「至らない点」は挨拶やお礼、お詫びをするときなどビジネスシーンでもよく使用される表現です。しかし、なんとなく聞いていても実際どんな意味かわからない、使ってみたいけれど使い方がよくわからないという人も多いでしょう。

この記事では「至らない点」について、意味や正しい使い方を解説。類語や英語表現なども例文を交えて紹介します。

  • 「至らない点」とは

    「至らない点」の意味や使い方を解説します

「至らない点」の意味とは

「至らない点」とは、配慮が足りない部分、もしくは未熟な部分を指す言葉です。注意が行き届いていないため、あるいは未熟であるために、求められた水準に能力などが「至っていない」という意味であり、「点」が部分や場所を示しています。

「至らない点があり申し訳ございません」「至らない点が多いかもしれませんが、よろしくお願いします」と、自らに対する表現に使うことがほとんどで、他人に対して「至らない点がある/ない」とはいいません。

「至らない点」は年賀状などの挨拶文やお礼、お詫びをする場面で使用されることの多い表現です。「至らぬ点」とも書きますが、どちらがより丁寧などの差はありませんので、文章に合わせて使い分けましょう。

  • 「至らない点」とは

    「至らない点」とは、配慮が足りない部分や未熟な部分のこと

「至らない点」「至らない点もあるかと思いますが」の使い方は? 挨拶・感謝・お詫びの例文

「至らない点」を具体的にビジネスでどのように使うべきか、シーンごとに解説します。例文も挙げますので参考にしてください。

挨拶に使用する例

挨拶として「至らない点」を使う場合は、「未熟者ですが」という意味になります。そのため、新入社員として、あるいは異動先などまだ勝手がわからない場所での最初の挨拶に適しているでしょう。

昇進挨拶などで使う場合は、「この仕事・地位については未熟かもしれませんが」という謙遜の意味合いが強くなります。

また、「至らない点」は結婚式のスピーチや、上司への年賀状に添えるメッセージとしても頻出の表現です。

<例文>

  • 至らない点もあるかと存じますが、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
  • 昨年は親身にご指導いただきありがとうございました。至らない点がまだ多いかと存じますが、本年も精一杯頑張る所存ですのでよろしくお願い申し上げます。
  • 至らぬ点の多い私達ですが、二人で力を合わせて頑張っていきますので温かく見守ってくだされば幸いです。

お礼や感謝に使用する例

退職時の挨拶や、相手の助力に対してのお礼をいう際にも「至らない点」は頻出の表現です。「行き届かない点が多い私に助力いただき、ありがとうございます」と謙遜することで、相手の力添えがあってこその自分の功績であることを伝えられます。

<例文>

  • 至らない点も多くご迷惑をおかけしましたが、皆さまのおかげで無事お役目を全うすることができました。
  • 至らない点の多い私でしたが、おかげさまでプロジェクトを成功させることができました。

お詫びの際に使用する例

「至らない点」をお詫びで使う際は、主に「配慮が不十分」という意味になります。そのため、必ず「申し訳ございませんでした」など、お詫びの言葉とセットで使用しましょう。

クレームに対応する際や、不手際があって謝罪会見を開く際などに使用されます。

<例文>

  • この度は当方に至らぬ点があり、お客様にご迷惑をおかけしてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。
  • 至らぬ点が多いせいでご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。
  • 「至らない点」の使い方を例文で確認!

    「至らない点」は挨拶やお礼、お詫びの際に使います

「至らない点」の類語・言い換え表現

「至らない点」の類語表現にはどのようなものがあるでしょうか。いくつか紹介するので、シーンによって使い分けましょう。

不束者(ふつつかもの)

「不束者(ふつつかもの)」は、気が利かない人や配慮が行き届いていない人のことを指します。「至らない点」と同様、自分、あるいは自分の身内に対しての謙遜表現として使い、他人に対して「不束者だね」とはいいません。

