「滞りなく(とどこおりなく)」という言葉は、ビジネスや式典などで用いられることが多いので、一度は聞いたことがあるでしょう。しかし、日常会話の中では使用する機会があまりないので正確な意味を知っている方は少ないかもしれません。

この記事では、「滞りなく」の正しい意味や使い方を紹介します。また、類義や英語表現についてもまとめました。

  • 「滞りなく」の意味

    「滞りなく」の意味や使い方を紹介します

滞りなく(とどこおりなく)の意味とは

「滞りなく」とは、「物事が途中でつっかえたり止まったりすることなく進められていく様子」のことをいいます。読み方は「とどこおりなく」です。

「滞りなく」の語源

「滞りなく」の語源は、「滞る」という動詞です。「滞」は「停滞」や「延滞」などの単語にも使われていますが、「流れが止まる」「物事がつっかえる」「スムーズにいかない」などの意味を持つ漢字です。

「滞りなく」には、否定の「ない」がついているので、物事がつっかえていない状態、流れが止まっていない様子、すなわち「スムーズである」ことを指します。

「つつがなく」との違い

「滞りなく」と同じようなニュアンスを持つ言葉として比較されるのが「つつがなく」という言葉です。

「つつがなく(恙無く)」の「つつが」は病気や災難を示す言葉で、そこに否定系の「ない」がくっついて「つつがなく」という言葉になりました。意味は、「病気や災難に見舞われることなく、健康な日常を過ごすこと」です。

「滞りなく」と「つつがなく」は、どちらも「問題なくことが済んでいる」という点については同じです。しかし、「滞りなく」は単に「アクシデントなく順調に」といった意味ですが、「つつがなく」には「予期せぬアクシデントやハプニングが起こり得る状況の中で何事もなく無事に終えられた」という意味があります。

結婚式やお葬式などの式典やセレモニーは、「思いがけないアクシデントやハプニングが起こり得る状況」でないことが前提となっているので、「つつがなく」ではなく「滞りなく」を用いるのが適切です。

  • 「滞りなく」の正しい使い方と例文

    「滞りなく」とは、「途中でつっかえたりせずに物事が予定通り進んでいくこと」です

「滞りなく」の使い方と例文

「滞りなく」の正しい使い方について紹介します。「滞りなく」がよく使われるビジネスシーンと結婚式や入学式などの式典、それぞれの場面での使い方を例文と共に確認していきましょう。

ビジネスで使われる場合

ビジネスシーンで使用される「滞りなく」は、会議やプロジェクトなどが遅延なく予定どおりに進んでいる様子を表すことが多いです。

・本日の会議は、滞りなく終わりました。

・担当しているプロジェクトは、滞りなく進んでいます。

また会話だけでなく、下記のようにメールで用いられることも多々あります。

・おかげさまで、業務を滞りなく終えられました。

・ビッグイベントを滞りなく開催できたこと、心から感謝しております。

式典で使われる場合

式典で用いられる「滞りなく」は、下記のように使われます。

・PTA、在校生、卒業生の皆さんと「創立80年記念式典」を滞りなく終えることができました。

・挙式・結婚式ともに滞りなく終えることができました。

  • 「滞りなく」の類義語

    「滞りなく」は、「ビジネスシーン」と「式典」で使用される場合にわけられます

「滞りなく」の類語・言い換え表現

「滞りなく」の類語には、「スムーズに」「首尾よく」「支障なく」「円滑に」などがあります。

スムーズに

「スムーズ」とは、「物事が滞りなくすらすらと、流れるように進んでいくさま」のことをいいます。まさに、「滞りなく」と同じ意味なので言い換えとして使用可能です。

・序盤から会議がスムーズに進んだため、多くの議題について話し合うことができました。

首尾よく

「首尾よく」とは、「物事が都合よく運ぶ様子」のことをいいます。言い換えると、物事がトントンと前に進んでいく状況なので、「滞りなく」と同じニュアンスの言葉として使用できます。

ちなみに、「首尾よく」の「首尾」は、「首尾一貫」という四字熟語にも使われている「初めから終わりまで」という意味の「首尾」です。そのため、「首尾よく」も「初めから最後までことが都合よく進んでいく」といった意味になります。

・撮影が首尾よく進めば、予定よりも早く帰宅できそうです。

支障なく

「支障なく」とは、「物事を進める上で障害になるものがない」という意味の言葉です。障害がなく物事が進んでいくという意味で、「滞りなく」と同じ場面で使うことができます。

・挙式、披露宴ともに、何の支障もなく執り行うことができました。

円滑に

「円滑」には、「支障や邪魔が入ることなく物事がすらすら進むこと」や「なめらか」といった意味があります。「円滑」にも上記3つの単語と同じく、「滞りなく」の代わりとして使うことができる単語です。

・年に一度の重要な会議を円滑に進めることができました。

  • 「滞りなく」の英語表現

    「滞りなく」の類語は「スムーズに」「首尾よく」「支障なく」「円滑に」です

「滞りなく」の英語表現

「滞りなく」の英語表現には、「smoothly」や「without delay」があります。

smoothly

「smoothly」の意味は、「円滑に」「なめらかに」「難なく」などです。日本語でも「スムーズに」というふうにいわれたりしますが、「滞りなく」と同様に予定していたものが支障なく円滑に行われた様子を表す時に使用することができます。

・I am so happy that everything went smoothly.(全てが滞りなく順調に進み、とても嬉しいです。)

・The whole project goes on smoothly.(プロジェクト全体がスムーズに進んでいます。)

without delay

「without delay」のうち、「without」が「~抜きで」、「delay」が「遅延」という意味を持つ言葉なので、あわせると「遅延抜きで」すなわち「速やか」や「滞りなく」という意味になります。

・We could finish a business meeting without delay.(私たちはビジネスミーティングを滞りなく終えることができました。)

・The airplane flew from Japan to Canada without delay.(その飛行機は、日本からカナダまで滞りなく飛行しました。)

  • 「滞りなく」を適切に使いこなそう

    「滞りなく」の英語表現は「smoothly」や「without delay」です

「滞りなく」の意味や使い方を覚えよう

「滞りなく」とは、「物事がつっかえることなくスムーズに流れる様子や状態のこと」をいいます。読み方は「とどこおりなく」です。

「つつがなく」との使い分けに悩む方もいるかもしれませんが、「つつがなく」は、「ある程度の期間において、予期せぬアクシデントやハプニングが起こり得る可能性がありつつも、何事もなく物事が進むこと」を指します。

一方の「滞りなく」は、「1日で終わるようなイベントなどが、支障なくスムーズに進んでいく状態」です。「滞りなく」の方は、特に結婚式やお葬式などの式に用いると覚えておくと使い分けやすいでしょう。

「滞りなく」の代わりとして使える類語もたくさんあるので、微妙なニュアンスの違いを理解して、適切に使い分けられるようになりましょう。