いを柔軟に受け入れる度量があります。
インクルーシブとは簡単に言うと「排除しない」ことで、インクルーシブな社会を目指すという意味で使われる言葉です。Z世代は一部の人を追い出すことのない、インクルーシブな社会を望ましいと考えます。
Z世代と他の世代との違い・共通点
Z世代はミレニアル世代やX世代と比べてどう違うのか、共通点は何かを解説します。
1.ミレニアル世代との比較
Z世代が現実主義的な傾向があるのに対し、ミレニアル世代は理想主義的な傾向があります。ミレニアル世代が育ったのは好景気の時代であり、楽観的であった雰囲気の影響を受けていると考えられます。よってミレニアル世代はZ世代よりも消費に積極的です。
その一方でダイバーシティに寛容なこと、プライベートを重視すること、スマホネイティブであることといった点は共通しています。
2.X世代との比較
X世代は独立心が旺盛であり、転職も肯定的に捉えます。1つの会社でずっと勤めるのが難しくなっていることも十分承知しています。これに対してZ世代は、できれば安定した環境で長く働きたいと考えているのが違いです。
その一方、X世代もZ世代も、自身のキャリアを重視する姿勢は共通しています。社会に通用するスキルを身に付けたいと考え、自己投資や資格の取得などに積極的です。
Z世代の特徴を踏まえたうえでのマーケティングのポイント
Z世代はスマホやSNSを常に利用するため、デジタルでいかに接触し、アピールするかが重要になります。動画コンテンツに慣れているため、文字ばかりで解説するより、音声やアニメなどを使って分かりやすくするほうが受け入れられやすいです。
その一方でZ世代は経済的に保守的な傾向も見られるので、商品・サービスを利用するメリットがあるか慎重に判断します。コスパやタムパを重視する傾向があるため、費用を支払うだけのメリットが十分あることを明示することが大切です。