「伺います」は「参ります」と混同されたり、「お伺いいたします」「お伺いします」などのようにビジネスシーンでもよく誤用されたりする言葉です。
本記事では「伺います」の詳しい意味やシーン別の正しい使い方と例文、類語や英語表現などを紹介します。
「伺います」の意味や読み方とは
「伺います」の読みは「うかがいます」です。「伺う」に丁寧語の「ます」を付けた言葉です。
早速、基本的な意味などを確認しましょう。
「伺う」は「聞く・尋ねる」「行く・訪問する」の謙譲語
「伺う」の主な意味は「聞く・尋ねる」または「行く・訪問する」の謙譲語です。
自分の立場を下げて使う表現なので、目上の人を相手にしたときに使います。
「伺います」と「参ります」の違い
さて「伺います」とよく混同されがちな表現に「参ります」という言葉があります。どちらも「行く・訪問する」という意味の謙譲語です。
2つの違いを知って、正しく使い分けができるようになりましょう。
謙譲語についておさらい
はじめに謙譲語について簡単におさらいしましょう。
人に対して敬意を示すとき、使われる敬語は丁寧語・尊敬語・謙譲語の3種類です。丁寧語は敬意を示す相手がいてもいなくても使うことができ、基本的な言い方を丁寧に表現できるので、どのような言葉に対しても使えます。
尊敬語は相手の動作を高めることで、動作の主に対する敬意を示す表現です。つまり相手の動作に対してのみ使うことができます。
一方で謙譲語は自分の動作をへりくだることで相手への敬意を示すのですが、細かな役割は2種類あります。1つ目は単純に、動作の対象相手に敬意を示す謙譲語、もう1つは動作の対象者ではなく読み手・聞き手に対し丁重に述べるための謙譲語です。
「伺います」と「参ります」はどちらも謙譲語ですが、「伺います」が前者の動作の対象者に敬意を示す謙譲語、「参ります」は聞き手や読み手に対して使う謙譲語です。
「伺います」は動作が向かう対象の相手に敬意を払う表現
「伺います」は、伺う先の相手に対して敬意があることを伝える表現です。能動的に自分から目上の人のところに訪問する意味を表しているので、「伺う」先に敬意の対象がいない場合は使うことができません。
自分から訪問できるということは、相手が自分のために会う時間を作ってくれているわけですから、それに対して敬意を示す必要があります。
「参ります」は動作が向かう対象がいなくても使える
「参ります」は動作の対象者ではなく聞き手・読み手に対する謙譲表現です。
この場合は「参る」先に敬意を示す相手がいなくても使うことができます。あくまでも自分の動作をへりくだった丁寧な表現、と覚えておきましょう。
「伺います」「参ります」の例文
例えば相手に対し「そちらに伺ってもよろしいですか」と許可を求めるときや、「○日にそちらのオフィスに伺います」などと訪問することを伝えるときに、「伺います」を使います。この場合「参ってもよろしいですか」は不自然になるので使えません。
一方で「東京に行く」「出張に行く」を謙譲語で表現するときは「東京に参ります」「出張に参ります」となります。
敬意の対象があるときに使う「伺います」は、東京や出張に敬意を払う必要はないので使えません。
「参ります」の意味や使い方は? 「伺います」との違いや例文、注意点も紹介
「伺います」のビジネスでの正しい使い方と例文
ここでは「伺います」の正しい使い方を、シーンごとに確認しておきましょう。
意思を伝えるとき
「これから行く」「この時間に行く」と意思を伝えるとき、シンプルに「伺います」を使いましょう。「明日、10時に御社に伺います」などのように使います。
「伺わせていただきます」を使う人もいますが、そもそも二重敬語になっており、回りくどい表現にもなってしまうので使わないようにしましょう。
許可を求めるとき
「行ってもいいか」と許可を求めるとき、「来週、そちらに伺ってもよろしいでしょうか」などという表現を使うことができます。
「よろしければ」「差し支えなければ」を冒頭につけるとより丁寧な印象になります。このとき、前述したように、伺う先に敬意の対象者がいるかどうかを意識しましょう。
