「ゆずきち」と言っても、「柚子」じゃない。初めて聞く人は「ええっ、違うの!?」と驚かれるかもしれません。「ゆずきち」とは、「かぼす」をルーツに持つ、山口県オリジナルの柑橘類。さわやかな香りとほどよい酸味があり、絞ればジューシーな果汁がたっぷり。「柚子」よりも優れているという理由で、「ゆずきち」という名前がつけられました。 そんなニッチな名前が付いた観光列車「ゆずきち号」が、JR西日本×星野リゾート 界 長門×長門湯本温泉まち株式会社の共同プロデュースにより2021年に誕生。7月と9月の期間限定で特別運行しています。
今回は、全国的にも珍しい列車、柑橘香る「ゆずきち号」に乗車した様子をたっぷりお届け!気になる「ゆずきち号」の魅力とは……?
1.和と洋をテーマにした、趣の異なる2両編成の観光列車
「ゆずきち号」で使われている車両は、「新下関駅」から「萩駅」までいく、絶景がウリの観光列車「◯◯のはなし」(まるまるのはなし)。今回だけ特別に「新下関駅」から「長門市駅」止まりにして、「ゆずきち」の魅力をたっぷり詰め込んだ柑橘香る「ゆずきち号」として期間限定で貸し切り運行しています。
運行日は、6月15日、6月17日、7月13日、7月20日、9月8日、9月29日の全6日程(6月分は 新型コロナウイルス感染症の影響により運休)。※大阪、兵庫、京都緊急事態宣言発令、及び期間延長に伴い、9月8日、9月29日の運行を中止することが決定いたしました
上りは、「新下関駅」を出て(9時59分発)、「長門市駅」へ向かう(12時16分着)ルート。下りは、「長門市駅」を出て(3時33分発)、「新下関駅」へ向かう(17時50分着)ルートです。まずは、上りの様子からレポートします!
グリーンの1号車は「和」、レッドの2号車は「洋」をイメージしていて、それぞれ雰囲気の異なるデザインになっているのが魅力。1号車のボックス席は足元が畳の設えになっていたり、萩焼や沿線の伝統工芸品を展示するギャラリーコーナーもあります。
2号車は、高級感あるホテルのラウンジ風。普段使う列車とは見た目も大きく違っていて、旅情感満点ですよね!
車両の雰囲気に合わせて、スタッフもガラリと変わります。1号車は着物を着た長門湯本温泉の「大谷山荘」チームが担当、2号車は黒いシックな装いの界 長門チームが担当。それぞれ数名のサービスアテンダントがつき、フルサービスで対応してくれます。
2.フレッシュな“香り”のおもてなし
列車に乗ったら、まずは香りを楽しむ時間。車内には、山口県出身のアロマ空間デザイナーさんが手掛けた、柑橘のさわやかな香りがふわっと漂います。
この香りは、ゆずきちをベースに夏みかんとヒノキをブレンドしたもの。フレッシュでみずみずしい香りをゆっくり吸い込めば、頭の中まですっきり!日々積もり積もったストレスもすっ……と消えていくようです。ちなみに、この香りは気持ちをリフレッシュさせてくれるだけでなく、酔い止めの効果もあるのだとか。乗り物酔いしやすい人にとっては嬉しいですよね。
3.【上り】私にぴったりのお茶を作れる、世界に一つだけのブレンドティー体験
席に付いて間もなく、列車はするりと動き出します。ここから「長門市駅」に向け、約2時間ほどかけてのんびり進んでいきます。
次に楽しむのは、オリジナルのブレンドティー体験。テーブルの上には5種類の茶葉が置かれていて、自分好みのいろいろな配合を楽しめます。緑茶or紅茶をベースに、ローズヒップなどアクセントとなる茶葉を缶に入れたら、シャカシャカ振って混ぜていきます。後は、ティーバッグに茶葉を詰めて完成!
「このお茶って、どんな味がするんだろう?」自分で作ったお茶なので、飲んでみないと分からないドキドキ感がたまりません。
4.列車で楽しむ、可愛いアフタヌーンティーセット
さて、上り最大の魅力は、列車の中でアフタヌーンティーをいただけること!