結婚の際に女性や女性の親が使うイメージのある言葉ですが、男女共に使えます。初対面の人への挨拶などのシーンに適しているでしょう。

<例文>

  • 不束者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  • 不束者ですが、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

若輩者(じゃくはいしゃ)

「若輩者(じゃくはいしゃ)」は、経験が浅く未熟な人、もしくは単に年齢が若い人のことを指す言葉です。しかしビジネスの場においては「実際に経験のある人が、自分を謙遜するための表現」として使用されることもあります。

つまり、新入社員が「自分はまだ若くて経験もないから……」と思って「若輩者」を使うと、尊大な印象になってしまうこともあるのです。「若輩者」は昇進時や退職時の挨拶などの場面で使いましょう。

<例文>

  • 若輩者ではございますが、精一杯尽くしてまいりますので何卒宜しくお願いします。

未熟者(みじゅくもの)

「未熟者(みじゅくもの)」はまだ技術などに習熟していない人、未熟な人を指して使います。

「若輩者」と同様謙遜の意味で使われることが多いため、本当に未熟なうちに使うと失礼だと思われてしまうこともあります。新入社員や若手のうちは避けたほうが無難でしょう。

<例文>

  • 私のような未熟者にこのような大役をお任せいただき、大変に恐縮に存じます。

配慮不足(はいりょぶそく)

謝罪やお詫びの文面で「至らない点」を書き換えたい場合は、ストレートに「配慮不足」とするといいでしょう。お詫びする理由によって、「注意不足」「不満足」など、「何が至らなかったのか」の部分を変更することもできます。

<例文>

  • 我々の配慮不足により不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
  • こちらの商品に万が一不満足な点があった場合は、お手数ですがカスタマーセンターまでご連絡ください。
  • 「至らない点」の類語

    若輩者、未熟者などが「至らない点」の類語となります

「至らない点」を英語でいうと?

「至らない点」を英語の表現にしたい場合は、以下のような語句を使うといいでしょう。

<挨拶・お礼・感謝>

  • inexperienced (経験が浅い)
  • shortcoming (欠点)

<謝罪・お詫び>

  • thoughtless (配慮不足)
  • unsatisfactory (不満足)
  • one’s fault ((人)の責任)
  • lack of ability (能力不足)

ただし、ビジネス英語では謙遜の文化はあまりありません。日本人的な感覚で「至らない点も多いと思いますが、よろしくお願いします」と挨拶で使ってしまうと相手に「経験不足な人なんだ」と思われてしまうこともあるので注意してください。

相手に無用な不安や不信感などを抱かせないためにも、あまり使わないほうがいいでしょう。

謝罪やお詫びの文面で使用する際にも注意が必要です。こちらも、日本語だと「私に至らぬ点があり、申し訳ありません」と社交辞令の感覚で使ってしまう人もいますが、英語だと「あなたの能力不足のせいで失敗したんだね」と言葉通りに捉えられてしまいます。

不用意な一言で責任問題に発展しかねませんので、慎重に考えてから発言しましょう。

<例文>

  • I am still inexperienced and may cause you some trouble, but I will do my best to help you in any way I can. (まだ経験が浅くご迷惑をおかけすることもあるかとは思いますが、少しでもお役に立てるように頑張ります)
  • We apologize for the discomfort caused to our customers due to our thoughtless behavior. (私たちの配慮不足により、お客様に不快な思いをさせてしまったことをお詫び申し上げます)
  • 「至らない点」を英語でいうと?

    「至らない点」のつもりでinexperiencedなどを使う際は注意が必要です

「至らない点」はさまざまなシーンで使える表現

「至らない点」は、配慮が足りないことや、自分の能力が足りないことを謙遜して表現する際に使われる言葉です。入社時や年賀状の挨拶、感謝したい場合や謝罪するときなど使う機会は多いので、正確な使い方を覚えておきましょう。

言い換え表現としては、「不束者」「若輩者」「配慮不足」などがあります。自分の謙虚さと真面目さをアピールできる表現なので、ぜひビジネスシーンで活用してみてください。