また「聞いてもいいか」という意味で許可を求める際も同様に、「今後のスケジュールについて伺ってもよろしいでしょうか」などと使用します。
希望を伝えるとき
「明日の13時頃に行きたい」という希望を伝えるときに、「明日の13時頃に伺いたいと思っております」といった表現を使うことができます。
「伺いたく存じます」を使うとより丁寧な印象になるでしょう。
「意見を聞きたい」という場合は「△△さんのご意見を伺いたいです」などの形で使用します。
過去形で使うとき(「伺いました」など)
「昨日の13時頃、貴社へ伺いました」という表現をすることが可能です。自分の動作をへりくだった表現で、訪問先である会社やその会社に所属する人を高め、敬意を示すことができます。
ただし目的地に敬意を払うべき相手がいない場合には「伺いました」は使えません。「昨日東京に出張に行ってきました」に敬語表現を使うのであれば、「昨日東京に出張に行って参りました」が妥当です。
また「聞く」の意味で過去形として使用したい場合は「その件については、○○様より概要を伺いました」などのように表します。
断る意味で使うとき
例えば「会食に行くことができない」と伝えるときは、「会食に伺うことができません」「会食に伺うことができかねます」といった表現になります。「伺うことが難しい状況です」でも大丈夫です。
「伺います」の誤用(二重敬語)
「伺います」はビジネスシーンでよく使われる表現なので、使い方を間違えてしまうと恥をかくだけでなく、信頼も失ってしまう可能性があります。
どのような表現が間違っているのか知り、ビジネスの現場ではそのような使い方をしないように注意しましょう。
「お伺いいたします」
「お伺いいたします」は敬語表現としてはNGです。「いたす」は「する」の謙譲語なので、「伺う」と「いたす」と謙譲語が2つあることになり、二重敬語になってしまいます。
間違っていることに気付かないまま使っている人が多いのであまり指摘はされないかもしれませんが、過度な敬語表現になってしまうため使うのは避けましょう。
「お伺いさせていただきます」
「させていただく」も相手に対して許可を得る、相手の恩恵を受けるときに使う敬語表現なので、「お伺いさせていただきます」も二重敬語です。間違ってビジネスシーンで使わないよう注意しましょう。
他にも「させていただく」は多用されやすい傾向にある敬語なので、必要以上に使うのは避けたいところです。
「お伺いします」
こちらも一般的に使われているので気付かれにくいですが、「お伺いします」も敬語表現としては厳密にはNGです。
接頭語「お」と丁寧語の「します」が組み合わさった敬語表現に謙譲語の「伺う」がプラスされているので、二重敬語にあたります。ただしこの表現はよく使われており浸透しているので、使用しても大きな問題ではないといわれています。
「伺います」の類語・言い換えは「お聞きする」「お尋ねする」など
「伺います」の類語は「聞く」「尋ねる」を丁寧な表現に言い換えた「お聞きする(お聞きします)」「お尋ねする(お尋ねします)」などがあてはまります。
また「行く・訪問する」の意味では前述のように「参る(参ります)」や、「参上する(参上します)」などが該当します。
「伺います」の英語表現
「伺います」を英語で表現するときは、本来の意味の「聞く・尋ねる」「行く・訪問する」をそのまま英訳するといいでしょう。
「聞く」は「hear」、「尋ねる」は「listen(傾聴する)」、「行く」「訪問する」は「visit」「come to see」などと訳すのが妥当です。
「伺います」は相手と場面によって正しく使い分けよう
「伺います」の意味や使い分け、正しい例文についてまとめました。「伺います」は基本的に相手に敬意を払うときに使える敬語、と覚えておくといいでしょう。
よく使っている表現の中には時に二重敬語になってしまっているものもあるので、なるべく使わないよう気を付けてみてください。