育児休暇と並んで話題に上がることが多い介護休暇。両親や身内の介護が必要な可能性がある人は知っておきたい制度ですが、正しく理解できていますでしょうか?
本記事では、介護休暇を取得できる条件や日数・賃金の有無などをくわしく解説。また、よく比較される制度である介護休業との違いについても紹介します。
介護休暇とは?
介護休暇とは、病気や怪我、高齢などの理由で家族が要介護状態になった時に労働者が取得できる休暇です。
労働基準法で定められた年次有給休暇とは別で取得でき、法律でも規定されている労働者の権利となっています。
間接的な介護も対象
「介護」と聞くと食事や排泄などの世話をすることを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、介護休暇における介護の範囲には、日常生活に関わる直接的な介護のほかに、病院への送迎や入院付き添い、買い物・事務手続きの代行などの間接的な介護も含まれています。
したがって、「入院の手続きで数時間だけ席を外したい」というような場合でも介護休暇を取得することが可能です。
申請は口頭でも可能
介護休暇の申請は、特に書面等を記入する必要はなく口頭での申し出が可能となっています。しかし、会社によっては申請書が用意されている場合もあるため、社内で提出が規定されている場合は従うようにしましょう。
なお、勤務先に定められた様式がない場合は厚生労働省のホームページからダウンロードすることもできます。
介護休暇を取得できる条件
ワークライフバランスを保つためにも積極的に活用したい介護休暇ですが、誰もが自由に取得できるというわけではありません。
ここからは介護休暇を取得できる条件について解説しますので、雇用条件や対象家族の範囲などについてしっかり理解しておきましょう。
介護休暇の対象労働者
介護休暇は、基本的には雇用形態に関わらず全ての労働者が取得できるものとなっており、条件を満たせば契約社員や派遣社員、アルバイトやパートであっても取ることができます。
ただし、日雇い労働者である場合と、企業が以下のような労働者に対して労使協定で対象外としている場合は取得することができません。
- 雇用期間が6ヶ月未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 時間単位での介護休暇取得が困難な業務に従事している労働者
労使協定は育児介護休業法が免除される効力を持つものとなるので、事前に就業規則などをしっかりと確認しておくようにしましょう。
一般職に属する国家公務員も対象
介護休暇制度は、一般職に属する国家公務員も対象となっております。
「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」には、職員の休暇を「年次休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇及び介護時間とする」と明確に記載されており、介護休暇の取得が法律で認められています。
ただし、地方公務員の休暇に関しては自治体ごとの条例で定められているため、必ず取得できるとは限りません。
基本的には国家公務員に準ずる形となっていますが、取得の可否に関しては自分で確認しておくようにしましょう。
対象となる家族の範囲
「要介護状態になった家族」を介護するために取得できる介護休暇ですが、家族の範囲がどこまでになるのかはしっかりと確認しておく必要があります。
具体的には、事実婚を含む配偶者・実父母・配偶者の父母・子ども・祖父母・兄弟姉妹・孫が対象範囲となっており、対象者との関係がこの範囲外である場合は取得することができません。
また、「要介護状態」とは、障害や疾病により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます。
会社から対象家族の状態について証明書を求められる場合もありますが、提出は休暇後でも可能なため、急を要する場合は取得してから書類を準備するといいでしょう。
介護休暇の内容
条件を満たしさえすれば、口頭ででも申請できる介護休暇。制度を最大限活用するためにも、くわしい内容を事前に確認しておきましょう。
日数は最大10日
介護休暇で取得できる日数は、対象家族が1人の場合は1年で5日まで、2人の場合は最大で10日までとなっています。なお、3人以上の家族を介護する場合でも最大取得日数は10日となるため、注意するようにしましょう。
また、令和3年1月1日に施行された改正によって、時間単位でも休暇を取得できるようになりました。
ただし、会社側が時間単位での取得を除外する労使協定を締結している場合は1日単位での取得となるため、事前に上司や総務などに確認を取っておくようにしましょう。
賃金の有無は勤務先による
介護休暇中、給与が支払われるのかが気になるという人は少なくないですが、実は賃金に関しての法的な定めはないため、各企業の判断に委ねられる形となっています。
給与の何割かが支給されるケースもあればもちろん無給となるケースもありますので、就業規則をしっかり確認しておきましょう。
介護休暇と介護休業の違いは?
介護休暇とよく混同される制度に介護休業があります。
どちらも似たような名前の制度のため区別がつかないという人は多いと思いますが、介護休業は口頭での申請が認められていないなど、ルールや条件が異なる部分は少なくありません。
ここからは代表的な違いを解説しますので、ポイントを押さえておきましょう。
介護休業は通算93日まで取得可
介護休暇と同じく、要介護状態である家族を介護する場合に取得することができる介護休業。
大きく異なるのはその日数であり、介護休暇が1年で最大10日の休暇となるのに対し、介護休業では通算93日の休暇を取得することができます。
また、3回を上限に分割取得することもできるため、自分や家族の状況に応じて計画的に休業計画を立てられる点も大きな魅力です。
雇用期間に関する条件が異なる
介護休暇に比べて長期の休暇が取得できる介護休業ですが、対象労働者の雇用期間に関する規定が異なる点には注意しなければなりません。
介護休暇では全ての労働者が原則対象となっていましたが、介護休業は、期間を定めて雇用される労働者の場合には雇用期間1年以上が対象となります。
また、介護休業では休業後に復職することが前提となっているため、期間を定めて雇用される労働者については93日を経過後6ヶ月以内に労働契約が終了する場合は取得することができません。
長期間休業できる分介護休暇より規定が厳しくなっているので、注意するようにしましょう。
介護休業には給付金制度がある
介護休業中の賃金に関しては、介護休暇と同じく法的な定めは特にありません。
しかし、介護休業だけにある制度として「介護休業給付」という給付金制度があり、条件を満たせば雇用保険から給付金を受け取ることができます。
支給金額は最大で賃金の約67%のため、無給で休業する必要がある人にとってはありがたい制度です。
申請には一定の条件を満たす必要があるため、気になる人は窓口であるハローワークに問い合わせてみましょう。
条件や内容、介護休業との違いを理解してうまく活用しよう
30代後半から40代半ばぐらいの年齢になると、親の介護の問題がだんだんと気になってくるもの。
実際介護をしている人の中には仕事との両立ができないと悩む人も多く、今はまだ大丈夫だと思っていても今後が心配になってしまう人もいるでしょう。
しかし、介護休暇の条件や内容をしっかり理解しておけば、突然家族の介護が必要な状況になったとしても落ち着いて対処することができます。
自分や家族の状況によっては介護休業もあわせて視野に入れられるよう、今のうちに勤務先の条件などを確認しておきましょう。