お菓子は、すべて萩市と長門市のもので統一。虎屋の「ゆずきちマカロン」、村岡湖月堂の「ゆずきちフロランタン」、ルモンドの「棚田米ゆずきちダックワーズ」など、どれも「ゆずきち」の風味が楽めます。
そして、可愛らしいお皿にも注目。こちらは、萩市在住の金子司さんの萩焼の作品。萩焼といえば、“侘び寂び”を感じる作品が多くみられますが、金子さんの作品はポップで一際カラフル。「こういう萩焼もあるんだ~!!」と驚きです。
タイミング良くお菓子を用意してくれたり、説明をしてくれたり。アテンドしてくれるスタッフさんの“おもてなし”も心地良い!
5.海絶景に浸って、船旅気分でリフレッシュ
青く輝く穏やかな海に、ポツンと浮かぶ小さな島々……。頭上いっぱいに広がる大きな窓からは、そんな景色が楽しめます。
途中、ビュースポットが3箇所あり、ビューポイントに差し掛かると列車がスピードを落としてくれて、車内アナウンスで見どころをガイドしてくれるのも大きな魅力。海岸線ギリギリを走る列車の窓は、海を映すのみ!コバルトトブルーの海に目を奪われ、感動で胸がいっぱいになります。
車窓から楽しめるのは、ブルーの別世界だけではありません。自然あふれる山陰の山々を経て、古き良き日本の田園風景にも癒されます。海も山も、都会にはない自然の原風景が心をほっと落ち着かせてくれます。
6.あったかい気持ちになれる「長門市駅」でのお出迎え
列車旅の終点「長門市駅」では、スタッフの方が横断幕を持ってお出迎えしてくれます。みんなに歓迎される幸せな雰囲気が嬉しくて、「山口に来て良かった~!」と思わずにいられません。
あったかい気持ちに包まれて、終わってしまうのが惜しくなるほどの“夢心地の時間”がここにありました。
7.【下り】ゆずきちになれちゃう!?ユニークなオリジナルスイーツボックス付き
さて、次にご紹介するのは下り。旅のルートは、「長門市駅」を出発して「新下関駅」へ向かう、およそ2時間の旅になります。
下りにはアフタヌーンティーはありませんが、ちょっとユニークなスイーツボックスがあるんです!半球型のボックスを開けると、中には「ゆずきち」風味のお菓子がぎっしり。このスイーツボックスは、何がスゴイのかというと……
こんな風に、蓋の部分が帽子になるんです!さっと被れば、あなたも「ゆずきち」に。ちょっとシュールな点が良い味を醸し出していますよね。
8.阿川駅でいただく、ゆずきち風味のオリジナルドリンク
下りの場合は、途中の「阿川駅」に10分間、停車します。停車した目的は、駅に併設されたガラス張りのおしゃれなカフェ「Agawa」に立ち寄るため。「ゆずきち号」のゲストは、ここでオリジナルドリンクが楽しめるんです。このドリンクは、萩の鶴江という地域の丘の上で、自然栽培により育てられた甘夏と奄美のきび砂糖、油谷の百姓の塩で作った自家製のシロップを炭酸水で割った、特別な1杯。
暑~い夏の午後。ヒンヤリ甘いドリンクを、ごくん……といただけば、喉が潤い疲れもすっきり。甘酸っぱい香りと爽やかな風味に心癒されます。
上りでは、目の覚めるようなコバルトブルーの海を堪能しましたが、下りでは、傾き始めた太陽に照らされた海絶景を楽しめます。太陽がキラキラ水面に反射する、幻想的な日本海に癒されました!
9.あの萩焼をお土産に♪
せっかく「ゆずきち号」に乗ったら、お土産が欲しくなりますよね!下り線では、「阿川駅」を出発してから30分間、上り線のアフタヌーンティーでも使われていた、萩市在住の金子司さんの作品を車内で買うことができます。
販売カウンターに足を運ぶと、小皿やカップソーサーと一緒に並んでいたサイケデリックなキノコが目に留りました。
萩焼の土が醸し出すあたたかさと、ビビットな色合いのバランスが絶妙。どこか「不思議の国のアリス」を彷彿とさせるような、不思議カワイイ作品にうっとりです。萩の街まで足を運ぶのは大変だけど、列車の中で買えるのはとっても便利。人と違うお土産を探している人には、うってつけではないでしょうか。
<ゆったり乗っているだけで特別な時間が過ごせる旅へ>
旅人のときめきを乗せて走る「ゆずきち号」。おいしいお菓子を食べて、息をのむ絶景を眺めて、山陰と「ゆずきち」の魅力をあますところなく味わえました!