早稲田大学地理学研究会(@geo_waseda)が投稿したこちらのマップが、ツイッターで話題となっています。“あるモノ”の分布図になっているのですが、みなさん、分かりますか?

ヒントはオレンジ色。

突然ですが!これは何の分布を表したマップでしょうか?
ところで北海道ってすごく大きいんですね
(@geo_wasedaより引用)

正解は……

「セイコーマート」の分布図でした! みなさん、セイコーマートご存知でしょうか? 北海道民にはお馴染みのコンビニチェーンなのですが、この分布図を見て分かる通り、北海道のほかには茨城県と埼玉県にしかないのだとか。

オレンジの点が北海道に多いことから、「じゃがいもかな」「メロンの製造? 」と惑わされた人も見られたものの、ほとんどの人が「セコマじゃねーか! 」「きっと、セイコーマートだ!! 」「セコマしかないわな」と余裕の正解ぶり。

やはりオレンジ色が大ヒントとなったようで、「セコマだ! 色的に笑」「オレンジにした時点で難易度下がりすぎw」といったコメントも寄せられていました。

また、「セコマさん…もう少し東北・北関東に進出してもいいのよ…」「神奈川県にも進出希望」という声や、セコマファンからは「ソフトクリームまじ美味しい」「ここのお弁当の美味さよ」といったコメントも。北海道に本社があるだけに、どうやら美味しいものがたくさん置いてあるようですね。

さて、多くの反響が寄せられているセコマの分布図ですが、どうして作られたのでしょうか? 作成した早稲田大学地理学研究会のみなさんにインタビューしてみました。

早稲田大学地理学研究会のみなさんに聞いた!

――この画像はどのようにして作成されたのですか?

副幹事長・永井さん:QGIS(地理情報システム・Geographic Information Systemの略)という、誰でも無償で使用できるGISソフトを使って作成しました。コンピューター上で空間データを視覚的に表示させることで、様々な分析が行えるようになるもので、新学習指導要領においても活用拡大が期待されている分野です。大学生である私たちも、GISデータスキルを講義や自習の形で向上していきたいと考えています。

―― どうしてこのマップを作成しようと思われたのですか?

SNS担当・北村さん:一言で言えば狂気です(笑)
Zoomで雑談をしていた際に、ある会員がセコマのお酒を飲んでいたことから、セコマの話で持ちきりになり、気づいたら多くの会員がQGISを開いていました。こうなってしまうともう手が付けられません。
住所データを取り、GISに落とし込み、地図にセコマをプロットしていく中で、「これツイートのネタになるんじゃないか? 」と閃き、そうしてできたのがこのツイートです。

―― 本州で埼玉と茨城だけにセイコーマートがある理由をご存じでしたら教えてください。

会計・澤本さん:当会で調べたところ、セイコーマート独自のビジネスモデルを維持できたのが埼玉と茨城の二県のみであったからとの結論になりました。

セイコーマートは北海道内の競争激化を背景として、1980年代に「埼玉」「茨城」だけでなく「兵庫・鳥取」「京都・滋賀」の本州4地域で地元の酒卸企業との合弁によるエリアフランチャイズを実施。当時は同じ手法によって全国に店舗を拡大する計画だったが、1990年代にコンビニの出店数が飽和状態に達し、競争力に劣る中小コンビニの淘汰が始まるとセイコーマートは「茨城」「埼玉」のフランチャイズを吸収合併しました。このメリットは、一定の自主性を持つエリアフランチャイザーを通す必要がなくなり、本部の指示を直接的に反映できることにあります。その結果、「埼玉」「茨城」の両地域では効率的な自社物流網の構築をはじめとする競争力の増強を達成することができました。

一方で、関西の2地域は酒販規制の緩和も相まって業績が悪化し、2000年代初頭にそれぞれ他のコンビニチェーンに売却。この後、セイコーマートは他地域への進出路線を転換し、北海道と関東2地域に注力するようになったと考えられます。ただし、残念ながらなぜ「埼玉」であったのか、例えばより北海道に近い「青森」や「宮城」に進出しなかったのはどうしてか、という点までは情報を得ることができませんでした。

(参考文献)
阿部 智和、山口 裕之、大原 亨(2019)「セイコーマート : 独自性の高いビジネスモデルの確立」『Discussion Paper, Series B(北海道大学大学院)』、171、pp.1-26
『日経流通新聞』「セイコーマートーー本州での展開強化(地方流通試練のとき)」1993年9月2日号、6面
『日本経済新聞』「セイコーマート、茨城の地域会社吸収――県内コンビニ競争激化で。」1997年11月12日号、地域経済面

――なぜ埼玉と茨城だったのか、たしかに気になりますね。今回のツイートに多くの反響が寄せられていますが、率直な感想を教えてください。

幹事長・戸村さん:Zoom飲み会から1夜明け、リツイート数が当会のツイートとしては異常なほど伸びていたことに非常に驚きました。「どこまで数が伸びてしまうんだ……」と。
皆様のお答えも、すべて拝見させていただきました。ほとんどの方が「セコマ! 」「色がセコマじゃん」「セコマで北海道が描けている…」など期待通りの反応をしていただけましたから、幹事長としては大満足です(笑)

――地理学ってあまり馴染みがなかったのですが、こんな面白さもあるんだと驚きました。

幹事長・戸村さん:地理学は他の学問と比べて「何に使うかわからない」「仕事や事業に活きない」とすこし冷遇されがちな部分があるのですが、今回のツイートで「よくわからないけれど地理って面白そうだな~」なんて、誰か1人にでも感じていただけていれば幸いです。

ここまで多くの方に関心をお持ちいただいたのは、我々の力ではなく、セイコーマートさんが多くの方に愛される商品開発や経営方針をなさっているからこそと思っております。これからもファンを獲得するその経営スタイルを大切にするセコマらしさを、僭越ながら応援させていただきたいです。

最後に一言言わせてください。
セコマのホットシェフ大好きです!!


3道県にしか存在しない貴重なセイコーマート。オレンジ色のコンビニを見つけたら、ぜひ立ち寄ってみたいですね。